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発達障害の誤診が増えている?正しい診断と見分け方を医療の視点から解説

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はじめに:増える「発達障害の誤診」

近年、「発達障害(発達障がい)」という言葉を目にする機会が急増しています。
ADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)などは子どもだけでなく、大人にもみられる発達特性として注目されるようになりました。

しかし同時に、「本当は発達障害ではないのに、そう診断されてしまった」「誤診で薬を飲み続けてしまった」という声も増えています。
発達障害の診断は非常に繊細で、他の精神疾患や環境要因と区別が難しいため、誤診が起こるリスクが常にあるのです。


発達障害とは何か:脳の発達特性による行動の違い

発達障害とは、生まれつきの脳の働き方の違いにより、注意力・社会性・感情コントロールなどに特徴が現れる状態を指します。
代表的なものは以下の3つです。

これらは「脳の多様性」とも言えるもので、必ずしも病気ではありません。
ただし、日常生活に支障が出る場合は医療的・心理的支援が必要となります。


なぜ誤診が起きるのか?

発達障害の誤診は、主に次のような要因で起こります。

1. うつ病や不安障害との区別が難しい

ストレスやトラウマ、過労によって「集中できない」「ミスが多い」といった症状が出ることがあります。
これをADHDの症状と誤解されるケースが多いのです。
実際、うつ病や不安障害が一時的にADHD様の症状を引き起こすこともあり、正確な鑑別が必要です。

2. ASDと性格傾向の境界が曖昧

「人付き合いが苦手」「ひとりで過ごすのが好き」といった性格傾向は、ASDの特性と混同されやすい部分です。
しかし、単なる性格の違い社会生活に支障をきたす発達特性の線引きは微妙で、医師の経験や観察力に左右されることがあります。

3. 医療機関による診断のばらつき

発達障害は血液検査や画像診断で判断できないため、問診と心理検査が中心になります。
そのため、医師や心理士の知識・経験の違いによって診断結果が異なることがあります。
とくに短時間の面談だけで診断されるケースでは、誤診のリスクが高まります。

4. インターネット情報による自己診断の影響

SNSやメディアで「あなたもADHDかも?」といった情報が拡散し、本人が思い込んでしまうケースも増えています。
この思い込みが医師の診断に影響を与えることもあり、結果的に誤診につながる場合があります。


誤診の具体的な例

誤診によって起こる問題の一部を紹介します。


誤診を防ぐためにできること

発達障害の診断は、複数の専門家の意見を聞くことが大切です。

1. 専門医による詳細な問診

最低でも1時間以上の面談を行い、幼少期の行動歴・家族の観察・学校での様子など、複数の情報源から判断することが望まれます。

2. 心理検査や神経心理テストの併用

代表的な検査には「WAIS-IV(知能検査)」や「CAARS(成人ADHD評価スケール)」があります。
客観的データをもとに診断を行うことで、誤診のリスクを減らせます。

3. セカンドオピニオンを受ける

1つの医療機関の診断で納得できない場合は、別の専門医に相談しましょう。
とくに発達障害外来や臨床心理士が常駐する病院を選ぶと、より精度の高い評価が期待できます。

4. 薬の服用を急がない

ADHDの治療薬などは効果が強いため、自己判断で服薬を続けるのは危険です。
まずは心理的支援や環境調整を優先し、必要な場合のみ医師の指導のもとで薬を使用しましょう。


「大人の発達障害」診断ブームの裏にある課題

社会的に「大人の発達障害」という言葉が広まり、診断を受ける人が急増しています。
しかし、その一部には「会社でのストレス」「パワハラ」「長時間労働」など、社会環境が原因の不調が隠れていることも多いのです。

本来は環境を改善すべきところを、発達障害というラベルで片付けてしまうことが、本人の自尊心を傷つけ、社会的な誤解を生むこともあります。


正しい理解が、支援の第一歩

発達障害は「誤診を恐れて何もしない」のではなく、「正確に理解して向き合う」ことが重要です。
診断が間違っていても、困りごとがあるなら支援は必要です。
医師や臨床心理士、職場・学校のカウンセラーなど、信頼できる専門家と一緒に、最適なサポートを探していきましょう。


まとめ

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