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フランスで発達障害と診断された日仏ハーフの息子①

 

この記事はフランス在住の40代の女性に書いていただきました。

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日本語を教えるから言葉が出ない、と非難されて

 フランス人の夫と日本人の私との間に生まれたハーフの息子は、今、14歳で、発達障害と診断されています。1歳になる前から、数字に異常な関心を示したり、ミニカーを一列に黙々と並べたり、と発達障害らしき症状が見られました。

 2歳になってもほとんど言葉が出なかったのですが、私は日本語、夫はフランス語で話しかけていたので、そのせいで言葉が遅れているのかとも考えました。

 フランスは3歳から学校が始まりますが、1年目にパリで通った私立校は、他にも日仏ハーフや日本人の子どもがいて、先生も日本の文化に興味がある人だったり、また、日本人のママ友もいたので、母子共々、居心地が良かったです。

 ところが、4歳の時に、日本人のほとんどいない郊外に引っ越してから、環境が一変しました。公立のマンモス校でしたが、日仏ハーフは息子だけ、もちろん、日本人の生徒も一人もいません。

 息子は、先生の言うことを聞かず、他の子どもたちから離れて勝手な行動ばかり取り。相変わらず言葉が出ず、学校の若い女性心理士にいきなり「あなたが日本語で話しかけるの止めれば、息子さんはまともになる」と言われました。

 町の療育センターに面接に行った時も、心理士に「あなたが日本語と日本の文化ばかりを押し付けるから、子どもは話せなくなったんです」などと非難されました。

フランスは自閉症・発達障害の研究・サポートが遅れている

 実はフランスはヨーロッパの中でも自閉症・発達障害の研究、サポートが遅れている国で、フランスで知り合った日本人心理士から「つい最近まで、自閉症は親の虐待が原因とされ、治療法は人形に親の顔写真を貼って、子どもにそれを殴らせていたんですよ」と聞き、もしそれが本当なら、どうしようと心配になり、ますます心理士に子どもを見せるのが心配になりました。

 その後、テレビのドキュメンタリー番組で、自閉症の娘を持つフランス人女性が「心理士からあなたは子どもの愛し方を知らないと責め続けられ、思い切って隣国ベルギーの病院で診てもらい、自閉症は生まれつきの脳の機能障害で、自分のせいではない、と言われ、救われました」とインタビューに答えていたのを見ました。

 幸い、夫も義理の両親もバイリンガル教育を応援してくれ、私自身も子どもの様々な問題は、そのせいではないという確信があったので、それまで通り、日本語で話し続け、療育センターには、それきり行くのを止めました。

 そんなある日、校医に呼び出され、「なぜ、子どもを療育センターに通わせないのか?」と言われました。町の療育センターの心理士に言われたこと(あなたが日本語と日本の文化ばかりを押し付けるから、子どもは話せなくなったんです)を告げると、「その心理士の言う通りなら、息子さんは、日本語がぺらぺらのはずよね。でも、日本語も話さないんでしょ?じゃ、理由は別のところにあるはず。その心理士には会わないで済むようにしてあげるから」と言って、別の療育センターへの提出書類を準備してくれました。

療育の費用はほとんど無料

 5歳から、息子の療育センター通いが始まりました。週3回、学校の授業を抜けて、半日は療育センターでリズム遊び、料理作り、積み木遊びなどをしていました。療育として効果があるのかどうかは疑問でしたが、息子は「学校は辞めて、療育センターだけ行きたい」と楽しそうでした。

 コミュニケーション障害のせいで、学校では友達ができず、孤立していますが、センターではいくぶん、他の子どもたちとも交われる様子でした。また、学校では、授業中、アシスタントが付き、息子をサポートしてくれるようになりました。フランスのいいところは、療育やアシスタントに関わる費用が全て無料だというところです。学校とセンター間のタクシー送迎も無料です。

 学校休暇の間も、療育センターのスタッフが、水族館や映画館に連れて行ってくれ、夏休みは4泊5日の旅行もありますが、全て無料でした。2年目の旅行はなぜか有料となりましたが、費用は6千円程度でした。

はっきりと診断が下されない

 療育センターでは、学期に一度、精神科医と面接をしましたが、居丈高で、一度も笑うことのない、また他の心理士の悪口を言うような老齢の医者で、息子も彼を嫌い、面接の間は、ほとんど質問に答えません。「体の病気と違って、心の病気は診断が簡単にできるものではない!」などと言うばかりで、はっきりと発達障害との診断も下されず、何だかもやもやしたままでした。

 フランスは小学校が5年間で、11歳で中学に入学します。また、日本と違って、小学生でも授業に付いていけない子は落第させられますが、息子は何とか小学校の最終学年まで、問題なく進級しました。

 ただ、このまま、中学に行かせることが不安だったので、10歳の時に、思い切って、信頼できる人に紹介してもらった、個人診療所の心理士の元で、WISC 3知能検査を受けることにしました。

続きは「フランスで発達障害と診断された日仏ハーフの息子②」

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