この記事はフランス在住の40代の女性に書いていただきました。
この記事は「フランスで発達障害と診断された日仏ハーフの息子①」も続きです。
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WISC3知能検査の結果、発達障害と診断される
個人診療所の心理士の元で受けたWISC3の結果、動作性IQが高く、言語性IQが低い「高機能自閉症(発達障害)」との診断を受け、普通の中学ではなく、特殊教育システムのある学校に行くことを勧められました。
日仏ハーフの息子は日本語は、ひらがなカタカナ、漢字の読み書きができ、自分で本や漫画も読みますが、ただ、文字は読めても、意味がうまく把握できないことがあり、長い文章などは大意を掴むことができません。フランス語も同じで、文章を読めますが、意味が掴めず、作文などは簡単なことしか書けません。また、両語ともボキャブラリーが少ないのです。
フランス人の夫は子どもの発達障害をなかなか認めることができず、WISC3の結果も、「一人の心理士の判断に過ぎない」と言い出しました。その時ちょうど、今までの精神科医が定年退職し、新しい精神科医は温和な感じのいい人だったので、知能検査の結果を診てもらい、大きな病院でもう一度診断を受けたい、と頼んだところ、快く紹介状を書いてもらいました。ただ、病院での結果はアスペルガー症候群(発達障害)という診断名がつきました。高機能自閉症とアスペルガー症候群は発達障害の中の「自閉症スペクトラム障害」に含まれていて、特徴が似ています。
普通クラスか特殊クラスかの判断
息子は、いじめにあったこともあり、中学は特殊クラスに入れたいと思い、パリで特殊クラスのあるカトリック系私立の幼小中高一貫校を探し出し、連絡したところ、快く中学部に、体験入学をさせてくれました(特殊クラスは日本で言えば特別支援学級)。
今まで友達が一人もできなかった息子が、その体験入学のクラスでは、初日から他の子どもたちと一緒に給食を食べ、昼休みも一緒にいたと話してくれました。先生方も熱心でした。
ただ、通っている小学校でも、学期に一度、校長、校医、担任、心理士、療育センターの療育士たちとのミーティングを行っていたのですが、そこでは、息子はアシスタントさえ付けば、中学でも十分に普通クラスでやっていけるので、特殊に入れる必要はない、と言われました。
このミーティングの報告書は、障害者センターという行政機関に送っているのですが、障害者センターの職員の女性に至っては、ヒステリックに私たちが勝手に特殊クラスに息子を体験入学させたことを非難し、余計なことをしないように、とまで言い出し、息子のことを第一に考えてくれているとは思えないような態度でした。
学校の授業に付いていけるかどうかより、息子が楽しい学校生活を送ることが大事だと思いました。中学になるといじめも陰湿になると聞きますが、特殊クラスならいじめの心配もありません。一方で、一度特殊クラスに入ってしまうと、普通クラスに戻るのは難しく、普通クラスでやっていけると言われているのに、あえて特殊に入れるのは息子の可能性を狭めてしまうのではないかという不安もありました。
夫と悩んだ末に、小学校の最終学年の担任は信頼できる人であり、彼女も普通クラスを勧めてくれたので、まずは、普通クラスに入れて、問題があれば、そこでまた、特殊クラスに移ることを検討すればいい、と結論し、地元の歩いて行ける距離にある公立中学に通うことになりました。
中学は普通クラスに。今は、高校をどうするかを悩んでいる
中学生になってからは、学期に一度、療育センターの精神科医と面接をしています。同時に療育センターから紹介を受けた個人診療所を開いている心理士のところに月に二回カウンセリングに通うことになりました。息子は心理士には色々なことを話しているようですが、守秘義務があるということで、親である私たちにも会話の内容は教えてもらえません。
中学校では、アシスタントがついているおかげで、なんとか落第もせず、今年、最終学年になりました。ただ、相変わらず友人は一人もおらず、いじめにも何度か合いましたが、深刻になる前に、学校が対応してくれて、息子も学校は嫌いだ、と言いながらも、登校拒否もせずに毎日通っています。
水泳とデッサン教室と日本語学校に週1度ずつ通っていますが、大半の時間は家にいて、ゲームをしたり、youtubeを見たりしています。一人でいるのが好きだ、と本人もいうので、好きにさせています。
来年の9月には高校生になるので、普通のリセ(高校)に行くか、リセ・テクニックと呼ばれる、技術を身に付けるためのリセに行くのかの選択をしなければなりません。フランスは若者の就職難が深刻で、大学院に進んだり、エリート養成校を出ても、就職先が見つからない人もいます。普通リセに行って無理して大学に進むよりも、仕事につながる技術を早く身に付ける方が、発達障害の息子にとっては、いいような気がしています。