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重度の自閉症を持つ子どもへのトレーニング

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障がいのレベル

重度の自閉症を持つ8歳の男の子の日常のトレーニングとその成果をご紹介します。彼は、重度の自閉症を持って居るため、喋る事も出来ず、座って居る事も出来ず、常に走り回り、言葉も『アーアー』、『ギャーギャー』など結構大きな声で叫びます。コミュニケーションが取れないのと、多動があるため、オムツで生活をしています。

また、頭が良いので、人が怒ってたり、怖がっているのを理解できるので、大人を怒らせる事をわざとしたり、他の子供の髪の毛を引っ張ったりして反応を楽しむ事も良くあります。

しかし、良い部分では、人の行動を見て学んだり、自分から何かしたいと言う欲があるので、日々のトレーニングで努力すれば、成長がどんどん見られる子供です。

トレーニング

言葉を喋れず、更にじっとしている事が出来ない重度の自閉症の子供をトレーニングするには、時間と体力が必要です。そこで、私が実際に行なったトレーニングをいくつか紹介します。

まず最初に、パーソナルスペースを学ぶ事です。重度の障がいを持つ子供は、誰にでも近づいてしまったり、先生や他人などをお母さんの様に見てしまい、抱っこなどを求めてきます。またコミュニケーションがうまく取れないことが理由に、暴力を振るう子供もいます。大人になった時に、知らない人に触ったり暴力を振るって怪我をさせてしまえば、犯罪に変わってしまいます。それを絶対に防ぐために、少しずつトレーニングします。

一番簡単な方法は、毎日先生とクラスメイトと握手をさせる事です。腕をつかんだり、髪の毛を引っ張ったりする代わりに、相手を見て握手をすることによって、暴力を減らして行くというトレーニングです。

次はアメリカンベビーサインです。ベビーサインは、『お腹が空いた』、『お願いします・プリーズ』、『もっと欲しい』などの際に簡単なサインを教え、簡単なコミュニケーションを取る事です。例えば、おやつの時間に、子供はお菓子を指差して『あー』などと叫びますが、私は『お願いしますのサイン』を見せて、口に出して『お願いします、してください』と私も実際にサインをしながら伝えます。理解ができて居ない場合は、子供の手でサインを作り、教えます。

次は、『ご褒美』をあげる事です。一日スケジュールに合わせて、トレーニングをするのはハードですし、子供が嫌いな事であれば、尚更大変です。しかし、一つのトレーニングをやった事で、自分の好きなご褒美がもらえる事で、またトレーニングに戻ってきて続きをやる事が出来ます。ご褒美の内容は、教室で自由に遊ぶ、シャボン玉、ボール遊び、絵本、など、彼が好きな事を集めたリストを写真に変えて、彼が指をさして選ぶと言うシステムになっています。例えば、座って絵本を見てページをめくる事ができれば、しばらく教室で走り回って遊んで良い、とご褒美をあげます。

最後に、『悪い行動は無視』『良い行動は褒める』。良いことと悪い事の区別をします。例えば彼は、教室から飛び出し、大人に追いかけられるのを楽しんでいました。しかし、私たち大人は、絶対に走って追いかけず、学校内の安全を確認しているため、他の教室の先生に教室に戻るように彼に伝えてもらい、後から来た私がクラスに誘導し、『走る』ではなく『歩く』事を指示します。悪い事も沢山する彼ですが、もちろん、良い事をすれば思い切り褒めてあげます。この様に、良い事をすればしっかり構ってもらい、大人の目を引こうとしても構っては貰えないという様にトレーニングをし、良い行いを身につけてもらいます。

トレーニングの成果

まず、パーソナルスペースですが、この8歳の彼は、1日3回以上はクラスメイトの髪の毛を引っ張り、椅子から引きずり下ろして楽しんでいました。止める方も引っ張られている子供をなるべく痛めないようにしなければならないので、大変です。しかし、毎日握手をさせるという事で、お互いがクラスメイトである事を認識させました。次第に、クラスメイトに会うと握手する事を学び、髪を引っ張るという行為は減って行きました。最終的には、1日に1回とかではなく、多くて1週間に一度あるか無いかまで減って行きました。

アメリカンベビーサインは、とても有効的でした。彼なりのコミュニケーションができ、何かがもっと欲しい時は、『お願いします』のサインをし、私や他の大人が何かをしてあげるまで、しっかりと座って待てるようになりました。また、オムツの生活をしていると書きましたが、自分でオムツがいっぱいなのを気持ち悪いと思い始め、トイレまで誘導してくれるようにもなり、喋れなくても、サインでコミュニケーションが取れるようになりました。まだオムツですが、数年後にトイレトレーニングがしっかりできるという希望が出てきました。

ご褒美は、とても効果的でした。もちろん、ご褒美があると知っていても、今やりたく無いと言う気持ちが強ければ、ご褒美など関係なくその場から逃げようとします。何度もやらなければいけないトレーニングなので、時には怒り余って涙を流す時もありましたが、それでも数分はトレーニングをし、その後に彼の一番やりたいご褒美をあげます。毎日大変でしたが、それでも次第に自分からトレーニングの入った道具箱を自分から持ってきて椅子に座る様になりました。これからも時間はかかりますが、10年後を想像すると、明るい未来がありそうで私も嬉しいです。

良い事と悪い事のトレーニングは、一番の難題です。年齢もまだ子供なので、大人の気を引く行動は、必ず続くとは思いますが、頻繁にやっていた教室から逃げ出すと言う行為は随分と減りました。廊下を歩く時は、校内は安全なので、手を繋がず、1人で歩かせて歩く様にと口頭で支持します。そのお陰で、例え教室から逃げても、『歩いて』と言う言葉に反応してくれる様になったので、走らずに歩き、そのまま教室に戻す事が何度も出来ました。良い事をしたら、必ず皆の前で褒めて、自分が今良い事をしたと理解しもらう様にしました。それを理解しているかどうがを表情で見る事は難しいですが、確実に褒められる回数が増えました。

まとめ

言葉を喋る事の出来ない子供のトレーニングをするのは、子供の気持ちを理解するのにも、とても難しく、常にアイディアを出さなければなりません。精神的にも体力的にも疲れますが、その代わり、小さな事一つでも達成してくれると、涙が出る様に嬉しく、希望が見えてきて、もっとトレーニングを進める事が出来ました。

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