この記事は自閉症のお子さんを育てている30代の女性に書いていただきました。
…………………..
小学校一年生の息子がいる母親です。息子は自閉症スペクトラムで、地域の小学校の支援級に在籍しています。息子は特に言語遅滞がネックになっているので、言葉でのコミュニケーション能力が実年齢より低いです。例えば担任の先生からの一斉指示、相手の話す内容を理解する、自分の気持ちを相手に伝えることなどが苦手です。先生からの「はーい注目して」などの一斉指示が聞き取りにくいだけではなく、クラスのお友達が帰り際「ばいばい~」と息子を見て声をかけてくれても、自分に声掛けしてくれているとは気がつかず無反応なことが多々あります。お友達も慣れてきて「A君(息子) バイバイ」と息子の目の前で手を振ってくれます。
また、他人の目線が怖くて相手の目を見ることができません。家族は毎日接するためか目を合わせて言葉を発することが多くなりました。しかし運動会や発表会など皆の前で行動することは練習ではできるのに、本番になると観客の目線が怖くなり本来の力が発揮できません。
支援級の担任の先生
支援級の先生は発達障害について詳しいかといえばそうでもなく、担任の先生から次のように言われました。
「お母さん、A君(息子)の事で、おススメな本とかお持ちなら私達に貸してもらえないですか?すぐには読めないけど、夏休みに入ったらじっくり読めるので。」
勿論了承し、夏休み前に持って行ってお貸ししました。
支援級の先生方は息子のような発達障害以外にも不登校、ダウン症、肢体不自由等の児童も見なくてはいけないので、外から見ていても勉強することが多く大変だなと感じます。
私は思わず
「私は自閉症の息子だけ見ていればいいですが、先生方はいろんな生徒の支援をされているので大変ですね…」と素直な気持ちをお伝えしました。
すると先生は
「色んな保護者の方やお子さんから支援方法を学ばせてもらっているのが実際かな…」
「支援学級の教員対児童の人数の割合は1対8ですが、この比率では一人一人に十分に支援が行き届かないのが現状です」
と率直な意見も言ってくれました。
先生に渡した本
夏休み前になり、私は先生に3冊の本を渡しました。
①「自閉症の僕が跳びはねる理由」
②「自閉症の僕が跳びはねる理由2」
二冊の著者である東田直樹さんは5歳の時に自閉症と診断されています。発語はありますがダイレクトな会話は出来ません。コミュニケーションは母親自作の文字盤を使いながら意思を表現します。例えば「調子はどうですか」と質問をするとローマ字の文字盤を押しながら声を出して話をします(歌手がマイクを使うように彼も文字盤を使って表現しているのだと思います)。
東田さんは小さい頃から文字に興味があり、話せないけど幼いころから漢字などが書けたそうです。そうした言語の才能を母親が伸ばすことに注力した結果、今では作家の仕事をしています。
私はこの本を読んでからNHKの教育番組で特集された東田直樹さんの動画を見ました。そこには丸いものに強い興味を持って(車の車輪)、ずーっと見ている場面や東田さんの脳をMRIで撮影して、その見解を医師が述べている場面が放送されていました。医師によると彼が話せないのは「言葉を話す部位(ブローカ野)」と「言葉を理解する部位(ウェルニッケ野)」を結ぶ「弓状束」という部位の機能が上手く働いていないことが原因かもしれないとのことです。
この本が貴重なのは当事者目線で書かれていることです。ですので、自閉症を育てる親や先生はすごく参考になると思います。
③「イラストでわかるABA実践マニュアル」
自閉症療育の一種である応用行動分析学(通称:ABA)の具体的な取り組み方をイラスト付きで分かりやすく説明されたものです。幼少期に息子はこの本を元に家庭療育に励み、スモールステップですが成長することができています。
二学期が始まり、本を読み終えた先生からは「どれもいい本で分かりやすかったです。特に東田直樹さんの二冊は、各テーマ別に分かりやすい文章で書かれていて当事者の気持ちがひしひしと伝わってきました。A君の行動に似ているテーマもあって思わずコピーしました。読んでみてもっとA君のことを分かってあげたいと思いました!!」
と保護者としては嬉しい感想をいただけました。
私は内心、社交辞令でただ本を借りて勉強した姿勢を見せるだけかな? 読んでいただいても理解していただくことは難しいかな?と不安要素はいくつかありましたが想像以上だったので本当良かったです。
学校によっては支援学級を担当される先生は、教員前の若い講師の先生や産休明けで担任を持ちたくない先生が支援担当をされることも多いですが、正直知識や経験不足が否めません。少しでも多くの支援者の方に東田直樹さんの著書を読んでいただきたいと思います。