この記事は30代の女性に書いていただきました。親子で自閉症スペクトラムというパターンは珍しくもありません。同じ性質ゆえ、喧嘩も多いのでしょう。
………
主人はアスペルガー症候群
私が主人と出会ったとき、彼はうつ病を発症していました。大学を出てから営業職へと就職し、実家を出た事が引き金になったようですが、根本的な原因は別にあったのです。発症してからは毎日布団の中で辛い時期を過ごしたそうですが、私と出会い、新しく生活を始めたことが良かったのか、随分と良くなり、気分が落ちている時間も少なくなりました。
そこで心機一転、私が住んでいる新しい土地で再就職をするにあたり、精神科も変わりました。新たにテストなどを受けた結果、主人は自閉症スペクトラムの中のアスペルガー症候群だと診断されたのです。彼を長年苦しめてきたうつ病はアスペルガー症候群の二次障害だったのです。その診断結果を聞いて、ずっと引っかかっていたものがストンと落ちたような気がしました。
なぜ、腑に落ちたのかかと言うと主人が私の地方へ引っ越してきた時にこんな事があったからです。その日、彼を迎えに行く準備をしている時に、家で飼っていた老猫が苦しそうに息をしていました。何匹も看取ってきた経験で最期の時が近いことを悟り、彼に時間を遅らせてくれるようお願いしました。しかし、彼は平然と「猫より自分を優先しろ」と言ったのです。当時はなんて冷たい人だと思いましたが、発達障害ゆえに私の気持ちが判らなかったのだと思います。アスペルガー症候群の人は相手の気持ちを読み取るのが苦手な側面もあります。
その後も空気が読めていない、気に入った単語をずっと使い続ける、怒ったときに物を壊すなど気になることがたくさんありました。どちらかというとマイナスな部分ばかりが目につきますが、良いところもあります。記憶力に優れていて、教科書などのページのままに覚えることができるそうです。アスペルガー症候群の人の中には記憶力が良いひともいるそうですので、主人もそのタイプです。しかし、時間が経つとコップから水がこぼれるように記憶がこぼれてしまうという表現もしていました。おかげで学生時代は勉強で困ることはなかったようです。
しかし、教科書を読むだけで点数を取れてしまうことは、彼のプライドをより一層高くし、周りを見下した態度を取ってしまうので周囲からは疎まれがちです。それは大人になった現在でも変わらず、職場でも上手くいかない時があるようです。
娘は自閉症スペクトラム
娘は現在小学校一年生。入学前に自閉症スペクトラム障害と診断されました。そもそも疑いを持った理由の一つに、主人がアスペルガー症候群ということがありました。なぜなら主人と娘はあまりにも似ている点が多いのです。
娘のいつもの一方的な会話も空気が読めないことが原因でしょうし、気になったことがあればずっとその話ばかりが続きます。すぐ物を投げたりするのはいつまで経っても治りません。決定的だったのは、幼稚園から帰ってきた時に笑顔でお友達の犬が死んだことを教えてくれたことでした。先ほど書いた猫の件と比べても、夫と娘二人の親子には共通する性質が見て取れます。
主人と娘の関係
ママはすぐ怒るし怖いけど、パパはすぐ言うことを聞く。これが娘の認識です。娘はトイレを流す音などを嫌い(感覚過敏)、また潔癖なところもあり、用を足した後、自分で拭くことを嫌がります。そこで在宅中は主人をトイレに呼んで、最後に拭いて貰うのです。二人の間では当たり前のことなのです。もちろん母である私は絶対にやってあげません。一人で出来ないと、この先困るのは娘自身だからです。親がいなくても一人で生活出来るようにと私が厳しく接しても、主人がいると全て台無しになります。主人には娘が成長しないからあまり手伝わないで欲しいとお願いしているのですが、私が見ていないところでは変わらず甘やかしているようです。
似ているがゆえに……
そんなべったり仲良し親子のようですが、似ているがゆえに喧嘩も多いです。二人ともが自分の思い通りにならないと気が済まないので、ゲームで遊んでいても必ずどちらかが不機嫌になり、そこから喧嘩が始まります。主人は物を投げて出ていき、娘は暴れて泣くのです。二人とも謝ることが嫌いで、間に入らないときは謝らず仲直りするわけでもなく、時間をおいて何もなかったようにまた遊び始めるのです。
お互いに自閉症スペクトラムゆえに空気が読めないので加減が判らず、最初は楽しく遊べていても途中で相手が嫌がっているのに気付くことができず、怒らせたり、泣かせたりしてしまう事もあります。私がいる時はやりすぎだなと思ったらすぐに声掛けして二人を一度引き離すようにしています。そうする事で気持ちの切り替えができ、また楽しく遊べるようになるのです。今は衝突の多い二人ですが、主人も随分と我慢が出来るようになってきましたし、娘もまだまだ成長途中。これからが楽しみですが、不安もあるのが正直な気持ちです。