この記事は30代の女性に書いていただきました。
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私は、ADHD(注意欠陥多動性障害)の診断を受けています。以前勤めていた会社では発達障害の性質を理解してもらえず、上司や同僚から怒られることが多かったです。こういうことが積み重なったことにより精神的に変になり、鬱病のような症状が現れるようになりました(発達障害の二次障害)。そして、耐えられず、退職をしました。退職をした後には楽になると思いきや、あまり鬱的な症状は治まりませんでした。社会から取り残されるという焦りや将来への不安感があったからです。そして、とうとう引きこもりのように1日中家にいることも多くなりました。
そんな中、生まれて初めてカウンセリングを利用することになったのですが、それがきっかけで精神的に立ち直ることができたので、その時の経験を振り返ってみようと思います。
初めてカウンセリングを受ける
カウンセリングを受けるきっかけは知り合いの紹介であり、カウンセラーの方(以降A先生と呼びます)も元々顔見知りだったので、利用までのハードルは高くなかったのは幸いでした。A先生は男性で私より大分年上ですが、お互い知り合いとは言え、まともに話すのは初めてなので、若干の緊張はあったように思います。ただ、A先生は穏やかな方ですので、程なくして緊張も解け、自分のペースで話すことができました。
カウンセリングをするに当たり、まずはこれまでの経緯や困っている点を整理して初回は終了し、その後は定期的に利用していく方向となりました。初回は状況確認をしただけだったので、この時点ではカウンセリングがどういうものかについてイメージが湧かず、期待半分不安半分だった記憶があります。
発達障害とカウンセリング
カウンセリングを進めるに当たり、最初にほっとしたのは私が発達障害だということをA先生は受け止めてくれたことです。世間における発達障害についての認識は徐々に広まりつつありますが、それでも十分な理解を得ているとは言い難いのが現状です。実際、私も退職の際に上司に発達障害とその特性についてカミングアウトしたのですが、「誰にでもそういう部分はあるよ。気にしすぎじゃないの?」と、あまり取り合って貰えませんでした。こういった経験からも、「診断を受けているのに発達障害者という視点から自分を見てくれないのでは?」という不安はありましたが、A先生は発達障害者である私や、障害における特性を否定することなく、それを前提として私の話を聞いて下さりました。
当時の私は過去・現在・未来あらゆる事柄を発達障害と結び付け、悲観的に見ていました。そういった思考に支配されていたと言ってもいいでしょう。一方、A先生はあくまで他人だからということもありますが、一緒に悲観的にならず客観的に見ていました。私がネガティブな話題を話す際、何かと「発達障害だから」と口にしても、A先生は否定こそしませんが、必要以上に突っ込んだ返答もされませんでした。その代り、私が話した失敗談や愚痴に対し、A先生の視点から同調することの方が多かったです。カウンセラーは聞く技術がずば抜けて高いので、それだけでこちらとしては心の癒しを得られた感じがするのです。
生きる力を取り戻す
私は素人なので推測に過ぎないのですが、カウンセリングを行うに当たり、発達障害か、そうでないかという点はあまり関係ないのだと思います。本当に大事なことは、私のボロボロになってしまった自己肯定感を取り戻すことにあったのです。
A先生は私の状態を「正常な思考ができない状態」とよく表現されていました。当時の私は鬱状態だったこともあるのですが、「自分は発達障害で何をしてもダメな人間。社会に居場所はない。」と、常に絶望していたのですが、よくよく考えれば「全く道はない」ということはありません。やり様によって切り開ける未来もあるのですが、そういった人間本来の「前向きな思考」ができなくなっていただけなのです。そして、この「前向きな思考」を実現するには何より「自己肯定感」が必要になり、自身を認め、前を向いて歩きだせば「希望」に手が届くようになるのです。
カウンセリングによりそれに気が付いた私は、まずは「正常な思考」を取り戻そうと、自分の中のポジティブな面を書きだしたりして、少しずつ精神を立て直していきました。精神的に安定すると、自ずと前向きな思考にもなり、「発達障害者」であることを悲観するだけでなく、受け入れた上でできることを見つけようという目標も生まれました。
カウンセリングの中で、A先生は基本的に傾聴の姿勢を取り、直接私を救うための行動に出るといった事はないのですが、カウンセリングを続ける中で私は前向きな思考ができるようになり、その結果救われることができました。「カウンセラーはあくまでクライアントの生きる力を引き出す者」という話を聞いたことがありますが、振り返れば正にそうだなと思います。私の生きる力を引き出し、成長するきっかけにもなったこの経験は、人生の中での大きな財産です。
[参考記事]
「私の幻聴は発達障害の二次障害が原因」