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場所見知りがある自閉症の息子のために行った対策

 

この記事は自閉症の息子さんを持つ30代の女性に書いていただきました。

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 自閉症の息子はずっと「場所見知り」がありました。新しい場所に行くと車から降りられない、無理やり降ろしたとしても歩くことが出来ず常に抱っこ。冬場は外の施設の中に入ると暖房で暑いこともありますが、どんなに暑くても着ているジャンパーが脱ぎたがらないなど(防御態勢)、今思えば息子なりに自分の不安を打ち消す為に必死だったと思います。何があるのか分からない恐怖心や自分にどういったことが起こるのか分からない不安が場所見知りの原因だったのではないでしょうか。

 買い物の時などはササっと済ませ、なんとか乗り切っていましたが、喜ぶだろうと連れて行ったレジャー施設でも、場所見知りのせいで全く楽しむことが出来ず、ガッカリしながらすぐ帰るという事が続いていました。その後自閉症について勉強していく中で、事前説明、絵カードでの説明などを取り入れるなどの対策を行いました。

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場所見知りを克服するための行った対策

①学童期以前に行った対策
 初めての場所に行くときはインターネットで情報を集め、写真や館内の様子を説明しておきました。レジャー施設など、私たちの判断で行くか行かないか決められる場所は、事前説明の時点で行くのを嫌がった時はあきらめて行かない事にしました。無理やり連れて行っても家族全員楽しめないのが分かっていますから。

 病院などどうしても行かなければいけない場所は、そこで何をするのか、どれくらいの時間そこにいるのか、最後まで頑張れたらご褒美に好きなおやつを買ってあげるといった事で乗り切っていました。これで大人しく待てるわけではないのですが、抱っこでもなんでもそこに居られたことをたくさん褒めてあげました。保育園でみんなで行く場所は、事前に説明したうえで園で行く前に家族で何回か行って慣らすこともしていました。

 少しずつ行ける場所が増えていくと、本人も経験で学習していき「公園に行くよ」と言えば、「楽しい場所に行く」と理解することが出来ます。「病院に行くよ」と言えば、大の病院嫌いだった息子は「行きたくない」と訴えてきます。どんなに時間がかかっても本人を納得させてから連れて行くことが、親子の信頼関係に大きく関わってきます。連れてさえ行けばどうにかなるだろうという考えで、「遊びに行くよ」「買い物に行くよ」と噓をついて連れて行けば、子供は出かける時に常に親を疑うことになります。その場はそれで上手くいっても、嘘をついて嫌いな場所に連れて行かれた経験はいつまでも子供の心に残り、場所見知りはもちろんお出かけそのものに不安感を持ち続けることになります。

 小さいうちは、病院などの嫌いな場所に行かなければいけない事をあまり早くから本人に知らせるとずっと不安を抱えて生活することになるので、前日や当日にぐずる時間も考慮して話した方が良いかもしれません。大きくなってカレンダーや時計で日時の理解が出来る様であれば、カレンダーに書いておくと見通しを立てることが出来ます。

②学童期に行った対策
 学童期に入るとさすがに場所見知りは少なくなりましたが、やはり初めての場所は周りが気になって仕方ないので落ち着きがなくなります。ですので、落ち着きを失わないように、場所に慣れるための予行練習を行いました。例えば小学校で路線バスに乗って遠足に行く事になった時は、バスに乗った事がない息子の為に遠足で乗る予定の路線に何回か事前に家族で乗りました。

 バスの高い窓から見える景色や値段を表示してある液晶画面、降りる時に押すボタンなど初めての物に興奮してしまい、乗る前に約束していた「大きな声で喋らない」などの約束事をすっかり忘れてしまっていました。こうなってしまうとこちらの注意は耳に入らないので、体を触り落ち着かせてから約束事を確認し、バス内の息子の気になる部分を一つ一つ説明していきました。

 この効果があって当日は落ち着いて乗車することが出来たと聞きホッとしました。小学校での遠足で興奮してしまってはさすがに迷惑になるので、事前に経験させておいて本当に良かったと思いました。

 誰でも初めての場所に行くときは緊張すると思います。自閉症児はそこに不安感、恐怖感がついてきてしまうので本人はとても苦痛に感じています。それを支援者の工夫で少しでも減らしてあげられるのであれば、色々な事を取り入れるのはとても大切な事だと思います。

[参考記事]
「自閉症の息子は床屋が大嫌いです。どうしたらいいですか」

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