この記事は40代の女性に書いていただきました。
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5歳になって療育に通い始めた息子は、小学生になる頃には、ADHD(不注意優勢型)と診断されました。小学生になって、まず困ったことは、学校の授業での黒板の板書です。このことは、療育に通っている頃から、担当の先生に言われていましたが、実際に経験してみると、確かに彼には難しい作業でした。
彼は、行を目で追いかける作業がとても苦手でした。先生が黒板に書いた一行を、目で見て別の場所に書き写すことは、最初の頃は、無理に等しかったと思います。たとえ一行目が写せても、また次に黒板から目を離すと、さっき書き写した一行を、見失ってしまうようでした。
このような状況なので、彼から、「ノートがいっぱいになったから、新しいの買ってー。」という言葉は本当に少なかったなと感じます。
同じように、教科書や本を読むことも、彼はとても苦手でした。両手で教科書を持って、目で行を追いかけて読むと、何行も飛ばして読んでしまいます。読めないので自信がなくなり、国語の教科書の音読では、ついに声を出して読まなくなりました。
これではダメだと思い、行を指で追って読む方法を身につけるようにしました。すると、効果がすぐに出て、飛ばして読むことが減りました。四年生になった今でも本は指で追って読んでいます。
コミュニケーション能力と言葉の理解
彼は、言葉のキャッチボールがとにかく苦手でした。家族で話をしていても、意味不明な答えが返ってくることが多々ありました。これは、耳で聞いた情報を頭で処理する作業が苦手だからです。
そのため、先生が話していることも、お友達が話していることも、もちろん私が言っていることも、注意していることも、ただ聞いているだけでは、他の子のようには頭に入っていきません。お友達と遊ぶ約束をしてもすっかり忘れ、お友達が迎えに来てくれることがよくありました。
このような言葉や話の理解には、いろいろな方法を試しました。まずは、できていないこと(ADHDのため、忘れ物、見落しが多いところなど)には、その都度、根気よく彼に伝えることを実行しました。これは、まだ幼い彼には効果的でした。四年生になった今でも行なっています。こちらが言わない限り、気付きすらしないことも、その時その時細かく伝えることで、彼なりに気付いてきちんと正すことができます。
例えば、学校から帰ってきて宿題を始めるまで、こちらが何も言わずにいると、彼は何をしていいか分からず、ただただ、ぼーっとしているのです。遊びたいから、宿題をしたくないからではありません。
私が、「さあ、宿題の準備をして、はじめようか!」というと、のそのそと準備を始めます。しかし、しばらくするとまた動きが止まります。何から始めていいか分かっていない状態でした。
そこで、耳からの情報は、伝わりにくいので、目で見て分かるように、玄関に入ってすぐの壁に、帰ってきてからすることリストを作って貼りました。イラストを描いたり、カラフルにしたり、なるべく彼の目につくように工夫して作りました。帰ってすぐ、そのリストを上から順番に声に出して読みながら、ひとつひとつこなしていきます。
最初のうちは、おもしろそうだと言って、帰ってすぐちゃんと読んでひとつずつクリアしていましたが、3日もすると興味も薄れてだんだん忘れていきます。それに対しても、1回1回声かけをして、やっと最近は、読まなくてもある程度できるようになってきました。それでもまだ完璧ではありませんが…。
会話の中で、質問とは違うことを答えてしまうことについても、その都度、「今の答え方、合ってる?」と気づいたらすぐ伝えるようにして、どういう意味の質問で、どんな答えを相手が求めているのかをシュミレーションします。
あとになって、「さっきのここが違う」と言っても、彼にはいつのどのことなのか分からないし、分からないからどこをどう注意すればいいのかも分からないのです。ですので、その場で正すようにしています。
このように伝えたからといってすぐにできるようになるわけではありません。1つのことをマスターするのに、人の何倍もかかります。彼はこのような、周りとの微妙な違いと、一生うまく付き合っていかなければならないのです。
これから成長するにつれ、さらに難しいことが出てくることは間違いないですが、1つ1つ彼なりのやり方を見つけ、クリアしていくしかないのです。