この記事は20代の男性に書いていただきました。
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僕は会社の上司に指摘されるまで、自分に発達障害があるとは思っていませんでした。自分に関係があることだと思っていなかったので、『発達障害』という言葉も認識していなかったくらいです。読み書きはできるし、学校の勉強はどちらかと言えば優秀なほう。アルバイトもやっていたので、まさか自分が発達障害だなんて思っていませんでした。
少しおかしいと思ったのは、大学を卒業して事務職の仕事に就いたときです。仕事では「ここ」「そこ」などの曖昧な指示や注意が多くあります。例えば「お前のそういう態度がダメなんだ」などです。さらには「そんなに急がなくてもいい」などと言われることもあります。この「そんなに」の意味を捉えるのが難しく、「急がなくても良いと言われたので時間ができてからやればいい」と思っていたら、数日後「まだできていないのか!」と叱られたりしていました。事前に報告するように指示されていたこともすっかり忘れてしまい、なぜ報告しなかったのかを問い詰められたことも数えきれないほどあります。
こんな調子だったので仕事では異動を繰り返し、そこの部署の上司に「発達障害なのではないか」と告げられました。一般に、大人の発達障害の診断は難しいとされています。診断をしてくれるクリニックも限られているのが実情です。仕事で退職を迫られるような一種のパワハラを受けていたこともあり、藁にもすがる思いで診断を受けました。結果は発達障害の中の「自閉症スペクトラム障害」でした。発達障害に関して報告をしましたが、理解されず、とうとう退職に追い込まれることになりました。
次の仕事では同じような思いをしたくない、ということもあり、就労移行支援事業所についてネットで調べて、クリニックで施設に入るための診断書を書いてもらい、入所の手続きを行いました。
就労移行支援事業所とは
就労移行支援事業所とは、厚生労働省から認可を受けて何らかの障害がある人が仕事に就けるようにトレーニングを行っているところです。仕事の斡旋そのものをやっているところではありませんが、合同面接会の情報を持っていたり、応募書類の添削や面接指導もやってくれます。最大で2年間通所することができ、本人の希望や障害の特性によって障がい者雇用枠での就職や一般就労で卒業していきます。
僕が今いるところではCADやイラストレーターのような専門的な職業訓練はしてくれませんが、お茶出しや書類整理、Excel/Wordなどの訓練、クリップやボルトを使った集中力を高めるトレーニングなどをさせてくれていますね。
僕は伝票のミスチェックのような細かい作業がやや苦手ですが、グループディスカッションやライン作業を想定した訓練では中心的な立ち位置でやっています。
通所している人も様々で、就学時から障害を指摘されて就職をする前に支援事業所に通所している人、就職してから何らかの障害が発覚したことで退職し、次の仕事に復帰するために通所している人、過去にメンタル的な出来事があって社会復帰を目指している人など、人によって三者三様といったところです。
僕の場合、吃音や多動など目に見える症状がある訳ではないので、通所者の中で比較的健常者に近いように感じています。通所し始めた頃は自分の仕事のイメージを何も考えていませんでしたが、発達障害の診断を受けた者の苦労と、診断を受けていない者の客観的な視点を両方持てる者として、就労支援事業所の職員として働けたらいいな、と思うようになってきました。
この記事をお読みの皆様へ
この記事を読んでいるということは、きっとご自身や親族が何らかの診断を受けたのではないでしょうか。発達障害者は五体満足で明確な欠損がある訳ではありません。ですので、私のように「やる気がない」と勘違いされ、退職に追い込まれるようなこともあります。それゆえに、第三者から理解されない孤独感を感じることも多いと思います。
だからこそ、自分と同じような境遇の人が居る場所、例えば就労支援事業所のようなところへ通ってみるのはいかがでしょうか。今の自分の客観的な立ち位置が見えたり、応援してくれるスタッフが居たり、何らかの形であなたの気持ちを前向きにしてくれるキッカケになるかもしれません。
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