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発達障害が原因で退職。その後二次障害が悪化し引きこもりへ

 

この記事は20代の男性に書いていただきました。

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 私が発達障害を疑い始めたのは4年ほど前のことです。丁度メディアやネットで発達障害が話題となり始めていたころで、最初は「結構当てはまるし、ひょっとしたら自分もそうかも。」ぐらいの感覚だったのですが、仕事や日常生活でも失敗を繰り返したり、対人コミュニケーションが中々うまく行かないことからも、次第に「本当にそうなんじゃないか?」と思うようになりました。

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仕事での失敗の数々

 当時福祉関連の職場に勤めていたのですが、人事異動でそれまで勤めていた施設より規模の大きい施設に勤務することとなりました。

 そこでは以前の職場よりも多くのスタッフや利用者がおり、業務の種類も多岐に渡っていることから臨機応変な対応を求められることも多く、マイペースであまり要領の良くない自分にとっては過酷な環境でした。

 当然ミスや失態も多く、上司や利用者からも叱られたり、呆れられたりを繰り返していました。「今度から気を付けよう!」と思っても結局同じ轍を踏む、そんな自分が嫌で嫌で仕方がありませんでした。そういった経緯もあり、本気で発達障害を疑い始めたのです。

発達障害の診断を受けて

 このままいても状況は一向に変わらないと思い、勇気を出して診断を受けることに決めましたが、発達障害の診断が行える医療機関は数が少なく、探すだけでも苦労しました。

 何とか信頼できる病院が見つかり、検査の結果、ADHDの診断を受けることになりました。診断を受けた際は「自分が失敗を繰り返すのは単にダメな人間だったからじゃない!ちゃんと理由があったんだ。」と、どこかほっとしたことを覚えています。今まで漠然とできないと思っていたことに理由が付いたことで、何か許された気がしたと共に、今後どうしていくべきか?という道筋が見えてきそうな気もして、前向きに障害を受け入れることが出来ました。
 あくまでこの時は…ですが。

抑うつ状態から退職を決意

 発達障害の診断を受けた後は、ストラテラやコンサータなどの薬を服用しながら仕事を続けることにしました。しかし、私の場合、薬の服薬により多少症状は抑えられても劇的な改善は見込めませんでした。

 障害については、「カミングアウトしたところで理解されるか保証はない。下手をすると余計に職場に居辛くなるかもしれない。」との思いから誰にも相談はしませんでした。

 ケアレスミスやコミュニケーションの行き違い、つい感情的になって相手を困らせたりと、その後も失敗経験を繰り返していきました。かと言って障害を打ち明け、相談する相手もいなかったので、「自分でどうにかしよう!」と言い聞かせながら過ごしていましたが、そんな日々が続く内に、精神的にも不安定となっていきました。

 「他人が自分の悪口を言っているのではないか?」「今の反応は明らかに不機嫌そうだった。」「自分はここの職場にいて良い人間なのだろうか?」などといったネガティブな思考ばかりが頭を過り、周り全てが敵に見え、常に何かに怯え、常に不安を感じているといった状態でした。食欲も無くなり、思考能力が鈍ることで余計にミスを誘発し、ますます自己嫌悪が強まるといった悪循環にも陥りました。そして抑うつ状態が悪化し(発達障害の人によくある二次障害)、精神的に限界となり退職に至ったのです。

[参考記事]
「発達障害の「二次障害」とは何か。放置すると大変なことに」

社会への不安から引きこもりへ。そして…

 退職直後は解放感に浸ることもありましたが、3日も続かず、すぐに私の心は将来に対する不安で一杯となりました。退職を決意した際は将来の事について考える余裕もない程追い詰められており、冷静な判断が出来ていませんでした。

 現代はマルチタスクや臨機応変な対応、円滑なコミュニケーション能力が求められる社会であり、それらは発達障害者が最も苦手とするものです。ですので、前職の経験からも「社会に出たらまた同じような目に遭うのではないか?」という強烈な不安感を覚えることとなったのです。一方で、実家暮らしで無職であることや、収入がない事に対する不安や情けなさも感じており、気持ちの整理が付かないまま再び落ち込むこととなりました。この時は完全に引きこもり状態です。

 自身を発達障害として生んだ両親との喧嘩や、生き辛い現代社会を理不尽に憎悪し、「自分は社会に居場所がない。」「存在自体が迷惑。」などといった自虐的思考に支配され、再び強い抑うつ状態へなっていきました(二次障害の悪化)。何をするのも億劫になり、誰とも話さず自室にこもる毎日を過ごしていました。

 そんな時、両親から知り合いのカウンセラーを紹介するという話があり、何かのきっかけになれば…と承諾することにしました。カウンセラーに自身の心境を吐露することで、すっきりした気持ちになり、少しづつ前向きな思考ができるようになって行きました。

 両親とも和解し、現在はカウンセリングや服薬治療を受けつつ、「自分に出来ることは何か?」ということを模索している最中です。

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