この記事は自閉症のお子さんを育ている30代の女性に書いていただきました。
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まだ、小学校に入学して1カ月しか経っていなかった時に、担任の先生に通常学級から支援学級への移動を提案されました。理由は発達障害に理解の無い先生だったこともありましたが、それだけではなく、学校生活に馴染めない側面が多くあったからです。
学校生活に馴染めない側面は大きく分けると「お友達と関係が悪いこと」と「学校での集団行動に付いていけないこと」です。
まずは「お友達と関係が悪いこと」から説明します。
①お友達とのトラブル1
先生の介入がない状態でのクラスメイトとの関わりは特に難しく、休み時間はトラブルが多くありました。子供同士は遊びの途中でルールが変わったり、途中で抜ける子や入る子など、状況が分かりにくいのが原因です。
みんなは自然とそれを感じ適応していくのですが、息子はその変化に付いていけず、おいかっけこを途中で抜けた子を強くタッチしてしまい、その行為を強く注意され自暴自棄になってしまった事もありました。
息子は運動が苦手なために追いかけっこでも捕まるばかりで誰かを捕まえることはあまりありません。そのためにこの追いかけっこを止めたクラスメイトが逃げなかった事でチャンスだと思い、テンションが上がってしまって強くタッチをしてしまったと本人は言っていました。
②お友達とのトラブル2
「独特の喋り方や動作」から高学年の生徒から からかいの対象になったことがありました。独特の喋り方の特徴は自閉症でも個人によって違いますが、息子の場合はどんな時でも「ですます調」で大人が話すような喋り口調でした。中にはアニメの主人公の喋り方をそのまま真似して人に話す子がいたり、抑揚がなく機械のような喋り方になってしまう子もいます。
独特の動作というのは、息子は体の使い方が上手くない為に手をブラブラさせながら歩いたり、つま先歩きのようにフワフワと歩いています。こういう動きは自閉症の子供には共通して見られる動きです。
そんな様子を見てクラスメイトからも からかわれるようになり、息子を混乱させる話やウソの話をして、その反応を見てバカにするといった事が相次ぎました。先生にうまくヘルプを出せない息子は帰ってきてから私に話し、発覚した次第です。すぐに先生に電話をして注意深く見てもらうようにお願いしましたが、先生が見ていない時に行われるのでなかなか無くなりませんでした。
では次に「学校での集団行動に付いて行けないこと」について説明します。
①予定が変わるとパニックに
私が学校からの配布物を見て、その日に何が行われるのかをカレンダーに書き込み、本人にも伝えているのですが、それが突然中止になる事も多く、その時には学校や家でパニックになる事もありました。例えば翌日のはずだった健康診断が急きょ当日になったり、学校探検など楽しみにしていた事が別の日に変更になったなどです。
②集団での一斉指示が通りにくい
集団での一斉指示が通りにくい事は入学前から相談していて、必要であれば個人的な声掛けをお願いしていましたが、実際はなかなか難しいようです。一斉指示とは先生が全体に向けて行う指示のことです。例えば「集合してください」をはじめ、「こっちを向いてください」「何ページを開いてください」など基本的に先生が出す指示は一斉指示ということになります。
指示の意味が理解できないというよりは、一斉指示を聞き取りにくいといった方が正しいかもしれません。指示が出されている事自体に気づかないといった感じです。そのために指示が耳に入っていなかった時の個別での声掛けをお願いしていました。しかし、初めにも言いましたが、発達障害に理解の無い先生だったため、最後まで声はかけてくれませんでした。もちろん、わざとではないと思いますが…理由は分かりません。
行なった対策
支援学級に行く事は全く抵抗はありませんが、それは「本人が必要とした時」と考えていたので今はまだその時ではないと判断し、先生から指摘されたことを改善するように取り組みました。例えば「ランドセルを置いてから中身を片付けるまでの時間がかかりすぎる。出来ていない時もある」という事を指摘されました。つまり、ランドセルの中から筆記用具や教科書を出して机の中に入れ、空になったランドセルを棚に片づけるまでが遅いということです。
対策としては、原点に戻り視覚支援を強化しました。ランドセルを置いてから片付けまでの流れを一つ一つ項目で表し、1つ終わるとチェックするようにして集中力が途切れないようにしました。最後まで出来たら当時息子の好きだった仮面ライダーのクイズなどを用意して片付けが楽しくなるようにしてみました。苦手な事をしているのでそのご褒美の意味合いもありますが、「楽しみながら行なう事」が続けるためには必要だからです。そのおかげもあってだんだんと片付けの習慣も身についてきて、帰ってきたら「お母さん!今日のクイズの答えはね」というようにコミニュケーションにも役立っていました。
その後の息子の様子
クラスに馴染むのに時間がかかった息子ですが、小さいころから好きだった数字の影響で算数が得意だったので、算数が難しい項目に入っていくにつれ、息子のクラスでの見られ方が変わってきました。年長組のころから2年生、3年生の算数ドリルをやっていたので「算数博士」とあだ名をつけてもらい、クラスメイトが分からない問題を聞きにきたり、「ちょっと変わってるけど算数が凄い子」という立ち位置になったのです。
低学年のうちは特に、何か一つでも得意なものがあればそれをきっかけに関係は大きく変わる事を実感しました。
発達障害の子は発達に凸凹がある子が多いので、どうしても苦手な部分を伸ばすことに目が行ってしまいますが、得意な部分をとことん伸ばしてあげることがとても大切な事だと思います。