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トラブルの多いADHDの子が児童デイサービスの利用で改善

 

この記事は放課後等児童デイサービスの職員の方に書いていただきました。

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 O君はお母さんと二人暮らしの小学校1年生です。1歳児から保育園に通っていましたが、3歳ごろから保育園での友達とのトラブルが多く、発達障害の検査を受けることになりました。検査の結果ADHDと診断を受けました。O君が他のお友だちとトラブルになるたびに、「なんで、あなたの子どもはこんなことをするの?」となかなか、O君の行動が障害ゆえのことだと周りに理解されなかったようです。幼稚園では、支援員の先生が配置されましたが、先生との相性が悪く、3度も加配の支援員が変更になりました。

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児童デイサービスを利用するようになったきっかけ

 O君はお母さんが仕事をしていたので、小学校入学と同時に放課後は、一般の学童保育に通うことになりました。O君は運動神経が良くて、学童の友達と遊んでいても、他の子よりも動きの面では優れています。しかし、自分が得意なことには大きな自信を持ち、できない子供をからかったり、友達とトラブルになると暴言や手もでます。注意をすると反省はできますがすぐに同じようなことを繰り返します。ADHDの衝動性ゆえなのですが、「わがままに育てられた乱暴な男の子」という印象を発達障害に理解のない人には映ってしまいます。

 毎日毎日、友達とトラブルを起こし、先生に叱られているO君をみて、「もっと本人の障害を理解してもらえる環境でのびのびと過ごさせたい」との思いから児童デイサービスを利用されるようになりました。

児童デイサービスでの様子

 O君は利用当初は、児童デイサービスの中で優等生でした。児童デイサービスに来たら声かけしなくても手を洗いに行き、食事が終わると食器を片付けに行きます。しかし、「食べるのが下手な子」や他の子のミスに対しては厳しく、「汚い食べ方」「気持ち悪い」「おまえばかじゃん」などと暴言をはきます。

 児童デイサービスの取り組みでも、得意なことは大いばりしながら積極的に取り組みますが、苦手なことにはみんなが参加していても全く参加しようとしません。勝ち負けのあるゲームに負けると悔し泣きをしたり、相手に暴言をはいたりすることがみられました。

「できる自分」と「できない自分」の両方を認められるように

 1年生になってからは、勉強の遅れが目立つようになってきました。支援員の先生はついていたのですが、O君だけをみているわけではなく、逆に他の子に比べて手がかからないように見えるO君の支援が手薄になっていました。先生が出す指示も今一つ理解できていないのですが、負けたくない気持ちでお友だちのやり方を見よう見まねでやっているような感じでした。人よりも良くできることに絶対の自信を持ち、勝つことにこだわりの強いO君にとって人に負けることはとても自尊心が傷つき、自分に対する今までの信頼がゆらいでしまうようでした。

 児童デイサービスでは、O君に人はみんな「得意なこと」と「苦手なことがある」というのは当たり前で恥ずかしいことではないということを伝えるために、勝ち負けの要素が強いドッチボールなどの遊びを極力控えるようにしました。勝敗のない縄跳びなどで、「昨日は2回しか跳べなかった人が今日は3回跳べたからすごい!」というように、一人一人がそれぞれの目標をクリアしていることがすごいということを伝えるようにしました。出来ないことにも、「苦手なことは誰だってあるよね。でもAちゃんはおりがみは得意だよね。ご飯はなんでも食べるよね」というふうに声掛けをするようにしました。

 みんなに対してその時その時声掛けをしていると、O君も少し肩の力が抜けたのか、トランプなどで負けることがあっても「負けたよ」と笑って話せるようになってきました。たまにはトラブルになる時もありますが、あらかじめトラブルになりそうな遊びの時には、「勝ち負けではなく楽しめることが大切」と事前に確認してから遊びます。忘れそうな時も「楽しむことが大切だよね」と声掛けすると思い出せるようになってきました。

 今では、自分が勝てないような遊びでもみんながしていると一緒に参加し、人の失敗にも暴言を吐くことが少なくなってきています。出来たこともほめますが、苦手なことを頑張って取り組むO君を積極的にほめることにより、嫌なことにも取り組む姿勢が身についてきました。また、喧嘩ばかりしていたO君が他人を思いやったりとやさしい一面をみせてくれるようになりました。勝ち負けに異常にこだわっていたのは自分が唯一自信がもてるのがスポーツなどの勝負事だったからかもしれません。

 ADHDなどの発達障害は理解されにくいですが、叱られてばかりで心が折れる前に障害をしっかり理解して向き合っていくことが発達障害児のすこやかな成長にかかせません。

[参考記事]
「万引きがきっかけで児童デイサービスの利用を始めた発達障害のA君」

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