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発達障害を抱える子どもと保護者の置かれている現状

この記事は看護師の方に書いていただいています。

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 私は男性看護師として、発達障害を抱える子どもの精神治療に携わっています。今回はその経験から、発達障害を抱える子どもと保護者の現状をテーマにしてお話しをさせて頂きたいと思います。

 お子さんがいる家庭の保護者は、お子さんから学校等、友人関係についての話を聞くと思います。その中で、「〇〇くん(ちゃん)、また休んだ。クラスでは学校サボってるって噂になってる」等と聞いたことはありませんか?

 これは一つの例ですが、他にも他人が聞くと不快な思いをするだろうと思われる言葉を平気で投げかけ、コミュニケーションが上手く取れず孤立しているクラスメートがいるといった、世間で言う「一風変わった子」の話は、お子さんから聞いたことがある親御さんは多いと思われます。

 学校を休んだり、友達ができにくいといった発達障害を抱える子は一見して障害がないように見えるため、周囲の人達に理解されにくいと言えます。理解が得られないまま成長していくと、様々な失敗体験を積み重ねることになり、結果「視線恐怖や強迫性障害、反抗挑戦障害」等の二次障害が発症することになります。そうなると不登校や社会不適応となる可能性が少なからずあります。

 発達障害を理解するには、現在では教師や幼稚園教諭、保育士等、子どもと関わる専門職向けに発達障害をテーマとした研修が様々行われていますが、一般の保護者はまずこういった研修を受ける機会はありません。

 そのため、発達障害を抱える本人と保護者が障害を受け入れ、理解するには周囲に協力を求めるところから始めていくことが必要となります。そうしないと間違えた対応をお子さん自身や親が取ってしまう可能性が高いからです。

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周りに理解されず、苦しむ子どもと保護者

 前述したとおり、発達障害は「目に見える障害」ではないため、人からなかなか理解してもらえないという特徴があります。そのため、保護者が気づかないでいると、クラスメートから毎日怒られたり、関わってもらえなくなる等、どんどん孤立化していく可能性があります。

 教師は発達障害に関する正しい知識を持っているため、クラスメート達の理解を得るため、言葉かけや、手助け等の関わり方を呼びかけることができます。事実、発達障害を抱える子どもへの教育といった面で、正しく、専門的な知識を持った教師が多く配属されている学校では、発達障害を抱えていてもクラスメートの理解と協力を得て、クラスに適応していっている事例も数多く聞かれます。

 しかし、発達障害であることを本人と保護者が知らないでいると、教師が「この子は発達障害がありそうだ」と気づいても対策が立てられなくなります。むしろ「障害であるわけない」と反発を受けることになるでしょう。ですので、発達障害を抱えている子ども自身、「なんで嫌われたんだろう?どうしてだろう?なんでこんなことをしてしまうんだろう?」等々、様々な疑問や葛藤を感じている事例が多く、その保護者も「どうしたらいいのだろう?」と、発達障害だと分からず悩んでいることが殆どと言えます。

 「発達障害」という診断がついたらついたで、今度は「将来社会適応できないのではないか?周りから陰性感情で見られるようになるのではないか?」といった恐怖を感じることも事実です。そのため、相談することもできず、ひたすら発達障害を否定するといった行動を取ってしまうという事例もあります。

 発達障害は抱えているだけでも、精神的にも身体的にも苦しいのに、さらに自身と保護者が発達障害を否定し続けると、さらに苦しみが増えることになりかねません。こういう状態になるのも次の章でお話しするような現状があるからです。

発達障害の受け入れが遅れている現状

 発達障害を抱えている子どもとその保護者は少なからず、不安を持っており、うまく適応できないことに苦しんでいます。日本には精神障害や疾患をタブー視する気質があり、そのため発達障害に関する相談機関等の情報発信が不十分であったり、発達障害に対する支援や治療体制はなかなか進まないといった現状があります。

 そのせいで「一風変わった子ども」というグレーゾーン(定型発達と発達障害の中間)にある子どもを見過ごしやすい傾向にあると感じられます。

 現在、発達障害に関する知識はメディアを通して、少しずつクローズアップされてきていますが、発達障害に対する支援や治療体制はとても地域差が大きく、全国的にも受け皿が非常に少ない状態にあります。こういった現状も発達障害に関する情報発信を阻害している一要因のように考えられます。

発達障害を理解するために

 最後に、発達障害を理解するためにどうすればよいかを考えたいと思います。今回は子どもと保護者がテーマになっているので、「一風変わった子がいるクラス」の話を聞いたらどうしたらよいか考えていきましょう。

 もし、自分の子どもから、その「一風変わった子」が「学校をサボっている」「授業中座らないで立っている」等の発達障害の特徴を聞いたら、「好きで学校を休んでいるわけじゃないかも知れないよ」「席が嫌なのはなにか強い理由があるかも知れないよ」等、「一風変わった子」の行動や言動に対する理由を考えられるような言葉がけをしてみてください。

 好きでこのような行動をする発達障害を抱える子どもはいません。必ず理由があります。その理由を考えていくと、そのうち「一風変わった子」に対する思いやり方や、関わり方を学んでいく機会になるかもしれません。子どもを支えるのは、子どものクラスメートや友人の力が大きいと感じます。子どものコミュニケーション力アップにもつながるため、家族で話し合ってみるのもいいかもしれません。

[参考記事]
「発達障害による二次障害を抱える子どもへの治療の実際」

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