この記事は発達障害と二次障害を抱える20代の男性に書いていただきました。
……..
私には以前引きこもりになっていた時期がありました。以前勤めていた職場で失敗続きだった私は、当時話題となりつつあった発達障害を疑うようになり、その結果、ADHD(注意欠陥多動性障害)・自閉症スペクトラムの診断を受けるに至りました。
診断を受けた際はどこかすっきりとした思いもあったのですが、その後も仕事がうまく行くことはなく、精神的にも追い詰められて行き、退職を決意しました。しかし、退職後も社会に対する不安や無職であることの焦燥感、情けなさから精神的に立ち直ることが出来ず、抑うつ状態が酷くなり、次第に部屋に閉じこもるようになったのです。
カウンセリングを受けるまで
引きこもっていた頃は、発達障害による二次障害(抑うつ状態)から何をするにも気力が湧かず、食欲も無くなり、一日中ベッドで横になっている日も多かったです。
何もしていないにも拘らず、頭の中は常にマイナス思考で、「自分は発達障害で何をやってもだめだ。」、「社会に自分の居場所はないんだ。」、「生きているのが逆に迷惑なのでは?」などといった事ばかり考えるようになっていました。
そんな中、両親から知り合いのカウンセラーを紹介したいという話がありました。正直、人と話すこと自体苦痛に感じていたので少し躊躇ったのですが、現状を変えるきっかけになればと思い、承諾することにしたのです。
初めてカウンセリングを受ける
カウンセラーの先生は年配の方でしたが、物腰も穏やかで話しやすかったです。私はとりあえずこれまでの経緯を話すことにしました。自分の発達障害の性質や仕事で何度も失敗したり、怒られたりしたエピソードを交え、自分がいかにダメな人間であることを話しました。
しかし、そんなエピソードを聞いて先生は、「私はあなたが間違っていたとは思っていません。」、「それは相手側の問題だと私は思います。」など、一貫して私を否定しないスタンスを取られていました。その時は悪い気分にはならなかったのですが、冷静に考えてもやはり自分の問題が大きいという思いは拭えず、「この人は本気でそう思っているのだろうか?」と懐疑的になることもありました。
ただ、最初のカウンセリングを受けてみて、どこか肩の力が抜けてすっきりした感覚になったことも確かでした。これまでろくに相談する相手もいなかった私にとっては、確かに良い機会かもしれないと思い、このまま先生の事務所に通うことにしたのです。
変化していった心境
カウンセリングの中で先生は決して私を否定せず、あくまで傾聴するスタンスを崩しませんでした。私が精神的に不安定な際は、過激な発言に至ることもありましたが、決して取り乱したり、説教を行うことはありませんでした。そして、やり取りの中で私のいまいち整理できていない心理状態を言葉で表現し、確認し合うことで少しずつ気持ちの整理をつけて行くことができました。
また、カウンセリングの中で度々私を評価してくれる場面もあり、「これまでよく頑張って来られましたね。」、「あなたのそういう一面。私は好きですよ。」などとも言ってくださりました。
正直、「本気で言ってるのかなあ?」という思いはまだありましたが、次第に「先生や周囲の人が私のことをどう思うかは大きな問題ではない。一番大事なのは私自身、自分をどう思えるか?ということだ。」という考えに変わっていきました。
私はそれまで自分が大嫌いで、当然周りも自分を嫌っているだろうという思考に囚われていましたが、そんなものは立場や状況でどのようにでも捉えられるのだから、少なくとも「これでもいい」と思える自分を目指そうと、前向きな考えを持てるようになりました。私はカウンセリングによって見失っていた自分を取り戻すことが出来たのです。
現在は二次障害の抑うつ状態の調子も安定し、「自分に出来ることは何か?」ということを模索している最中ですが、先生とは今でも親交があり、出会えて良かったと思っています。