この記事は自閉症のお子さんを持つ30代の女性に書いていただいています。
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発達障害児の療育というと、作業療法、言語療法、行動療法など様々なものがありますが、その中の一つ音楽療法というのをご存知でしょうか。様々な楽器を使ったり、音楽を聴いたりするので、発達障害だけでなくダウン症や脳性麻痺のお子さんも楽しく参加することが出来ます。
音楽療法も色々なパターンがあるのですが、息子が通っている音楽療法の教室は、楽器の演奏の技術の獲得のほかに音楽を通じて複合的なトレーニングを行ってくれます。
また、レッスンする内容や順番を写真で貼ってくれていて、発達障害の子でも分かりやすくなっています。なぜここまでするのかと言えば、この教室の先生は療育施設内の保育園にも音楽療法を教えに行っていて、発達障害にとても詳しく理解のある先生だからです。
この教室には元々はピアノが脳にいい影響があると聞き通い始めたのですが、息子はピアノに全く興味を示さず、息子にあったレッスンに変えてもらいました。息子もそうですが療育や音楽療法に通っている子供は体幹が弱い子が多いので、体幹のトレーニングを意識したものも取り入れていただいています(最近は健常発達児でも体幹の弱さが指摘されています)。
音楽を通して空気を読む訓練
見ている私はただ、先生の指示に従えているか、きちんと座れているかなど表面的な事しか見ていなかったのですが、専門の先生から見ると楽器の演奏を見るだけで子供の様子が分かるそうです。太鼓や木琴などをたたくときに使うバチも、体幹がしっかりしていない、関節が柔らかい子供は力強くたたくことが出来ません。手首が柔らか過ぎて固定することが出来ないのです。こういう場合は肩に力を入れたたこうとするので、肩が上がり太鼓をたたくだけでも疲れ切ってしまいます。
また、レッスンではタンバリンを持って、大きな音や小さな音、頭の上でたたいたり、足元でたたいたり、先生の模倣を求められることもあります。先生の動きや音をしっかり聞いておかないといけないので、集中して相手を見る事が必要になってきます。始めは「同じ大きさでたたいてね」と指示をうけますが、回数を重ねると先生は何も指示を出さず、その場の空気で本人が「同じ大きさでたたくんだな。同じ場所でたたくんだな」と読み取る必要があります。その場の空気を読んでそれに合わせるなんて、発達障害の子供にとってはとても難しいことですが、私の息子はこの教室のレッスンを通してそれを感じとれることが出来るようになってきました。
助けてと言えるようになりました
いつでも自分のしたいことを好きな事をやっているイメージがある発達障害ですが、自由な時間が苦手な子は結構多いです。学校でも算数をする、国語をすると決まっている授業は落ち着いて過ごすことが出来るけど、休み時間など何をしてもよい時間というのは、発達障害児にとって何をすればいいのか分からない落ち着かない時間になるのです。
音楽療法のレッスンでも「この曲に合わせてこういう風に演奏してね」と言われれば積極的に出来るのですが、「先生はピアノ弾いてるからそれに合わせて好きに演奏していいよ」と言われると演奏することが出来なくなります。これは間違えることへの恐怖、失敗したくない心の表れで、自分に自信がない場合にこうなりやすいそうです。「好きに演奏していいよ」のように正解も間違いもない事柄も世の中にはたくさんありますが、自分が思うことを恐れず、自由に行動出来る様になれば、学校生活、日常生活でも充実して過ごすことが出来るようになります。このこともレッスンの目的の一つです。
息子は最初、自由にしてと言われて何も出来ず立ち尽くしていたのが、「どうしたらいいか分かりません」とヘルプを出せるようになり、段々と自分なりの音を出せるようになってきました。発達障害児の場合には特に人生で「助けてください」と言えることはすごく大切なので、音楽療法でここまで想定してレッスンをしてくれるなんて入塾するまでは想像できませんでした。
音楽療法での注意事項
どんな子供も楽しめる音楽療法ですが、聴覚過敏がある場合は子供に合わせることが大切です。過敏があっても楽器の音は大丈夫だったりすることもありますし、普段過敏を感じなかったのにピアノのある1つの音にだけ過剰に反応してしまう事もあります。
個別で行うのがいいのか、グループでのレッスンの方が向いているのか、何度か見学や体験をしてみて子供の反応を見てあげると良いと思います。