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リトミックという療育は障害を持つ子供の得意分野を伸ばす

この記事は30代の女性に書いていただきました。

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 息子は重症な先天性心疾患を持って生まれ、起きていることもままならない時期があり、麻薬を使って心臓を休めるといった治療を必要とする状態でした。

 幼児期の発達に必要な貴重な時間が欠落してしまった息子は現在、発達の遅れがあります。心臓病児が必ずしも発達が遅れるということではありませんが、息子のように特異な経過を辿ったこと、またもしかすると脳の構造上の問題がある可能性も否定できませんが、様々な条件が重なり発達に遅れがあることは事実です。

 大きく分類すれば、自閉症スペクトラムに分類されると指摘がありました。そこから発達障害を視野にいれた教育へ足を踏み入れていくのですが、多方面からのアプローチを試みる中でリトミックと出逢いました。

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「リトミック」とは何か

 「リトミック」とは、音楽を用いた療育です。

リトミッとは、19世紀の末から20世紀初頭にかけて、新教育運動の絶頂期にスイスの音楽教育家で作曲家でもあったエミール・ジャック・ダルクローズが開発した音楽教育の手法。「ダルクローズ音楽教育法」ともいう。

 「音楽を身体全体で感じること、表現すること」と言っても、音楽に合わせて身体を動かすダンスと違うところは、技術を磨くというよりは、人格形成に関わる幼児の集中力、思考力、判断力、想像力といった「生きる力」を引き出すことを目的としているところです。

 発達障害の子どもたちには、自分の気持ちを表現することだったり、頭で考えた物事を行動に移すという動作を苦手とする特性を持つ子どもがたくさんいます。

 また、視覚優位といって、目から入る情報には強いことが多く、視覚以外の感覚が鈍いところがあったりします。ですから言葉の遅れが多い理由として、耳から入る情報を処理する能力、まとめる能力が弱いという部分が関係しているのです。

 しかし、耳から入る情報でも「音楽という情報」であれば受け入れやすい特徴があるので、息子はよく音楽に合わせて身体を動かしたりしています。リトミックの特徴である、耳を使っての音の強弱や音のニュアンスなどを身体で感じとり、自分の力で考え、表現し、行動に移すという要素が、のちに自分の気持ちや考えを表現し、次にどのような行動をとることが好ましいのかを考察する訓練に繋がるのです。そしてそれは社会性を育むことに繋がるのではないだろうかという考えに至り、私は息子にリトミックという療育を取り入れることを決意したのです。

他人を受け入れることが自己肯定感に繋がる

 リトミック教室を見ているとたくさんの子と一緒に取り組む中で、音の捉え方、体の動かし方がそれぞれ違っていたりします。障害をもつ子供であれば特にそうです。自分とは違う表現をする子供の存在によって、自分と他人はそれぞれ違う表現方法をするのだと学べるのです。この療育によって幼稚園での様子にも変化が生まれました。

 息子は現在健常の子供たちと一緒の幼稚園に通っています。5歳という年齢であれば健常の子どもたちの輪に入っていきやすいという理由と多方面からの刺激を与えてもらうために決断しました。言語能力をはじめとした息子の成長は、周りの子どもたちの成長のレベルと比べると歴然とした差があるのですが、息子は自分と他人は違うとポジティブな意味で理解しているのではないかと思うことがあります。これはリトミック教室のおかげかもしれません。

 他人と自分には違いがあるということを理解し、その上で自己を肯定しながら自分のできることを一生懸命やっていくということを私は息子に伝えていきたいと思っています。

凸凹の発達だけど、得意分野を活かして成長を底上げ

 リトミックは集中して音を聴き、それをイメージして表現します。ある言語聴覚士さんがお話されていました。「言葉はイメージの共有。イメージを持つことが大事である。」と。音を身体で捉え、自分の中でイメージしたことを表現するという一連の行動は集中力を身につける訓練にもなりますし、得意分野で能力を発揮することに繋がると思っています。

 発達障害の子どもたちは飛びぬけて力を発揮する部分(得意分野)と自分が苦手とする部分(苦手分野)とのバランスが極端なことが多いです。そんな中で得意分野で自分に自信を身につけ、苦手とする部分を押し上げるという関わり方をリトミックはしているように思えます。

 発達障害の子どもたちの成長を表現するのであれば、“凸凹”といったところでしょうか。飛びぬけているところと足りないところが極端。そこを平らにすることが必要なのではなく、私は得意とする部分が苦手とする部分を補っていくことが障害と共に歩んで行くことだと思います。

 どうしても人とは違う特性をもつ子どもたちは、社会に迷惑をかけてしまう存在と思われています。しかし、だからこそ、社会貢献できるような特異(得意)な面を見つけて育てて伸ばしていくことができれば、必ずや誰かの役に立てる、誰かの希望になれると信じています。そのための訓練として、リトミックという療育は非常に効果的ではないかと感じています。

[参考記事]
「先天性心疾患の息子のために行なった療育」

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