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自閉症の息子のトイレトレーニングのために行った対策

 

この記事は自閉症の息子さんを持つ30代の女性に書いていただきました。

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 発達障害児でも健常発達児の子育てでも親を悩ませるのがトイレトレーニングではないでしょうか。なかなかトイレに行けない、座ると出ないなど、その子その子によって原因は違いますが、親もストレスがたまる時期です。

 視覚過敏や聴覚過敏、足裏の過敏さと様々な過敏さを持っていた息子は、自分への刺激を感じにくかったのでオムツが濡れている感覚が分からずトイレトレーニングは苦労しました。3歳ごろまでは発語が全くなかったので、トイレトレーニングより言葉の獲得が先だという思いもあり全く考えていませんでした。少しずつ自分の意思を発信できるようになってきた4歳過ぎに本格的にトイレトレーニングを始めることにしました。

 始めてすぐ、何となく連れて行ったトイレで偶然おしっこが出て、一歩進めたと喜んだのもつかの間、その後いくら座らせても成功せず「1回出来たのだから出来て当然」と思っていた私は、嫌がる息子を押さえつけて無理やり座らせ続けました。この行動により息子はトイレ恐怖症になってしまい、トイレに行く事すら出来なくなってしまいました。嫌な体験は忘れることが出来ないのが自閉症の特徴でもあるので、一度息子の中に出来た恐怖心を取り除くのは苦労しました。

 こういうことから場当たり的ではなく、計画的なトイレトレーニングのための対策を練る必要がありました。

[補足]
 息子の場合は強く刺激を感じる事が出来るのは足裏だけで、お尻や股間に関しては固有感覚の鈍さの問題もあり感じにくい部分でした。自分自身への刺激には鈍感なために、青あざが出来るほどぶつけていても全く痛がらずに普通に生活しているほどです。

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トイレトレーニングのための3つの対策

 トイレトレーニングのために初めに行った対策はトイレの壁に息子の好きなキャラクターの切り抜きなどを貼り、トイレに一歩入っただけで大げさに褒めることです。そして座れたら子供用便座にシールを貼って、自分の好きな便座に変身させる事が出来る工夫をして、スモールステップでトイレに座るところまで出来ました。

 ところが肝心なおしっこが出た後の報告や、出る前のアピールが全くなく、作業療法の先生に相談してみました。自分への刺激には鈍感なので、出る感覚はもちろん出た後の気持ち悪さも感じにくい。トレーニング用のオムツやパンツを使うより、より気持ちにくさを感じるように普通のパンツを履かせた方が良い、とアドバイスを受けました。これを2つ目のトイレトレーニングのための対策として実行しました。お漏らしをしてパンツもズボンもビチョビチョになっても本人は気にせず行動するので家中おしっこまみれ。トイレトレーニングのためとはいえ、何度も怒りたくなるのを我慢して、ビチョビチョになったら気持ち悪いんだという事を伝え続けました。何か月も続けてようやく出た後に気持ち悪そうにするようになりましたが、もしかしたら息子は気持ち悪い感覚はなかったけど、ビチョビチョ=気持ち悪いと言われ続けたことにより頭で理解できたのかもしれません。

 これらの対策が上手く行ったのか、そうこうしているうちに出た後に報告してくれるようになったのですが、出る前の感覚も分かってきたのか出る前に教えてくれることも多くなり、トイレでの成功率も増えてきました。この頃は言葉での報告はまだ難しかった時期なので、私の手を引いてトイレに連れて行ったり、トイレの絵カードを持ってくるといったアピール方法でした。

 おしっこの成功率が高まる中、うんちに関しては成功率ゼロ。出そうな感覚は感じている様子なのに、トイレには絶対に行こうとしませんでした。そこでまた相談に行くと、ウンチはおしっこに比べて体の中から出る感覚を感じやすいために、自分ではよく分からないものが体の中から出てくる感覚が怖いのかもしれない。視覚的に体の中で起きていることを教えてあげてみては?と言われ、ウンチの本を買って食べ物の流れを説明しました。これが3つ目のトイレトレーニングのための対策です。このことでウンチ自体は理解できたようでしたが、出る時はやっぱり怖いようで泣きながらトイレに座り、私が「怖くないよ。怖くないよ」と抱きしめてどうにか出来る状態でした。

 完全にトイレで出来るようになるまで1年ほどかかりましたが、「トイレでしても気持ち悪くなかった、怖くなかった」、という経験を1つずつ重ねることがとても重要な事でした。

[参考記事]
「自閉症の息子は固有感覚が弱いと発達検査で指摘されました」

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