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医師から教えてもらった不注意優勢型ADHDのための療育

 

この記事は30代の女性に書いていただきました。
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 不注意優勢型のADHDと診断された息子(小学生)。自分が上手くできないのはADHDだからだと理解してからの彼は、まさに水を得た魚のごとく生き生きとし出します。ADHDな自分を楽しんでいるようです。母親の私もそれは同じで、「もう無駄に怒らないでいいんだ。私の育て方が悪いのでもない。本人の性格のせいでもない。」それがわかった時の安堵感は言葉では言い表せません。

 さて、医師から教えていただいた家庭で出来る不注意優勢型ADHDの療育についてお話ししたいと思います。

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ごく軽度なため薬物も継続治療も必要ない

 「ごく軽度なため薬物も継続治療も必要ない」医師の結論はこれでした。息子の症状はごくごく軽度で、知能も非常に高いため、問題発生時には自分で解決策を見つけ出せるからだそうです。そんななかで、これはやったほうがいいと勧められたものを紹介します。簡単な療育の様なものです。

 初診の検査から再診までには1か月の期間がありました。そこで、とりあえず医師おすすめの書籍に書かれていた方法をいくつか試してみることにしたのです。それは「片づけ方の工夫」と「トークン表」の2つです。再診時に成果を伝えたところ、医師はとても息子を褒めてくださり、今後も継続するのがいいと勧めてくれました。

療育①部屋の片づけ方法の工夫

 不注意優勢型のADHDを疑い、受診のきっかけとなったのは「子供部屋が片づけられない」ことでした。そこで、まずはメインテーマである部屋の片づけに取り掛かることに決めます。書籍には具体的に方法が記載されていたので、息子と話し合いながら「我が家流」を模索していきました。

 どこに何をしまったらいいのかが判らなくなってしまう息子。これは立派なADHDの特徴です。一度に処理できる情報量が非常に少ないため、散らかった部屋を見ると脳がオーバーワークになりフリーズしてしまうのだそうです。さらに、情報の分類や整理も苦手なため、モノの分類にも苦労するのです。

 書籍に紹介してあった方法は非常にシンプルでした。それは棚やカゴ・箱や引き出しに「何を入れるかを細かく絵と文字で記載する」というものでした。ADHDの子どもは視覚的な情報のほうが理解がスムーズであるため、文字だけでは効果が薄くなってしまうのです。

 ある日曜日が決行の時。まず私たちが手を付けたのはタンスです。服は分類がしやすいので、とっかかりにはピッタリだと判断しました。案の定、タンスの中はカオスです。とりあえずすべてのものをタンスから出しました。

 次に行ったのは服の分類です。これは実際にタンスを管理する息子がしっくりくる分類を取り入れました。そして、服の量に合わせて収納場所を決めます。最後に引き出しにラベルを貼ります。とりあえずコピー用紙を小さめに切り、それにイラストと文字を書いていきました。例えば「シャツ」だとTシャツなのかボタンシャツなのか下着なのかが分からなくなるので、「Tシャツ」「ボタンシャツ」「下着のシャツ」などと詳細に記載しました。それをテープでタンスに貼って終了です。新しいカテゴリが追加される際は必ず新しいカゴ等を用意し、ラベリングを行うようにしています。

 基本的には子供部屋はすべてこのようにカスタマイズしました。分類の内訳は本人に決めさせるのを基本とし、私は時々アドバイスをするに留めました。

部屋の片づけ方を工夫した結果

 この方法によって、息子はこんなことを学んだようです。
・物の分類の仕方
・定位置にしまえば次にすぐに見つけることができる
・やり方がわかると片づけは楽しい
・部屋がきれいだと気持ちがいい
・自分もやればできる
・片づけはそんなに難しいことではなかった

 その結果、息子の部屋は基本的には整理整頓された状態をキープできるようになりました。これは本人にとっても大きな自信になっているようです。不注意優勢型ADHDであろうときちんと療育を行えば片づけもなんとかなります。

療育②トークン表(スタンプ表とご褒美)

 そしてもう一つ。それは「トークン表」です。こちらも書籍に紹介されていたもので、私の直感が「これはイケる! やったら絶対に楽しいし、続けられる」と告げていました。トークン表とは、簡単に言えばお店の「スタンプカード」です。できるようになりたい目標を設定し、できたらスタンプを1つ押します。スタンプが所定の数まで貯まったら「ご褒美」がもらえるというシステムです。これは非常に多くの効果を発揮してくれました。そして時間も手間もかからないので忙しい母親にはピッタリの方法だったのです。

 ますはエクセルで何となくカレンダーのような表を作りました。一番上に目標を書く欄を設け、あとはスタンプを押す欄と日付を記入する欄を確保します。純粋にカレンダーのように日付を入れて、できた日・できなかった日を明確にする方法もありますが、我が家は息子のモチベーションダウンを避けるために、「できた場合のみ日付とスタンプ」を入れる方式を採用することにしました。

 この用紙を目標の数だけ印刷すれば親の作業は終了です。原紙も保存してあるので、紙が終了してもまた印刷をかければOK。とても楽ちんなので、親の負担が少なくてすみます。長期にわたって継続するためには、親と子供の負担を極力減らすことが不可欠ですからね。

目標とご褒美の設定のコツ

 我が家では、目標は基本的には親子で話し合って決めています。その際に重視しているのが、「割と簡単に達成できる目標」、「すこし注意すれば達成できる目標」、「今は苦手だけどできるようになりたい目標」をそれぞれ設定することです。

 スタンプ表の良いところは目で見て成果がすぐにわかる事にあります。そして「自分もできる」を実感して、頑張る意欲を引き出すことが目的です。ここで高い目標ばかりを設定してしまうと、スタンプを1つも押せない日が出来てしまいます。これでは本人のモチベーションも下がってしまいますし、「出来なかった」ばかりに意識が向いてしまします。それを避けるために、「朝おはようを言う」などの簡単な目標も必ず入れるようにしています。かといって、簡単な目標ばかりでは行動改善効果が薄くなってしまいます。そこで、ハードルをいくつか設定することで徐々に出来ないことを出来るようにしていくのです。

 そして大切なのがご褒美です。我が家では「10個貯まったら駄菓子屋さんで好きなお菓子100円分」、「20個貯まったらファミレスでパフェ」などといった非常に安上がりなのに子供が喜ぶご褒美を設定しています。あまり高価な目標では財政破たんが目に見えているからです。

トークン表を取り入れた結果

 我が家でトークン表を取り入れてから数カ月が経ちます。その間の息子の変化についてお話しします。まず、自分の苦手なことを自分で把握することができるようになりました。スタンプ表は目で見て成果がわかりますから、出来ることと出来ないことを把握しやすくなります。そして似ている目標はやっぱりスタンプの数が少ないため、本人が苦手を自己分析できるようになりました。その分析結果をもとに、自分で次の目標を立てるまでに成長を見せてくれるようになったのには、私自身も驚いています。

 目標を設定できるということは、自分の得意と苦手を自分で把握しているということです。自身を客観的な視線で見られるようになったのは大きな収穫と言えるでしょう。そしてそれを「ADHDの特徴には〇〇があるからこの目標のスタンプがなかなか貯まらないのかな?」と自分の障害と関連付けて考えられるようになったことも成果のひとつです。ADHDな自分を丸ごと受け入れることができるというのは自己肯定感につながります。「ADHDはネガティブなことではない」と自分に対する愛情を感じられる言動が増えました。

音読と百ます計算

 音読と百ます計算も医師より勧められました。しかしすでに学校の宿題でこなしている内容だったので、成果については正直わかりません。ただ、感情や抑揚を込めた読み方が出来るようになってきたことを考えると、文字からの情報を適切に処理できる力が付いてきたのかと推測できます。

 百ます計算は本人もお気に入りで、ひたすら黙々と解いています。横からの刺激があっても目の前のことに集中し続ける力を養うには一役買っているようです。

ほとんど手間はかからないが効果は絶大だった

 以上の我が家で取り入れた療育は、ほとんど手間もお金もかかっていません。しかしどれも本人の行動面や精神面の成長に大きく貢献してくれています。我が家にはピッタリな方法ばかりでした。

[参考記事]
「不注意優勢型のADHDだと診断を受けるまでの経緯」

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