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発達障害の息子の訓練は自己表現カードとイラストで

 

この記事は40代の女性に書いていただきました。

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 現在中学1年生の次男が、発達障害と診断されたのは4歳児の頃でした。1~2歳児の頃から、とてもこだわりが強く、「なんでこんなにこの子は言うことを聞かないのかしら?」と育児に悩むことがしばしばありました。次男の診断のきっかけとしては、長男の小学校入学時の「チック症候群」を発見したことから始まります。長男は2歳上。次男が4歳の頃でした。

 長男は、小学校入学準備に差し掛かると、腹痛とまばたきを頻度にする「チック」の症状が出ていました。当時かかりつけ病院の小児科には、「こころの小児科」が併設されており、腹痛の原因が不明であることと、チック症状が気になるということで、こころの小児科を紹介され受診。

 WISKⅢと問診などにより、長男は「アスペルガー症候群」と診断されました。当時の問診などにより、「こだわりが強いですか?」「パニックを起こすことがありますか?」という項目に、正直、長男よりも次男に当てはまるものが多く感じたことと、兄弟児揃っての発達障害の確率が8割という医師の言葉に、次男も受診の運びとなりました。

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次男の診断結果はやはり….

 発達障害の診断を受けるに至った当時、次男にまつわる一番の悩みとして「予定が立たない」「見通しが立たずにパニックを起こす」がありました。毎日、登園前に、NHK番組を見始めると、こちらの言葉は耳にも入らず夢中になり、テレビを消して身支度を促すとパニックになり、長男次男ともに登園が困難に。私はたびたび会社に遅刻をするというような毎日でした。義父母、実母ともに、そんな状況を心配はしてくれたのですが、「甘やかせて育てるから聞き分けのない子になった」というのが当初の感想。

 私自身も「育て方」について、ずいぶん悩み、育児書・指南書などを読んでは、理想の育児とは?と日々模索する状況が続いていました。しかし実態は、パニックになる息子を抱きしめて、何が出来るわけでもなく、「どうしたらパニックにならなくて済むのだろうか」と、毎日繰り返される登園パニックに、仕事を辞めることすら考え始めていました。そんな中での、長男は「アスペルガー症候群」「チック症候群」「ADHD」そして、次男は「アスペルガー症候群」「ADHD」と、いずれも発達障害の診断を受けました。

 発達障害の診断時に、こころの小児科の医師にこう言われました。
「おかあさん。あなたは、すばらしいお子さんを育てているのですよ。この子たちは天才の個性です。この天才の個性は、いろいろな可能性を秘めています。しかし眠った才能を呼び覚ますことなく、生きにくさを抱えたまま成長し大人になってから、この個性に気が付くこともあります。とても早い時期に診断できたことで、自身の特徴を知ることができ、個性を活かし可能性を充分に引き出してあげてくださいね」

 目から鱗でした。どうしても障害の方ばかりに目がいってしまい、才能や可能性についてなど考えたこともなかった時期でしたから。天才の個性というだけで、何も悪い子ではない。育て方が間違っていたわけではなかった。それだけで、こころが救われました。その個性を生かすか殺すかは親次第。そう思って訓練に臨みました。

訓練が始まる1

 特に次男は、できることとできないことの差が激しく、できないことにぶつかるとパニックに陥りやすかったのですが、できることをさらにできるように伸ばしていくことを目標に、言語訓練・作業訓練をおり混ぜて、コミュニケーションスキルアップを目標として行きましょうと言っていだたいて、週1~2回程度の受診からスタートしました。

 まずは、自分の気持ちを伝えることから始まりました。とても口は達者だったので、気持ちが伝えられていないとは思ってなかったのが現状でした。口が達者なのは、こだわりの部分のみ。ぺらぺらとお話しすることはできるのですが、「腹が立っている「悲しんでいる」「つらい」という心の表現ができてないことが分かりました。

 絵で見ると具体化しやすいため、自己表現カードというのを作りました。自己表現カードを使い始め、少しの状況の変化で、感情が劇的に変化しているのが分かりました。いわゆる「キレやすい」状況です。パニックになるのもそのせいでした。気持ちの部分を「スケール化」することで感情の浮き沈みを具体的に数字で表現することも始まりました。「腹が立っている」を自己表現カードで表し、どれだけ腹が立つのかを1~10の数字で例えます。自分の気持ちを表すことができ始めた次男は、少しずつパニックになる前の自分の気持ちに気が付き始めました。

訓練が始まる2

 次のトレーニングは、先の見通しを具体化することです。保育園登園は毎日決まったことなので、絵に描いて1日の流れをイラストとして具体化しました。朝起きることから始まり、歯みがきをする、顔を洗う、着替えをする、車に乗る、保育園で過ごす、といったように、全て時計の針とともにイラストで具体化しました。時計はまだ読めませんでしたが、形で覚えて、今何をする時間なのかというのを自ら絵を見て答えるようになりました。そこにはテレビを見る時間は書き込みませんでした。すると、自然とテレビから離れ、テレビがついていても、登園前にスイッチを消すというイラスト通りに自然とタイムスケジュールが体にしみこんでいました。毎日できたらご褒美シールも一緒に貼りました。達成感をシールを溜めることによって具体化したものです。だんだんとシール集めと出来たことにこだわりはじめ、こだわりの個性も、いい方向に変わってきます。

 スケジュールから少し外れてしまえば、「腹が立っている」自己表現カードを出すこともありましたが、すぐに目の前で絵を描いて作り直して「今日はこの1日でやってみよう」と提案すると、いつもと同じように変わったスケジュールに対応できるようになっていました。そして、パニックを起こしてしまうことも少なくなっていました。こだわりの個性・天才の個性と付き合うために、こころの小児科の医師の指導の下、マイナスをプラスに転じる考え方で、私自身も、つまずいていた「育児」に自信がわきました。

 子供ひとりひとりに個性があるのと同じで、発達障害も個性のひとつとしてとらえ、そんな次男も今や中学1年生。自分の個性を一番理解しているように見て取れます。体験として、ご参考にしていただけると幸いです。

[参考記事]
「発達障害と天才は紙一重?トムクルーズやエジソンも発達障害」

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