この記事は発達障害のお子さんを育てている30代の女性に書いていただきました。
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息子は発達検査の結果だけでは分からない生活上の困難を多々抱えています。例えばこだわりの強さだったり感覚過敏だったり…。見えている世界が定型発達の子とは違うので、周囲が「当然こうであろう」と既に把握している常識も彼には一から説明をしなくてはいけません。現在中学校へ進学し、その大変さが小学校時代とは比べ物にならないくらい表面化してきています。年齢が上がるごとに、「当然身につけているであろう知識」の量に、天と地ほどの差が開いてきてしまっています。例えば社会情勢や科学技術について大人も知らないような知識を披露することは出来るのに、「公共の場にごみをポイ捨てしない」や「人のものを勝手に触らない」などの当たり前のルールは理解できていなかったりするのです。
見た目では分からず、言葉も達者でむしろ同年代の子よりも難しい言葉を使うような彼は、その出来ない部分について周囲から理解を得られにくいです。自分なりに身に着けてきた独自の対処法で誤魔化したりする姿が、かえって反感を買ったり反抗的な態度や逆ギレのように見えてしまい、周囲からの悪いイメージはますます強くなってしまいます。
療育機関が合わないことの弊害
そんな息子も児童デイサービスに通い、療育を受けていた頃もありました。ですがまだまだ知的に遅れがない高機能自閉症や自閉症スペクトラムの子に合った児童デイサービスは少ない時期でした。重い自閉症の子や知的障害の子たちに混じってのプログラムでは、息子の困り感をカバーできず…。結局続かず辞めてしまいました。
息子のような子たちに必要な療育は、人とのコミュニケーション方法やソーシャルスキルの会得等…。同じようにコミュニケーションが得意ではない子どもたちの輪の中でないと、その子その子がどこに困り感を持ち、どの部分が弱いのか周囲も把握できません。ソーシャルスキルの本や資料で卓上の勉強をすることは可能ですが、彼らの場合、聞いた話では理解できていても、それを実際に自分の生活に当てはめて考え直す作業は難しかったりします。実際の姿を見ながら、その場面場面で指摘し教えていかないと知識として身についていても、実生活で活かせません。
本人の葛藤
中学校に入学し、小学生の頃のようにさりげなくカバーして頂いていた部分も自分一人の力で何とかしなくてはならなくなった事で周囲についていけなくなりました。そこで、中学校内の通級指導をお願いすることになりました。通級指導とは授業を抜けて別の教室に行き、その子その子に必要だと思われる療育的なアプローチを受けられるシステムです。
今まで「普通」の中でやってきた息子に、これはとても辛い選択だったようです。「どう思われるだろう」「同じように通っている子が馬鹿にされているのを見ているから怖い」「でも自分に必要なのは分かる…。」そのような葛藤の中でストレスから来るチック症もかなり酷くなり心配しました。「いっそ周囲が何を言っても分からなければ幸せだったのに…。俺は中途半端だ。」と涙する姿を見て、親の立場としては胸が締め付けられる思いでした。
先生の働きかけや、絶対に馬鹿にされないように、差別されないように配慮するとの言葉かけもありがたく力強いのですが、子どもの世界というのは大人が思うよりも厳しいのは同じく中学生を経験してきた私にもよく分かります。大人の目の届かないところでいじめやからかいというのはいくらでも起こります。小さなころから人目を気にする息子が授業を抜けて通級指導に通うという決断をするのは容易な事ではありません。ですが最終的に、沢山の人たちの助けを借り、自分に必要な事なのだと実感し、彼は一歩踏み出しました。
生涯を通して療育を
息子に合った療育機関がなかったため仕方がないとはいえ、幼い頃から療育を受け続けていたら、もう少し辛さも和らいだのではないかと日々後悔します。今は児童デイサービスもかなり増え、それぞれのお子さんに合った療育も探しやすくはなってきているとはいえ、どこも定員いっぱいで入れないまま貴重な時間が過ぎていっている子も数えきれないほどいるようです。
中学生になった現在でも「こんな事で困っていたのか!」と驚くような発見もまだまだあります。生活スタイルが変わり、新しい環境になるたびに、身についていたように思っていた部分が実はまったく理解していなかった事を発見したりします。生涯、この繰り返しなのだろうなと思います。これから中学を卒業し、高校、大学、そして就職…と人生のステージを上っていく上で、それぞれの段階に合った療育というのは必要不可欠だと感じます。年齢が上がれば上がるほど、療育を受けられる場所は少なくなってきますが、継続的に彼の育ちをサポートできるよう、環境調整をしていかねばならないなと感じています。
[参考記事]
「息子のWISC検査の結果は凸凹が多い発達障害の典型」
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