この記事は障害者支援施設の職員に書いていただきました。
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障害者支援施設に入所されているOさんは20代男性で知的障害のある自閉症と診断されました。
Oさんは何か作業をしている時に突然大声をあげ、近くにあるものを投げたり、近くの人を付き飛ばしたりするなど突発的な行動が多く、そのため職員はいつでも対応できるように付きっきりで支援していました。
ですが、ずっと側にいることもできず、Oさんが突発的に物を投げたりする原因を探ることにしました。どんな時にパニックが起こっているのかを観察すると下記の事が分かったのです。
見通しが立たないことが原因
自閉症の人の特徴として先が見えない、終わりが見えないことに対して不安になってしまうというのがあります。健常者でも例えば仕事の中で「これをやっていて」と言われたときに「何時までやればいいのか」「何個すればいいのか」など不安になると思います。
もう一つ自閉症の人の特徴として自分の気持ちを相手に伝えられない、伝えにくいというのがあります。それにより疑問に思ったことが素直に口に出すことが出来ず、先の見えない不安からパニックになってしまうのです。
だからと言って自閉症の人が同じ作業や長時間の作業が出来ないわけではありません。事前にきちんと本人が理解できる「明確な終了条件」を提示することでどんな作業でも出来るようになるのです。
Oさんの場合であれば作業時間を10分間隔で設定しました。その後に休憩時間を5分挟みます。Oさんは絵を描くのが好きなので5分間絵を描いて遊んでもらい、その後再度10分の作業をするのを繰り返します。
Oさんは時計を見ることが出来たため、例えば10時00分は作業を行い10時10分に終了というのを分かりやすく提示することでパニックになることなく作業を行えていました。
作業時間の決め方
Oさんはボールペンの組み立て作業をしていました。そこでボールペン一つを組み立てるのに30秒程度掛かっていたので1分間に2つ出来ると予想できます。なので20本の材料を用意し、「これが無くなれば終わり」と理解できるようにしました。
色々試した中で集中力が続くのが10分だったこと、そして見通しが立ったことで、パニックになることを防ぐことができました。
まとめ
施設の職員を含めた支援者の中には参考書を見たり、研修で聞いたりしたことを直ぐに実践に活かそうとされる方がいます。
その姿勢は大切ではありますが全ての利用者さんにそのやり方が通じるとは限りません。その方に適した個別の支援方法を見つけていかなければなりません。それは過去の記録や日常のコミュニケーションの中で見つけていくことが出来ます。
例えばOさんのケースであれば
「見通しが立たないのが嫌なんだ。だったら10分間と決めて作業をしてもらおう」
「絵を描くのが好きなんだ。休憩時間に取り入れれば楽しく作業に取り組んでくれるのではないか」
等様々な事が分かってくるのです。
どうしたら快適に作業を行なってくれるのかを個別で考えないといけないので、本に書いてあることをそのまま行なっても上手く行くことは少ないです。