この記事は40代の女性に書いていただきました。
……….
私にはアスペルガー症候群を持つ中2の子供(男)がいます。数ある特性の中で、特に親が気を付けている事を書かせていただきます。
気を付けている事①曖昧な言葉で話さない
小3の時、リビングのテーブルで勉強をしていました。勉強が終わり、私は子供に「ご飯にするから筆箱片付けてね」と声をかけ、キッチンに向かいました。支度を済ませてリビングのテーブルを見ると、鉛筆と消しゴムがそのまま残っています。「片付けてって言ったのに」と言うと「筆箱片付けてって言ったじゃん」と子供は反論。言われた通りに片付けただけだったのです。
親である私の中では当然「食事の邪魔になるから当然鉛筆も消しゴムも、筆箱に収納して片付ける」という考えがありました。しかし、それでは子供に伝わりませんでした。「食事の邪魔になるから筆箱に鉛筆と消しゴムを入れて筆箱を引き出しに片付けてね」とまで言わねばならなかったのです。健常発達の子供であれば「筆箱片づけてね」と言われれば「食事の邪魔になるんだな。だから、筆箱を片づける。筆箱には鉛筆や消しゴムが入っていたから、これを中に入れて片づける」という発想を一瞬にして行います。アスペルガー症候群の人は言葉の裏を読むことや曖昧な会話が苦手ですが、私の子供も当てはまっています。いわるゆ、「これやって」「あれやって」などの「こそあど言葉」は通じません。
その事に気付いてからは、なるべく細かく指示をするようにしました。「食器をあそこに片付けて」では不十分です。「食器と言ったら、食器棚しか片付ける所はないじゃない」というのは一般的な感覚であり、発達障害者には「あそこ」という曖昧さが分かりません。食器の中にボウルもある場合は、「食器は食器棚に片付けて、ボウルはシンクの下ね」などと気を付けて言うようにしました。そうしないと、食器しか片付けないこともそうですが、自己肯定感が落ちるからです。「また、俺できなかった」と。そうやって何度も何度も食器を片付ける経験を重ねて、今は「食器を片付けて」だけで全てを所定の位置に片付けるようになりました。ですが未経験の事になると、筆箱の件と同じく隠れた真意までは伝わらない事が多いので、これからもいろんな経験をさせていく事が重要だと考えています。
気を付けている事②見通しが付く言い方をする
3歳の子が走っていて、それを見た大人は「そんなに走ったら転ぶよ!」と声かけをし、案の定転んでしまう事はよくある光景だと思います。まだ幼い3歳の子には転ぶ見通しがつかないですが、大人は転んだ経験も豊富なので予測が出来ますよね。
私の子供は現在中2ですが、今もその3歳の子のように、見通しを立てるのが苦手です。少し先の未来を想像することができないのです。これはアスペルガー症候群の性質として良く知られています。見通しが立たないと、不安感から次の行動へ移せなくなります。例えば先日学校で身体測定がありました。「何時から始まって、何の服を着て、支援級として保健室へ行くの?それとも交流級に混ざって行くの?」と聞いてきました。一連の流れを事前に知らないと不安で、身体測定も参加出来ないのです。すぐに担任へ連絡し、細かく教えてもらってやっとイメージがついたのか安心する事が出来たようです。幼稚園児や小学生であれば遠足などで課外授業に行くことがありますが、アスペルガー症候群の性質を持つ子どもは、そこがどんなところなのか分からないと不安に感じます。ですので、事前に見学に行って慣れさせてから本番を迎えるようにしている親もいます。
このように全ての事柄について、真新しい経験は特に事前に情報を入れてあげる事が大切になってきます。私だけが外出する時も「買い物行ってくる」だけではなく、「〇〇と〇〇行って、〇〇で買い物してくるね」と必ず子供に伝えるように気を付けています。そうする事で、だいたいどのくらいで帰ってくるのか予想がついて安心します(いつも行く場所に限りですが)
まとめ
日本では人間関係を円滑にする為に、オブラートに包んだ言い方が美徳とされている所があるかと思います。相手に嫌な思いをさせず、そして自分も嫌われずに済む。そんな所から来ている部分もあるかもしれません。
しかしその風習が発達障害者にとって、大きな弊害になっているのも現実です。「やってほしい事」「やめてほしい事」を明確に伝える事が意思疎通に大いに役立ち、誤解を招くことも減ります。社会では①に書いたように、事細かに逐一説明して伝えてくれる人はめったにいません。
社会に出てから少しでも生きやすくなる為に、親としては苦手なことを自分の口から周りに伝える事が出来るようになって欲しいと思います。
[参考記事]
「アスペルガー症候群の人の長所と短所は表裏一体」