この記事は30代の女性に書いていただきました。
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現在6歳の我が子が、発達障害かもしれないと指摘されてから3年。それは「専門家に見てもらってください」という言い方ではなく、「もしお母様が気になるなら、専門家に見てもらうのもひとつの策です。」というような、非常にあいまいな暗示でした。
それからの、保育園入園、保育園の転園、引っ越し、そして小学校への入学。そのすべてにおいて、どうしても問題として浮かび上がってくるのが「発達障害」という言葉でした。
今でも子どもの発達について、悩みながら毎日を過ごしています。今回は保育園選びで苦労をした体験をお伝えします。
発達障害と指摘された3歳児検診
我が子は赤ちゃんの頃から、大人しい子でした。他の子が乱暴にはしゃいだり、暴れたりする中でも、ちょっと引っ込み思案な様子でおとなしく座っていることが多い子どもでした。
そのため、3歳児検診で「発達障害」かもしれないと指摘された時には、かなりの驚きと反発とを覚えました。
あんなにしっかりと物を分かっているような顔をしているし、電車の名前やアナウンスなどを一瞬で覚えてしまう知的能力も高い子どもだから、そんなはずはない。
しかし、思い起こしてみました。3歳になってもなかなか2語文が出なかったこと(言葉の遅れ)、食べ物のルールがかなり細かく、丸い食べ物の端しか食べず、真ん中の部分は決して食べないこと(こだわり)。また、毎日歩いている道を少しでも変えようとすると大泣きして騒いでしまうこと(常同行動)。
そんな様々な子どもの特徴は、インターネットや専門書にある「発達障害」の子どもの特徴にぴたりと当てはまるものばかりなのです。特に自閉症の特徴と重なるところが多いです。
しかしながら、子どもはグレーゾーンということでした。
「まだもう少し様子を見て、小学校に上がるまでには変わるかもしれない」そんな周りの家族からのアドバイスもあり、専門家に相談することは見送っていました。
内定した保育園から辞退の連絡
子どもが3歳でになった頃、保育園に入園させようと色々探していた時の話です。
認可保育園に入園するための手続きの際に、入園の申込書に「言葉の遅れが多少気になっている」という記入をしたところ、内定した園から突然受け入れはできないという内定取り消しの連絡がありました。
その後、区(東京都)の担当者が自宅まで訪問に来ました。私は子供の自宅での様子をお話しし、「3歳児検診では発達に心配だと言われたが、その後発育も良好なので、特に専門家に診てもらう必要はないと思う」旨を伝えました。
とても友好的に話を聞いていただけたのですが、やはり「内定していた保育園は、発達に心配のあるお子さんを受け入れる環境ではない」という回答でした。
やっと保育園に入れたのはいいが…
しばらくして、人員に余裕がある保育園に受け入れてもらえました。住んでいる場所から、バスを2つ乗り換えるような遠い園ではありましたが、やっと決まった園ですから、すぐに入園を決めました。
その園での様子を見て、私は他の子どもたちとの違いに次第に気づいていくことになります。
最初は、「急に保育園に入ったから、赤ちゃんから保育園生活をしている他の子に比べて、多少の遅れは仕方がない」。そのように考えていました。
しかし、先生からは「まだお箸も使えませんね」「自分でお道具の用意が出来ません」「食事の好き嫌いがひどくてほとんど食べていません」。そのようにいつも指摘を受けていました。
ショックだったのは、運動会でした。かけっこなどは、1周遅れでもなんとかゴールまではたどり着くので、「運動は苦手なのだな」とのんびりと応援していました。それが、ダンスなどの集団での表現の種目では、固まったまま動かないのです。他の子どもたちがみな楽しそうに踊る中で、ひとりだけ固まっていたのでした。
そういう様子を見ていて、「特別な配慮」が必要な子なのだという実感を、ひしひしと感じるようになっていきました。
良い保育園・悪い保育園
引っ越すこととなり、新しい保育園への入園が決まりました。転園の申込みの際には、一つ前の保育園の先生に、子どもの発達状況について転園先にどう話すべきなのかを相談しました。
「お母様が気になるのであれば、伝えてください。園としては、子どものプライベートについては、情報を伝えることはありません。」という話でした。
引っ越しは決まっており、保育園がまた以前のように途中で受け入れ拒否をされたのでは、どうしようもありません。言葉の遅れと、引っ込み思案な性格であることなど、「発達障害」という言葉は伏せて、面談などを終えて入園となりました。
しかしその園は、後から分かったのですが、かなりスパルタ式の保育園でした。かなり厳しい先生方のやり方についての争いごとが絶えない園だったことは後から聞きました。
そんな厳しい先生方の中で、我が子はお道具の準備も出来ず、分からないことも質問が出来ず、食事も白米以外はまったく食べようとしない。
次第に先生からはクレームのような形で毎日頻繁に電話がかかってくるようになりました。
朝9時から夕方5時までの契約だったにも関わらず、朝の10時には保育園からの電話がなります。
「泣いているので迎えに来てください」
次の日には昼の12時半に、
「食事を口にしないので、迎えに来て下さい。」
毎日仕事を早退して対応していたのですが、ある時こう言われました。
「うちの園ではあなたのお子さんを9時から5時まで預かることは出来ません。発達の支援のセンターに通ってください。それ以外の時間しか保育園では受け入れできません。」かなりの厳しい口調でした。
発達障害に関しては、行政は親の方針について強制的に指導することは出来ません。保育園にしても同様です。
そのことを担当の行政のかたに相談しました。すると、「その園は転園したほうが良い」ということで、すぐに近くの別の保育園に転園することが出来ました。
短期間で保育園を転々としてしまうことになってしまった子どもも可哀そうではありました。しかし、この転園先の保育園が素晴らしいところでした。ここでは、率直に「発達障害」について相談をしてから面談しました。
園長先生は「しばらく様子を見て、発達について心配があるかどうか一緒に考えましょう」と言ってくださいました。前の園で厳しく言われ、かなり激しい口調で叱られていた様子の「食事」に関しても、「白いお米だけでも食べているなら大丈夫です。少しずつ頑張りましょう。」という言葉でした。
発達障害の子どもにとって、食事というのは大変な課題です。ただの食べず嫌いとは違って、その子どもにとっての「大切なルール(こだわり)」を、無理に打ち破らせるようなものなのです。「わがままで、野菜が嫌い」だから、食べないのではありません。子どもにとっては、不可能に近い、恐怖を覚えるような事柄なのです。
食事だけではありませんでした。人前に出ると異様に緊張してしまう部分についても理解があり、先生方は「今日は少しだけみんなの前で発言が出来ましたよ。」という風にポジティブな面を見てくれました。「これが出来ない」「あれが出来ない」ではなく、「今日はこれが出来ました!」そんな報告が嬉しくて、毎日の先生との会話が楽しみになるほどでした。
子どもも次第にその保育園で集団生活の楽しさを知って、表情は見る見るうちに明るくなりました。なかなか出来なかった友達も出来ました。優しい先生方の間で、どんどん成長していく子どもの様子に、「あんなに悩んだ発達ももう心配ないのかもしれない」とそんな風に思い始めました。
まとめ
「発達障害」というデリケートな子どもにとって、保育園選びはとても重要なことだと分かりました。先生の接し方だけで、子どもの出来る・出来ないは大きく変わっていきます。
発達障害はまだまだ知られていないこともあり、誤解も多くあります。障害という言葉を聞いただけで、敷居を作ってしまう人も多くいます。短期間で3つの保育園を経験してきたことで、周りの関わり方が良ければ子どもも変わるのだということを実感しました。
[参考記事]
「障害のある長男が保育園で感じる葛藤とは」