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発達障害の人が犯罪を犯しても無罪になるのか。エビデンスを示します

発達障害のある人が犯罪を犯した場合、「無罪」になるのかという疑問には、法的・医学的・社会的観点からの慎重な検討が必要です。結論から言えば、発達障害があるからといって自動的に「無罪」になることはありません。ただし、刑事責任能力(責任能力)の有無や程度が問われ、その評価に基づき、刑の減免、保護観察、医療観察法に基づく処遇などが適用されることがあります。


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1. 発達障害とは

発達障害とは、先天的な脳機能の障害によって、認知、行動、対人関係において持続的な困難を抱える状態を指します。日本の「発達障害者支援法」では、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)などが含まれます。

これらの障害は、その人の意思決定能力や衝動抑制、社会的ルールの理解に影響を与えることがあり、刑事事件に関連することもあります。ただし、発達障害者が必ずしも犯罪に及ぶわけではなく、むしろ多くは非犯罪的な生活を送っています。


2. 刑事責任能力とは

刑事事件においては、「犯罪を犯したかどうか」だけでなく、「責任能力」が問われます。責任能力とは、違法行為を認識・判断し、自らを制御できる能力のことです。刑法第39条では、以下のように規定されています:

つまり、精神障害や知的障害、発達障害によってその能力が失われていた場合、刑罰は免除または軽減される可能性があります。


3. 発達障害と責任能力の評価

発達障害があるからといって、直ちに責任能力が否定されるわけではありません。責任能力の有無は、医学的専門家(精神科医など)が鑑定を行い、裁判所が判断します。

【エビデンス1:裁判例】

実際の判例では、発達障害がある被告人に対しても、責任能力が「完全にある」と認定され、有罪判決が下されることが多くあります。たとえば:

【エビデンス2:医療観察法制度】

重大な犯罪(殺人、放火など)を犯した精神障害者が、責任能力に問題があったとされる場合、「医療観察法(心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律)」に基づき、裁判所が治療を命じることがあります。発達障害はこの制度の対象になりうるものの、適用件数は限定的です。


4. 犯罪傾向と支援の重要性

発達障害者が犯罪に巻き込まれる背景には、環境的・社会的要因が大きく関係します。支援の不足、いじめ、孤立、雇用の困難、対人関係の不器用さなどが累積し、結果的に逸脱行動に至ることがあります。

【エビデンス3:実証研究】


5. 社会的誤解と偏見

発達障害者が犯罪に関与した事例が報道されると、「発達障害=危険」という誤ったイメージが広まりやすいです。これにより、当事者や家族が社会的に孤立しやすくなるという二次的被害が生じます。専門家は一貫して、「発達障害のある人の大多数は法を遵守しており、支援によって生活の安定が図られる」と強調しています。


6. 今後の課題と展望


まとめ

発達障害のある人が犯罪を犯した場合、無条件に「無罪」になることはありません。発達障害の有無は刑事責任能力の判断要素の一つとして考慮されますが、それだけで判断が決まるわけではなく、個別の事情、医療鑑定、裁判官の判断などが複合的に作用します。重要なのは、発達障害と犯罪の関係をステレオタイプで捉えるのではなく、早期支援、理解、制度整備によって再発防止・社会的包摂を進めていくことです。

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