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障害のある長男が保育園で感じる葛藤とは

この記事は30代の女性に書いていただきました。

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 わたしは5歳と3歳の男の子の母です。5歳の長男は「自閉症スペクトラム(発達障害)」という診断を3歳7カ月頃に受けています。長男は「障害」を抱えながらも保育園生活を過ごしています。わたしは長男の保育園生活を通して、彼のちぐはぐな行動や葛藤に気づきます。それは彼が「障害」を抱えているからこそ生じている葛藤でした。長男の葛藤について書き綴ろうと思います。

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保育園と長男

 長男は保育園において、「障害」を前面に出すことなく、スムーズに生活することができています。理由は「真似をすること」が得意だからです。しかし、同年代のお友達の真似をして、あたかもスムーズに園生活を送っているかのように見せているだけです。お友達の真似をしているだけで、先生の言葉や生活の流れを理解しているわけではありません。そのため、周りのお友達は、長男が「障害」を抱えていることに気づいていません。

 同年代のお友達は、ルールのある遊び、ごっこ遊び、お友達同士の他愛のない会話や手紙のやり取りなど複雑な遊びに夢中です。しかしながら、長男はそうではありません。なぜなら、彼は精神遅滞を抱えているからです。彼の精神年齢は、実年齢よりもマイナス2.6歳の3歳児程度です。彼が理解できるだろう言葉は、2、3語文程度なのです。これは3歳児健診で通過できる課題です。

長男とお友達

 長男は、同年代のお友達と言葉のやり取りをするためには、先生や大人の介入が必要です。言葉の理解が困難であると同時に、「障害」の特性でもある相手の立場に立って考えることが困難であるので、相手に伝わる「伝え方」が分からないからです。ルールのある遊びは、ルールを理解することが困難なので本来の楽しみ方が分かりません。鬼ごっこは、お友達と走り回る遊びであると認識しています。

 また、長男は「自分だけが楽しいと思うこと」を繰り返します。彼の繰り返しの強調に、周りが困惑して引いてしまうことがあります。これは、相手の立場に立てないので、相手の反応がどうであろうと、自分が楽しいという気持ちだけでの行動だからです。大人からしても、「うざい」と思ってしまうほどです。実際彼が行った繰り返しの遊びは、園で歯磨きをする際、歯ブラシにプリントされてるイラストを隠して、お友達一人ひとりになぞなぞ形式で、イラストの名前を答えさせていました。先生から見ても、お友達が困惑してる状態だな、ということで、「彼はすごく楽しいから皆とやり取りしたいんだよ」とフォローを入れてもらいました。

長男と次男

 長男は、「こだわりの強さ」が原因で弟と喧嘩することがしばしばあります。彼は歩くときは弟の後ろを歩く、など自分の中に決めごとをしています。彼は、マイルールが実行ができない時に、次男と喧嘩になります。しかしながら、彼と弟は、共通する興味がある遊びを行い合える関係なので、兄ではなく友達のように一緒に遊んでいます。弟は障害のある長男と同じくらいの精神年齢だからでしょう。

 彼は弟とは、言葉のやり取りにも積極的です。それでも弟の方が言葉の理解が早いので、何も返せなくなってしまう時もあります。それでも、弟とは「言葉」が原因でぎくしゃくするという場面はそう多くありません。

長男の「プライド」

 長男は弟に対して「兄」でありたい気持ちが非常に強いです。保育園でも「実年齢」でありたいという気持ちが強いです。実年齢でありたいが故に、園生活を頑張り過ぎて体調を崩すことが多々あります。また、「保育園に行きたい」と口では話はするものの、頑張りたくない気持ちもあるのか、朝の準備を放棄することがほぼ毎日のようにあります。長男が保育園で頑張り過ぎた日は、家に帰宅すると抜け殻のようにぼーっとして何もしなくなることや、急に泣き叫ぶことがあります。それでも実年齢でありたいとさせている原動力は、彼の「プライド」であるとわたしは感じています。

 保育園でも、長男は、自クラスより2,3歳児クラスの活動内容に興味があります。「今日、3歳児さんは〇〇していた」という話を降園後によくしています。自クラスの活動はあまり興味がないようで、こちらから尋ねても淡々と事実を話すのみです。わたしは、彼が興味ある方向のものしか見ない習性を知っているので、2,3歳児クラスで行った活動を良く見ているな、と逆に感心します。わたしは、彼の「今日、3歳児さんは〇〇していた」の言葉の続きは「楽しそうだったから、僕もしたかった」なのではないかと、彼が話す度に思ってしまいます。ここでも彼の葛藤を見て取れます

長男の葛藤

 長男は実年齢相当の行動をしたいのに、障害ゆえできないことが多々あります。しかしながら、彼は「できない」と発信してくれません。彼のプライドが、「できない」ことを認知したくないのだと思います。彼は失敗に対して、異常なほど折れやすい心を持ち合わせています。それは、周りのお友達はできているのに対し、自分ができないことに多く直面しているからでもあると思います。保育園に通ってから、彼は周りの人の「視線」を良くも悪くも気にするようになりました。

 長男は、「プライド」と「ありのまま」の自分とで闘っているように見えます。それ故、彼の園生活はいつもちぐはぐで、いつもアンバランスで、いつも葛藤だらけなのです。

[参考記事]
「発達障害は保育園の先生からどのように見えるのか」

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