この記事は大学生の女性に書いていただきました。

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　ガヤガヤした街の喧騒が苦手、ちょっとした光が眩しく感じる、嫌いな肌触りのものがある、普通の人とどこか違うように感じる……よく聞く発達障害の症状です。

　これらは、私が感じる物事でありますが、私は発達障害ではありません。一度、精神科で発達障害と診断され、後に誤診とされています。その理由は『他人の感情に過剰に同調してしまう』という性格傾向があったからでした。

小さな頃から他人が怖かった

　親は離婚していて幼い頃から親戚の家を転々としながら学校に通っていました。私は小学6年生から「友達が友達の悪口を言う」ことに嫌気がさして引きこもりになり、中学校はほとんど出席せずに卒業し、通信制の高校に通いました。

　高校から心療内科へ通院し、心療内科のT先生は社交不安障害と不眠症の治療にエチゾラム、リスペリドン、ゾピクロンといった不安障害を改善する薬を処方していました。

　他人が怖くて仲の良い友達がいなかったので、家でも学校でも一人で絵を描いていました。美術大学に行きたい一心で、高校ではデッサンの勉強をし、県外の美術大学へ進学しました。

引っ越しに伴い、精神科へ – 発達障害の疑い

　不眠症がひどかったため、進学先の近場ですぐに通院できる病院を探し、予約を入れて精神科へ行きました。病院のO先生は、私の家族構成と、通っている大学を聞きました。家庭環境が複雑であることと、美術大学に通っていると告げるとO先生はうんうんと頷き、こう言いました。

「もしかすると、自閉症スペクトラムかもしれないね」

　がつんと頭を殴られたようなショックが走りました。

「芸術系の人はね、多いんですよ」

　O先生の言葉が遠くに聞こえました。発達障害の特徴を聞いてみれば、記事の冒頭に書いた物事は確かに当てはまります。そうして、発達障害専門の病院で検査を受けることになりました。

IQ測定、ウェクスラー成人知能検査を受ける

　発達障害の診断方法のひとつに、IQ検査があります。言語能力のIQと、視覚や手先の器用さのIQに大きな差があると発達障害と認定されます。

　IQ検査は常識問題を口頭で答えたり、臨床心理士さんの言葉を復唱したり、パズルを組み立てたり、絵の模写をしたりといったものでした。結果としては、視覚IQが極端に高くて言語IQがやや低く、有意差があったため発達障害（自閉症スペクトラム）と認定されました。

　私は二十歳を超えてから発達障害と診断されたことで自分の生き方がわからなくなり、ベッドから起き上がれないほどにうつ症状が酷くなっていました。どんどん飲む薬が増えていき、そのまま体調不良による休学となりました。

再び地元の心療内科へ

　地元へ帰ったあと、高校のときから診察していたT先生に発達障害のことを告げると訝しげにこう言いました。

「君は発達障害じゃないよ。毎日食べるものを変えるし、買い物に行って、同じものばかり買ったりもしない。それに、悪口を言われている友達をかわいそうに思ったんでしょう」

　T先生は、HSP（Highly Sensitive Person、ハイリー・センシティブ・パーソン）という性格傾向のことを教えてくれました。HSPとは外的な刺激に対して非常に繊細な性格のことで、まさに『他人の気持ちに過剰に同調する』私に当てはまるものでありました。

　この性格は少数に見られ、発達障害と誤診されやすい、とT先生は続けました。HSPの測定をしてみたところ、27のチェック項目のうち26個にチェックが入っていました。

自分が生きやすい道を選ぶということ

　おとなの発達障害が増えています、という言葉も、その裏には私のケースのような過剰診断が含まれていると感じています。私にとっては、発達障害の診断は重い足かせとなっていました。絵が得意というだけで発達障害の疑いをかけられたこともショックだったし、精神科で処方された薬を飲んでも少しも楽にならずただ辛くなるばかりで、自らの将来を悲観していました。

　発達障害と診断されるのは悪いことではありません。生きづらいと感じている、ハンディキャップのある人たちは、診断されることで周囲のサポートを得られやすくなるメリットはあります。しかし、その診断自体を本人が重荷に感じてしまっては本末転倒です。他人が決めたものさしで測らない、自然体の自分らしく生きることが、なによりも大切であると私自身の経験から学びました。現在は復学し、一般の人となんら遜色なく勉強しています。

[参考記事]
「発達障害の子供の成長には周りの理解が絶対に必要」