この記事は発達障害の子供を育てている女性に書いていただきました。
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3歳になっても全く発語がなかった息子。何か病気があって話せないのかもしれないと思い、総合病院に相談に行きました。反応の仕方からいって耳は聞こえているだろうからと、次は言葉を発する器官の検査をすることになりました。まずは口の中の検査で、舌が長すぎないか、短すぎないか。次に鼻から内視鏡を入れ、喉の動きや異常な箇所がないかを診てもらいました。椅子に押さえつけられ泣き叫ぶ息子の姿は痛々しく、これで何か異常が見つかればもう終わるから…と思わずにはいられませんでした。
結果どちらも問題はなく、最後は睡眠薬を飲んでの脳波検査です。睡眠薬を飲みたがらず苦労しましたが、これも結果は異状なし。「言語発達遅滞」というはっきりしない診断名がつけられました。その後の保健士さんからの訪問で療育施設を紹介してもらい、そこで初めて発達障害(自閉症)だと分かり、言葉が出ないのもそのためだと言われました。
息子はずっとよだれが止まらず、それが発語の邪魔をしていると言われましたが、よだれなのでどうすることも出来ません。よだれを止めるお薬があると説明をうけましたが、あまり子供に薬を飲ませたくなかったので、気長に待つことにしました。
よだれをうまく飲み込むことが出来ないので言語聴覚士さんに診てもらうと、嚥下能力も口の筋力も弱い。口の上手な動かし方が出来ていないそうです。口の上手な動かし方?と思ってしまいましたが、よく考えてみると息子は麺類をすする事が出来ません。シャボン玉を吹くことも出来ませんし、おもちゃの吹き戻しも出来ません。呼吸レベルでは出来ていても、吐く、吸うといった事がうまく出来ていなかったのです。嚥下能力の問題から硬いものは飲み込めず、家では離乳食のように柔らかいものを食べさせていました。この事から早めに対応した方が良いだろうと、週に一度言語聴覚士さんの訓練を入れてもらえることになりました。
言語聴覚士さんの訓練が始まる
言語聴覚士さんの訓練というと「話す」事をメインにするものだと思って期待していたのですが、実際は迷路の中を息でボールを動かしたり、入れ物の中に入っているフェルトのボールを息だけで外に出すなど正直期待外れなものでした。でもその期待外れな訓練も息子は出来なかったのです。なんにでも順番があるんだなと思いました。話せなかった子にいきなり言葉を教えたからと言って話せるようにはならないのです。私達は普段何も意識することなく話していますが、口の筋力や動かし方、息の出し方などで話すことが出来ています。発達障害の息子はそれを一つ一つ訓練によって身に着けていかなければなりませんでした。
息子の場合は耳は聞こえ、言葉も認識できていたので、ひらがなのマッチングを始めました。「あ」と言いながら「あ」のカードを見せ、「あ」と真似をさせます。これを繰り返していきます。はじめは不明瞭な発音ですが、よだれの問題もあるので言葉を発すれば大成功という感じでした。言語聴覚士の先生はカードによるコミニュケーションなども積極的に行ってくれていたので、発語と同時に表情の勉強やパズルをしたりと楽しんで通っていました。
先生の指摘通り、よだれが少しずつ減っていくと同時に発語が増えてきました。おうむ返しばかりで会話とは程遠いものですが、好きなアニメのセリフを真似していたり、カーナビの音声の真似をしたりする息子の声を聞けることが嬉しいです。発語からおうむ返しをするようになるまで2年かかりました。発達障害の息子が自分の言葉で話し、私達と会話できるまではまだ何年かかるか分かりません。でも少しずつでも進歩している息子と話すのを楽しみに待っていようと思います。