発達障害になる原因を理解するには脳の働きを知ってみよう。ほんの少し昔には「発達障害の原因は親のしつけのせい」と言われていました。しかし脳科学の研究が進んできたこともあり、現在ではそのような説は否定されています。
現在は「発達障害の原因は生まれつきの脳機能の問題である」が主流となっています。ですが、脳がどのように機能し、その人の行動に影響を与えるのかについては何となく知っているようで意外と知らないかもしれません。今回は、脳の働きについての基本的なところをおさらいしてみたいと思います。
脳は場所によって担当が違う
脳をひとつの会社に例えると、場所によりそれぞれの担当部署があります。以下、ざっくりと説明します。
〇脳の前部分(前頭葉):他部署(頭頂葉、後頭葉、側頭葉など)の情報を統合して、推測や判断をする。また、行動や感情を制御する働きがある。
〇脳のてっぺん部分(頭頂葉):空間情報を分析・処理、いわゆる空間を把握する。自分の体の動きを感じ取る。皮膚刺激を感じ取る。
〇脳の側面部分(側頭葉):聴覚情報の分析・処理。音声や文字の意味を理解する。
〇脳の後ろ部分(後頭葉):視覚情報の分析・処理。色彩認識はこの部分で行っている。
これらの担当部署同士はネットワークを作り、さまざまな情報をやり取りしています。ところが発達障害の場合、この情報のやり取りがうまくいっていない状態と言えます。会社でもありますよね、部署同士の連携がうまくいっていないことが。それに近い状態といえそうです。
発達障害の子供によく行われる「感覚統合療法」は遊びを通して、脳の神経細胞ネットワークをスムーズに行えるよう働きかけるセラピーです。発達障害の人の不適切な行動の裏には脳の働きの不具合があります。脳の働きについて少しでも知っておくと行動の原因が分かりやすくなります。
最近の研究成果では
2016年7月に大阪大学の神経科学の教授が「発達障害は特定の遺伝子が重複して存在すると引き起こされる」という研究結果を発表し、話題になりました。「マイクロRNA484」という遺伝子が重複して存在すると、脳機能の発達に異常をきたすというのが今回の研究結果です。
チームは「マイクロRNA484」という遺伝子に注目。この遺伝子を重複して持つようにしたマウスを作製したところ、胎児期には大脳皮質で神経細胞が過剰に作られ、生まれた後は落ち着きなく動き回るなどの症状を示した。
日本経済新聞から引用
このように現在主流となっている脳機能の障害の裏付けになる研究成果がこれからもいろいろ出てくることでしょう。また、今後研究が進めば、発達検査に加えて遺伝子検査なども診断の決め手になるのかもしれません。そしてピンポイントで治療ができるようになる日も来るのかもしれませんね。
[参考記事]
「発達障害は遺伝性の病気なの?」