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自閉症スペクトラムの兄妹の関係性。兄はのび太、妹はジャイアン

この記事は30代の女性に書いていただきました。

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自閉症スペクトラムの兄妹

 私には二人の子供がいます。自閉症スペクトラムの息子(小学生)と2つ下で同じ診断名とさらに知的障害も併せ持っている娘。私はこの2人を育てているわけですが、正直一言で言うと結構大変です。

 2人とも自閉症スペクトラムですので、似たような接し方でも良いのかというと、全くそうでもありません。もちろん似たような特徴も持っているのですが、そもそもの性格が正反対なので、現れ方も両極端です。

 ある時期は私の育児のせいかと自分を責めましたが、「育て方が悪いんじゃない。この子たちの元々の素質なんだ」ということがわかり、開き直れたというか、受容できた部分もあるかなと思ってます。

自閉症スペクトラム2人の関係性はのび太とジャイアン

 そんな2人の関係はというと、簡単に言えば、息子は「勉強のできるのび太君」で、娘は「言葉の通じないジャイアン」だと思います。

 息子はのび太君のようにとにかく怖がりで、運動をやっても工作をしても人並み以下で根性もないので、人に頼ろうとすることばかり。ただ勉強だけはのび太とは違ってできます。

 娘は、ジャイアンのようにすぐ手が出るし、乱暴。そして他人と自分の区別が難しいために「俺のものは俺のもの、お前のものも俺のもの」を地でいっている上に、母親である私がいくら言い聞かせても、理解できないのでさらにタチが悪いという状態です。

 その2人が一緒にいたらどうなるかというと、当然ジャイアンな娘が、のび太の息子をいじめるわけです(本人にいじめてる意識はゼロですが)。本物ののび太は家に逃げ込んでドラえもんに助けを求めますが、我が家の場合家にジャイアンがいるわけで、息子にとってはしんどい環境だなと常々思っています。

 どこの兄弟でも、兄弟喧嘩をしたり、まだ理解ができない歳の弟妹のために上の子が我慢することが多いというのは、当然あると思いますが、その程度が酷いし、いつまで経ってもその期間が終わらないというのが息子にとって酷です。

 上の子がおもちゃを使うと、下の子が取る。だいたい取られっぱなしですが、たまに引っ張り合いになると下の子が押したり引っかいたりと暴力をはたらき、上の子を泣かせます。そればかりか、下の子がおもちゃの使い方をわからず困ってるときに、上の子が「これはね、ここをこうしてね」なんて教えてあげようとしただけで「邪魔をされた」と感じるらしく、暴力で返したりすることも。息子からしたら理不尽極まりない暴力です。

 常に見張っていられれば手が出る前に止められるし、息子の気持ちも受け止めてあげられますが、なかなかそうもいかず被害を受けることが多い息子です。その度に「○○ちゃんが、僕がこうしただけで殴った!」「○○ちゃんが、たたいた!」と言いつけに来ます。その時、私は時間が経ってからでは娘は理解できないので、即座に息子へ殴るポーズをして、こういうことはダメと娘を叱ります。

 また、大げさに息子を「大丈夫だった?○○ちゃんダメだね!やり返さなくて偉かったね」「お兄ちゃん、ありがとうだね」「お兄ちゃん、優しいね」などと言って息子の気持ちを救ってやることに懸命です。ことあるごとにお兄ちゃんをポジティブな言葉で褒めます。内心は「ちょっと妹にやり返してやればいいのに」と思うのですが・・・。

 この辺の接し方の正解は未だにわからないです。娘には怖い顔で「手で押してはダメ」「乱暴いけません」などと言ってますが、療育の考えだと手が出たときでも叱る前に気持ちを代弁してやるのが正しいらしく、おそらくこの場面だと「おもちゃ欲しかったね」「ちょうだい、だよ」とか言ってやるのが正解なのかと思います。

 でも息子の気持ちを考えると、そうもいかない!というのが実際のところ。偏った子が2人いると、どちらの立場になって考えるかで接し方が変わり難しいものです。

それでも、妹が大好きという謎

 こう書いてると、被害を受けてばかりの息子は妹をさぞ嫌ってるだろうと普通は思うのですが、それでも息子は「○○ちゃん大好き」と言って可愛がっています。私が娘を叱ると「○○ちゃんは、まだわからないから仕方ないんだよ、怒らないで!」と逆にかばったりすることもあるのです。言いつけにくることもあるし、かばうこともある…不思議なもんですが。

 トラブルが起こったときに、私が相手できなかったり、適当な対応をしたりすると、「○○ちゃんが!ボク悪くないのに!ひどいんだよ!」と必死に言いに来ますが、私が娘を叱って息子とちゃんと向き合ったときには、妹をかばうのです。親がわかってくれれば、心が満たされるということなのかなあと何となく思います。

 娘の方は知的な遅れも重く、会話もほとんど成り立たないため、兄のことをどう思っているのかイマイチわかりません。それでも、いつもいる場面でいないと「おにいちゃん、おにいちゃん、どこー?」と言ったり、歩いてて上の子が遅れると「おにいちゃん、おいでー」と迎えに行って手をつないでいくのが可愛らしくも思えます。

 それは兄への愛着なのか、「自閉症スペクトラムの性質でいつものパターンから外れるのが嫌」なだけなのかは定かではありません。しかし少なくとも上の子にとってはそれがとても嬉しいらしくて、「○○ちゃん、僕のことやっぱり大好きなんだね!」「○○ちゃん、僕がいなくて寂しかったんだね!」ととても嬉しそうにしてます。

 会話もまだオウム返しが多くて、「僕のこと大好きー?」と聞くと、オウム返しで「だいすき」と答えていて、「僕のことやっぱり大好きだってー!」と喜ぶ上の子。そういう場面を見ると笑ってしまいますが、微笑ましい仲良し兄弟に見えて、この組み合わせもアリなのかもな、なんて思えます。

兄と妹の関係の、これからの不安

 息子は、自閉症スペクトラムという診断はついていながらも、知的な遅れもなく普通学級に通っていて、特に周りに積極的にカミングアウトはしていません。独り言が多かったり極度な怖がりだったりで変わった部分はあるけれど、健常者の世界の中で、これからも生きていくことになると思います。

 一方、妹の方は、明らかに言動が普通とは異なっており、はっきりと障害児だと分かりごまかしようがありません。就学は支援学校か支援学級、その後も障害者として健常の世界とは別の生き方をすると思います。息子は外から見たら「障害者のきょうだい」ですが、実際には自分自身も同じ特徴を抱えて生きていかなくてはならないというキツい立場だと思います。

 一番近い話で言うと、娘がもし学区の支援学級の判定を受ければ、同じ学校に通うことになります。クラスメートからは、本人がただでさえ変わった子として浮き気味なのにその妹が支援学級にいるとなったら、格好のいじめのターゲットになりやすいと思います。

 支援学級への理解はまだまだ人によりますし、ましてや子どもなど正直で悪気もなくバカにしたりネタにしたりするでしょうから、「おまえの妹頭おかしいの」なんて言われた日には息子の心はどうなるか…など、まだ言われたこともないのに、想像して心配でたまりません。

 不思議なことに、知的な遅れがあって将来の可能性がかなり閉ざされている娘よりも、一応健常者にまぎれられる息子の方が心配でたまらないのです。娘の方は、周りが自分をバカにしようが嫌っていようがそれすら気付かないので、ある意味最強なのです。

親としてできること

 将来のことを悲観しても仕方がないので、今親がやれることとしたら、息子の気持ちをある程度優先させて心の置き場を作ることかなあと思います。学校でも余り他の子と上手くやれていないのに、帰って来ては妹にやりたい放題され、安息の場所がない息子…。せめて土日は娘を外に連れ出してゆっくり家で遊べるようにしたり、娘が療育に行ってる間に行きたいところに連れて行ったり。

 そして、いつもありがとうと伝えること。妹はお兄ちゃんが優しいから甘えてしまってるんだよ、でもごめんね。と伝えること。可能なときは、とことん息子の遊びに付き合い、延々と続く多弁にも付き合うこと。なかなかいつもはできませんが、できる範囲でやるとすっごく良い笑顔を見せてくれるので、心がけたいなと思います。

 将来妹の面倒を見てくれとは言わないけど、どうしたって先に死ぬであろう親ができることは、「妹のせいでつらかった」「妹のせいで嫌な子ども時代だった」などという嫌な記憶を息子に作りたくない、それが娘のためにもなるだろうと思っています。

 娘については、そういう心のケアとかいう段階ではないので、死なないように飛び出しに注意したり、視覚支援でコミュニケーションを円滑にしていくことかなと思います。

 願わくば、どうか将来にわたって「可愛い妹」と「頼り有るお兄ちゃん」であってくれますように!

[参考記事]
「発達障害の子ども達の兄弟姉妹関係で気をつけたいこと」

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