発達障害(ASD、ADHD、LDなど)を持つ子どもや大人が日々の生活や学習、仕事に取り組む上で、デジタルツールやアプリは心強い味方となります。発達障害の特性は人それぞれで異なりますが、「見通しを立てるのが苦手」「注意が逸れやすい」「コミュニケーションが難しい」といった共通の課題に対して、ITツールが補助的な役割を果たすことができます。
本記事では、特別支援教育や福祉、就労支援の現場でも活用されている、信頼性の高い発達障害支援アプリ・ツール10選を紹介します。日常生活から学習、コミュニケーション支援、就労支援に至るまで、幅広くカバーします。
1. Time Timer(タイムタイマー)
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種別:時間管理アプリ
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対象:ADHD、ASD、LDなど
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対応OS:iOS / Android
Time Timerは「見えるタイマー」として有名なアプリです。時間の経過を赤い円が縮んでいく視覚的な変化で示すため、抽象的な「時間」を理解するのが難しい子どもでも感覚的に把握できます。
発達障害のある人の中には、「時間の感覚」がつかみにくいという特性を持つ方が多くいます。例えば、「あと10分で出かける」と言われても実感がわかず、行動を切り替えられないことがあります。Time Timerを使えば、視覚的に残り時間を把握できるので、スムーズな移行が可能になります。
■ 主な機能:
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時間の可視化
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カスタマイズ可能な色や音
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アラーム機能
■ 活用例:
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学校や家庭での課題時間管理
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支援学級での切り替え支援
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就労場面での作業時間管理
2. 見えるスケジュール(視覚支援アプリ)
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種別:スケジュール管理・視覚支援
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対象:ASD、知的障害など
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対応OS:iOS / Android
「見えるスケジュール」は、写真やイラストを使って一日の予定を視覚的に示すアプリです。自閉スペクトラム症の人たちは、言葉だけでスケジュールを把握することが難しい場合がありますが、視覚的に示すことで安心感を得られ、混乱を避けることができます。
■ 主な機能:
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画像やアイコンによるスケジュール提示
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音声読み上げ
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カスタマイズ可能な予定登録
■ 活用例:
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登園・登校前の準備支援
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就労移行支援での作業工程提示
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家庭での生活リズム安定化
3. Voice4u(ボイスフォーユー)
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種別:AAC(拡大代替コミュニケーション)アプリ
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対象:ASD、知的障害、言語障害
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対応OS:iOS / Android
Voice4uは、言葉によるコミュニケーションが困難な人のためのコミュニケーション支援アプリです。イラストや写真をタップすることで音声を再生し、相手に気持ちや要求を伝えることができます。
■ 主な機能:
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1000以上のイラスト・音声データ内蔵
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カスタム単語登録機能
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日本語、英語など多言語対応
■ 活用例:
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幼児や非言語の方とのコミュニケーション
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学校での要求行動支援
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災害時の意思疎通ツール
4. CogLink(コグリンク)
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種別:就労支援・メール学習ツール
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対象:知的障害、LD、高機能ASDなど
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提供:滋賀大学発の研究成果
CogLinkは、知的障害や発達障害のある人が安全にメールのやり取りを学習し、使いこなせるようになるための支援ツールです。支援者が相手先を制限し、誤送信や迷惑メールの受信を防ぎながら、実用的なスキルを獲得できます。
■ 主な機能:
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メール相手の制限・登録
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読み上げ、簡略化されたインターフェース
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教育現場での導入実績あり
■ 活用例:
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就労移行支援施設でのICT教育
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社会的スキルのトレーニング
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家族とのメール練習
5. Udemy(ユーデミー)
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種別:オンライン学習プラットフォーム
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対象:LD、高機能ASD、ADHDなど
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対応:Web / アプリ(iOS / Android)
発達障害のある若者の中には、従来型の学校教育が合わないが、得意分野をオンラインで伸ばしたいという希望を持つ方も少なくありません。Udemyは、動画でプログラミング、デザイン、マーケティングなどを学べるプラットフォームで、自分のペースで視聴できる点が特に評価されています。
■ 主な機能:
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講師によるビデオ講義
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再生速度変更、字幕対応
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質問・コミュニティ機能
■ 活用例:
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在宅でのスキルアップ
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職業訓練の補助教材
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興味を生かした進路支援
6. Todoist
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種別:タスク管理アプリ
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対象:ADHD、LD、ASDなど
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対応OS:iOS / Android / Web
Todoistは、細かい作業の優先順位づけが苦手な方に向いています。視覚的なチェックリストと通知機能により、やるべきことを明確化し、取りこぼしを防ぐことができます。
■ 主な機能:
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タグ・優先度設定
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通知・リマインダー
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デバイス間の同期
■ 活用例:
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学校や職場でのToDo整理
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宿題や課題の管理
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家事・買い物など日常の支援
7. ことばの宝箱
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種別:言語発達支援アプリ
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対象:言語発達遅滞、ASD、LDなど
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対応OS:iOS
「ことばの宝箱」は、日本語の語彙を増やし、意味理解を促進するために開発された言語支援アプリです。発音、意味の理解、カテゴリー化など、言語発達の基本をゲーム感覚で学べます。
■ 主な機能:
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音声による語彙提示
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絵合わせや分類ゲーム
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発語練習コンテンツ
■ 活用例:
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言語療法での補助教材
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就学前の言語支援
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家庭での語彙強化
8. Emotimatch(エモティマッチ)
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種別:感情認識トレーニングアプリ
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対象:ASD、LDなど
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対応OS:iOS / Android
感情の理解が苦手なASDの子どもに向けて、顔の表情から感情を読み取るトレーニングができるアプリ。日常のやりとりで「相手が怒っている」「悲しんでいる」などの非言語的な情報を認識できるようサポートします。
■ 主な機能:
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表情と感情のマッチングゲーム
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音声ガイド付きトレーニング
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難易度設定
■ 活用例:
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ソーシャルスキルトレーニング(SST)
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グループ活動前の準備
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家庭での感情理解練習
9. スマイルメモ(記録・振り返り支援アプリ)
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種別:行動・感情記録アプリ
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対象:ADHD、ASD、LDなど
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対応OS:iOS / Android
「スマイルメモ」は、その日の出来事や気分、成功体験を簡単に記録することができる日記アプリ。自己理解を深め、支援者とのコミュニケーションを円滑にするのに役立ちます。
■ 主な機能:
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テキスト・スタンプ・写真による記録
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日ごとの感情グラフ表示
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支援者とのデータ共有機能
■ 活用例:
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自己肯定感の向上
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感情起伏のパターン把握
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支援会議の資料として
10. Pomodoroアプリ(例:Focus To-Do)
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種別:集中支援アプリ
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対象:ADHD、LDなど
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対応OS:iOS / Android / PC
ポモドーロ・テクニック(25分集中+5分休憩)に基づいた時間管理をサポートするアプリです。集中の持続が難しいADHDの方にとって、時間を区切ることでタスク完了への達成感を得やすくなります。
■ 主な機能:
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作業時間と休憩時間のタイマー
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タスク管理との連携
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集中時間の可視化
■ 活用例:
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勉強や仕事の集中支援
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短時間集中での達成感獲得
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ゲーミフィケーションによる動機付け
まとめ:テクノロジーで「困りごと」を補う社会へ
発達障害のある方々が持つ「困りごと」は、テクノロジーによって一部解決することが可能です。特にアプリやツールは、パーソナライズ性が高く、自分に合った支援の形を見つけやすいのが特徴です。
今回紹介した10のツールは、教育、福祉、就労など様々な分野で導入が進んでおり、いずれも実績あるものばかりです。個々の特性に合った道具を選び、活用することで、「できない」ではなく「どう工夫するか」を考える社会が広がっていくことを願います。
今後も技術は進化し続けます。支援の選択肢を増やしながら、一人ひとりに合った支援の形を模索していきましょう。