この記事は20代の男性に書いていただきました。
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私の母親はアスペルガー症候群と診断されています。私は父親と弟と一緒に暮らしていますが、母は事情があって離れたり一緒に住んだりを繰り返しながら暮らしています。
母の言動のどこからがアスペルガー症候群でどこからが母親の性格なのかという線引きがあまりできていない部分もあります。線引きできるものでもないと思いますので、今回は私の目線から見て、「ああ、母親はこういうことが苦手なのだな」「こんなところがアスペルガー症候群っぽいな」という、定形の発達とは違う特徴を何点か挙げてみたいと思います。
こういう苦手なことを持った人間も一緒の社会で生きているのだなという理解につながればと思います。
特徴①ある特定のことに対してこだわりが強い
引っ越しや模様替え、新しい家具の購入の時に一番こだわるのが私の母親です。最初に家具を置く位置が1ミリでもずれていると「気分が悪い」「変な感じがする」といって、それを直すのが常でした。
その後使っていくうちに場所がずれていくにはこだわりがないのですが、最初に置く位置だけはどうしてもこだわってしまうようでした。それを聞いた家族はどう応えるかというと、正直「めんどくさいな」と態度に出てしまいます。しかし、「まあしょうがないな」ということでそれに従うことになります。
しかし、こういった特性も悪いことばかりではありません。細かいところまでこだわる性格は絵を描くときの繊細な筆遣いや最後まで作品にこだわる姿勢に上手く生かされています。
アスペルガー症候群を含む自閉症スペクトラム障害を抱えている人はこだわりを強く持っていることも多いです。物にこだわったり、同じ道を好んで通るなどこだわりの出方は人によって違います。こだわりが通らない時にはパニックになることもありますが、母親もそうです。
「こだわり」とは、自分の興味や関心、ルールや手順、ペースなどを本能的に優先させることを言います。
特徴②急な予定の変更が苦手
「旅行に行ったとき、たまたま行こうとしていた店が閉まっていた。」「明日いくと思っていた旅行が急きょ中止になった。」このような予定の変更に対して母親はとても弱いです。こういう時にはパニック(声をだしたり、ものに当たったり)を起こしてしまいます。これも①で説明したように、手順やルールに対して強いこだわりがあるためです。
対策としてはスマホのゲームにあえて過集中することで気持ちを落ち着かせています(③で説明しますが、母は過集中の性質もあります)。
また、そのような状況に陥らないためにも、旅行の計画はとても綿密です。母親はアスペルガー症候群の「こだわり」に加え、待つことが苦手という性格的なことも重なって、「何時何分に出て、この時間の電車に乗って、〇番ホームのこの列車に乗って…」と、細かく細かく計画を立てます。
それに対して家族はどういう風に対応しているのかというと、長男である私がその計画の補助や立案に携わることが多いです。予定の変更は許されないので、正直、このことは私にとって負担になることもあり、楽しくない旅行になることも多々あります。それでも、母親の安定のためにと苦労することも多いです。
しかし、その計画のおかげで迷ったりすることなく旅行に行くことができるのもプラスの面です。
特徴③過集中になる
「テレビを見ているときに横から声をかけても聞こえない。」「スマホの画面に集中していると声をかけても聞こえない。」このように、一つのことに過剰に集中することを「過集中」といいます。母親はとてもこの傾向が強いです。そういうときには、声をかけなかったり、文字で示したりと配慮をしたりします。過集中もアスペルガー症候群を含む自閉症スペクトラム障害に多いです。
しかし、それも悪いことだけなく、その集中力は作業において特別な効率を発揮します。絵はがきを書いたり、文章を書いたりするときにはとても質の高いものを作り上げることができるのです。プログラミングの仕事をして人の中には結構、自閉症スペクトラム障害を持つ人が多いと言われています。一人で集中することに向いている仕事には最適です。
以上、これまで書いた以外にも母親は他にもさまざまな特性を持っています。しかし、その特性も悪い面ばかり目につきがちですが、それによって得ることのできる、また生かすことのできる面もたくさんあります。
このような特性をもった人たちは社会では数少ないながらもいます。彼女、彼らのことを障害者としてではなく、一人の人間として、特徴的な特性をもった人であると認識できる。そのような社会に日本がなっていけばなと思います。
[参考記事]
「自閉症スペクトラム障害(ASD)って何?その特徴とは」