発達障害は遺伝性なのかを医学的根拠の有無も含めて解説します。お子さんが自閉症スペクトラム(広汎性発達障害)やADHD(注意欠陥・多動性障害)と診断された時、遺伝って関係あるのかなと気になる方は少なくありません。
遺伝の可能性はありますが….
「発達障害は遺伝するのか?」ですが、遺伝子が関わっている可能性もあります。イギリスの研究グループが「ネイチャー」という科学雑誌に「発達障害の新規の遺伝的原因を発見」という内容の論文を発表しました。
それによると1000人近い発達障害の子供の遺伝子と親の遺伝子を分析したところ、12個の発達障害に関わる遺伝子を発見したと言っているのです。
ですので、遺伝子が関わっている可能性が高いのですが、それらの複数ある遺伝子がどのように関わって発達障害を発症させているのかはまだ分かっていません(数百の関係遺伝子があると言われています)。兄弟で発症する子としない子がいるのはそのためですが、双子の場合には関わっている遺伝子が近いため、二人とも発達障害になる確率が高いと言われています。
また、両親どちらか(または両方)が発達障害だった場合の子どもへの発現率は、そうでない場合に比べて高いため、遺伝的要因があるかないかといえば「ある」となります。
[補足]
男子と女子を比べると男子の方が発達障害を持って生まれてくる数が4.5倍多いことがアメリカの調査で分かっています。
ASD is about 4.5 times more common among boys (1 in 42) than among girls (1 in 189)
アメリカ疾病管理予防センターより引用
思考のクセや行動パターンは親子で似ることも
この遺伝の仕方は、私は「脳の癖の遺伝」と考えています。発達障害の特性が「遺伝した脳の癖」により、色々な特徴になって表れてくるということです。お子さんの持つ発達障害の特徴が一般的に言われている発達障害の特徴に当てはまるものもあれば当てはまらないものが出てくるのもそのためでしょう。
「脳の癖」が遺伝するとなると、やはり親子で思考の癖や行動パターンが似ているということが少なくありません。
「親子そっくり」ならそれを強みにするのも方法
「遺伝の可能性がある」といった話や、「親子で脳の癖は似る」といったことを書きました。でも私は、この事実は悲観する話ではないと考えています。「親子そっくり」ならばむしろそれを強みにしてしまえばいいのです。「目の前のお子さんが今、困っていること」は実はあなた自身も昔、困っていたことではないですか?
そして今、つらさを抱えながらもなんとか乗り越えてきたのではないでしょうか。思い出してみてください。その困ったことをあなたはどうやって乗り越えてきましたか?
ADHDのお子さんの忘れ物の多さの解決方法も実は、「昔のあなた」が知っているかもしれません。当時工夫したことや「今思えばもう少しこうすれば良かったな」と思うことをお子さんに教えてあげてください。お子さんのつらさを一番わかってあげられるのは、似たもの親子のあなたです。
まとめ
障害の特性をなくすことは難しくても、世の中を生きやすくすることは可能です。ぜひ、実地で得たノウハウがあればお子さんに教えてあげてください。一番大事なのは遺伝のせいかどうかではなく、「お子さん自身が将来、社会で幸せに生きていくこと」です。