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セラピストとして大人の発達障害に対して行っている事

 

この記事はセラピストの女性に書いていただきました。

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<大人の発達障害>

 私はセラピストをしております。主に大人の発達障害を対象としていますが、発達障害の子供を持つ親がストレスを抱え、精神科医や心療内科医の紹介で私の元に訪ねてくるケースもあります。

 発達障害専門のセラピストではありませんので、カウンセリング、そしてヒプノセラピー(催眠療法の一つ)などを主としておりますが、その方によって様々な治療法をおこなって、病院とセラピーの両方から患者さんをサポートしております。

発達障害に気付くまでの道のり

 30代の公務員の男性の方が、精神科のドクターの紹介でやってきました。今の様子を聞いてみますと、今はなんとか毎日出勤しているくらい取り戻したようです。数年前は休職しており、そこから少しずつ午前中だけなど、短い時間での勤務を経て、現在は復帰されています。しかし、まだ不安定なところもあるためにセラピストである私のところにやってきました。

 ドクターのほうからは今も薬と問診を続けていること、また医師が主催している発達障害のグループにも定期的に参加しているということを聞いていました。

 お話ししていても、普通に元気そうで、回復してきているのが感じられました。このように症状が落ち着いている時は、発達障害の特徴が出てこないので、セラピストもドクターの紹介でなければ、初回お会いしただけでは障害があることは分かりません。

 大人の発達障害は、最初はうつ病のような症状を患者が感じるようになり、その後、病院へ行き、医師の診断で発達障害に気付いていくというパターンが大人の場合はほとんどです。この場合のうつ病は発達障害の二次障害から発生しているケースが多いですが、発達障害に対して適切なサポートがないまま過ごしていると精神的に病んでくる場合があるのです(参考記事「発達障害の「二次障害」とは何か。放置すると大変なことに」)。

<カウンセリングをしているうちに、分かったこと>

 彼から話を聞いているうちに、とても礼儀正しくて、はい、はい。と、てきぱきと答えているのが印象的でした。しかし少し肩に力が入っていたために、「そんなに緊張しなくても良いですよ。リラックスしてくださいね」と伝えながら、彼のカウンセリングを始めました。

 今彼が勤務している職場の勤務中に、うつ病を発症したこと。そこから休職して精神科医に行き、発達障害だと診断された経緯を語ってくれました。なぜうつ病になったのか聞いてみると、上司に何度も罵倒されたことが原因でした。一人だけ仕事が明らかに遅いこと。また一つのことに集中するばかりに、他の仕事や一緒に働く同僚の配慮が足りなく、チームワークが取れていないことも上司が責める大きな原因のようでした。これは発達障害の特徴、性質の一つです。

 上司は彼に何度も同じことを伝えても同じミスを繰り返すばかりで、「自分はなぜ怒られているのか、どうすれば良いのか」が分からなくパニックになります。上司がしてほしいことが改善されないため、余計に上司の怒りに触れて、他の同僚たちの視線も冷たくなり、職場にいられなくなって、結果、うつ病になってしまったのです。その根底には発達障害があるのですが、彼の上司や同僚に限らず、「発達障害」という言葉すら知らないのが今の社会の現実です。

<発達障害と気付くまでに彼がしたこと>

 そのような職場の状態で、精神的に追い込まれて休職して、病院へ行きました。最初のドクターから、うつ病だと診断されました。彼はとても公務員らしい真面目な性格で、早くなんとか良くなって会社復帰しなければと必死だったとのこと。しかしなかなか症状が良くならず、有名な医師だという噂があれば、地方出身の彼は飛行機へ飛んで、その土地の有名な医師に診断してもらうということもしていたようです。

 それでもなかなか思うようにいかず、たまたま、ある方の紹介で、別の精神科医のところへ行ったところ、そこで、「発達障害」という診断を初めて受けたようです。そのとき、どんな気持ちでしたか?と伝えると、彼はほっとしたと語っていました。いろんなところへ行き、焦っていた自分が、発達障害だと気付いたことで、楽になったと。そして治療の一環としても、彼はセラピストの私の元にセラピーを受けにやってきました。

<私がしたこと>

 カウンセリングの他に、ヒプノセラピーという催眠療法をしようかと思いました。しかし、彼はすでに社会復帰しており、カウンセリングだけで十分だと判断しました。あとは本人の不安感を和らげるために、そしてまた今度同じことがあったらどうしたらいいのか。どういうふうにすると自分が楽になるのか。周りからどんな協力や理解を得られるのかを、具体的に話を進めていきました。もしこうなったら、こんな気持ちになったら、こんな状態になったら、こうしましょうというサインみたいなものを作りました。

<そこから彼がしたこと>

 彼は1年に数回たまにいらしてくださいますが、元気そうです。職場の人には、自身が発達障害であることを告げたことで、大きく職場の雰囲気が変わったようでした。働き方も変わり、今は趣味にも打ち込めるようになったとのこと。そして叱責した上司が転勤になり、ずいぶん楽になったようです。発達障害である自分を受け入れ、彼は自分ができる範囲のことをしています。

 もしこの先、叱責されたときはどうするのか?と聞いてみたら、「ごめんなさい。」と、とりあえず何でもいいから謝ることにしたと言ってました。自分が悪くなくても「ごめんなさい。」とまず言うと。「でもそれが楽なんです」と、おっしゃってました。私もその笑顔と態度で安心しました。

<セラピストの私が感じたこと>

 悪くなくても謝るなんて、、、と通常は思いますが、理屈どうこうではなく、それでいいのだと私は思います。発達障害の特徴の一つとして、なぜ悪いのか、他者の空気や雰囲気を読めないという特徴があります。それならば、悪いと思っていなくても、とりあえず謝る。それで本人も周りの気持ちも落ち着くのであればそれでいいのだとセラピストとして思います。

 大事なことは、いかに本人にとって、楽な生き方ができるようになるのかですので、理屈は必要ないと思います。ぜひ発達障害の方が身近にいらっしゃるようでしたら、自分の正しさ、世間の正しさみたいなものを押し付けないで頂きたいと願います。それが結果、周りも発達障害を抱えている本人も楽に生きられるヒントになると思います。

[参考記事]
「[大人の発達障害] ヨガ教室にアヒルを連れてくる事例」

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