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発達障害による二次障害を抱える子どもへの治療の実際

 

 私は、児童精神疾患の治療に携わっていた30代の男性看護師です。発達障害と一言で言っても、自閉症スペクトラム障害、注意欠如多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)等、多種多様の種類があります。この記事では、発達障害をキーワードに、お話しを進めさせて頂きたいと思います。

 子どもが抱える発達障害は、乳幼児保育施設での職員や保護者が「私の子どもって他の子どもと違って、すごく特定の物にこだわる」「お友達とうまくコミュニケーションがとれない」「言葉の発達がお友達と比べて明らかに遅い」等の、気づきから発見されることがあります。

 検診時の発見は、明らかな障害を認める重度、中等度の障害であり、軽度の障害は「現状観察」という判断、もしくは「異常なく、本人の性格的傾向によるもの」と判断されます。軽度の障害を持っていると思われる子ども達はグレーゾーン(定型発達と発達障害の中間的意味)と呼ばれ、保育施設や学校の職員により、注意深い観察と個々に応じた関わりや教育を行っていきます。

 検診時の面談時に身体精神面の発達と日常の行動を伝えますが、保護者が「発達障害かも」と思い、行動しない限り、今後どのような教育や育て方がこの子どもに適しているかという専門的機関の介入を受けることができません。

 結果、小学校では普通学級にて、お友達とコミュニケーションがとれなかったり、勉強についていけない、着席していられない等、様々な行動が現れ、失敗体験を重ね続けた結果、「発達障害による二次障害」により、不登校になってしまったり、対人恐怖や視線恐怖等が出てくると、強い行動障害(引きこもりやパニックによる衝動的な暴力や破壊行為)が引き起こされます。

 そういった二次的障害が生じてしまい、医療的治療が必要になってしまった子ども達に関わった体験を紹介していきたいと思います。

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発達障害によって生じた二次障害と治療の実際

 前述した二次障害の子ども達の医療的治療の現状についてですが、発達障害を含めた児童精神疾患の治療ができる医療機関は全国的にもごく少数であり、まして入院治療が必要となればさらに受け皿が激減します。

 理由としては「教師、医師、看護師、臨床心理士、保育士、ケースワーカー」等、様々な資格を持つ多角的視点から、治療を進めていかないと、治療効果が得られない点(人件費や分校の設置等費用が高額であり黒字経営ができない)が挙げられます。そのため、児童精神疾患の入院治療施設を持った病院は公立病院が殆どであると言えます。

 そういった病院にある児童精神科病棟の職員は、知識の他に、発達障害を持った子ども達へ関わった経験が豊富でないと、円滑な治療を行うことができず、治療が進まないという事態になってしまいます。

 話を本題に戻しますが、発達障害によって生じた二次障害により、入院治療が必要になってしまった子ども達へ関わった私の経験をお話しさせて頂きます。

 人間一人一人が個性あるのと同じく、子どもの発達障害も一人一人違います。例え診断名が同じであっても、症状はそれぞれ違い、治療的関わりもそれぞれ違います。そのため、一人一人の個性の把握や、お友達と一緒にいるときの言動や行動、職員に対する行動や言動等、全ての行動や言動を治療材料として抽出していく必要があります。

 そういった子ども達へ関わるに当たって、一人一人の思いや行動が表出できるよう信頼関係をまず構築しなければなりません。これにはとても時間がかかり、根気よく関わっていくことが必要になります。失敗体験を重ね人間不信になり、心を閉ざした子ども達への関わりは非常に難しく、少しずつ心を開いていってもらえるような関わりが求められます。この先は実際にあった1例をあげてお話しを進めていきたいと思います。

友人関係の破綻から不登校になってしまった中学生

 とても印象強く残っている不登校で入院してきた中学生のお話です。彼は思ったことをすぐに言葉にしたり、行動を起こしてしまい、先生やお友達の話を聞くことができず、叱られたり、嫌われたりすることを繰り返してきました。

 さらに家庭では父親からの度重なる身体的虐待を受け、自己肯定感が非常に低く、ストレスコーピング(ストレスへの対応)も低く、緊張する場面にくると大暴れして職員への暴力や窓ガラスを割る、近くにいる子ども達に暴力を振るうという行動障害を持っていました。当然大人に対する不信感も顕著であり、声をかけても返事がない、本を読みふけって周囲をあえて気にしないという行動をとっていました。

 しかし、自分の欲求に関しては我慢がきかず「外出させて」「お金を親にもってこさせて」「ネットを使えるようパソコン使わせて」等、様々な要求をし、その要求が通らないと窓を割ったり、壁を壊したり、職員へ蹴りかかってきたりする行動が見られました。同様の行動は母や兄弟に対しても行っていたという背景も分かりました。

 そういった言動や行動から興味のあるものを捉え、その話を元に関わる時間を作っていくと、自然に部屋で静かに1対1で話せる様になってきました。院内分校への登校も次第に始まり、教員ともコミュニケーションがとれ、緊張によるパニック行動が少なくなっていきました。元々勉強が得意であり、成績は優秀であり、特に地理や気候の記憶に優れていたのと、音楽を聴くとコードが分かり、ドラムやアコースティックギターを少々の練習で突然コードで弾いてみたりという才能が見られてきました。

 分校の教師や主治医、看護師を始め、様々な大人との関わりから、自分の行動を振り返り、注意すべき行動や言動を把握していき、次第に自信を深め、行動や言動に注意し、感情をコントロールしていく様子が見られてきました。

 自宅への宿泊治療も順調に進み、高校受験にも成功。2年に及ぶ入院生活がここで終了します。その後の彼の様子は児童相談所と高校が把握していくこととなり、近隣のメンタルクリニックへ定期受診を行うよう整え、退院となりました。退院当日の彼の言葉が未だに忘れられません。「大人にも色々な人がいて、ちゃんと話を聞いてくれる人がいる。オレここに来て少し大人を信じられるようになったよ。」と清々しい笑顔で病院を後にしました。

 彼の様な事例は多数経験してきましたが、あれほどの行動障害がなくなり、感情コントロールができるようになった姿を見て、少なからず感動の気持ちを持ったことを覚えています。

発達障害を持っていても、社会人として生活できる

 彼の事例から「発達障害を抱えていたとしても、自分の性格的特徴を詳しく知り、他人に不快ととられる行動や言動はどういったものかを知ることで、社会に適応し生活できる」ということが分かったと思います。

 発達障害=個性という捉え方もできますし、発達障害を持つ自分の性格的特徴を詳しく知ることで、周りの人へ自分の性格を話し、理解が得られるように調整していく力を身につけることもできます。自分の欠点を晒すことは、恥と感じるかもしれませんが、周りの人への理解を求めるには、やはり話をして自分を理解してもらうと言う行動が大切です。

 最後に、発達障害が分かったとしても絶望しないでください。障害の程度や性格的特徴を家族が正しく知り、受け入れるところから、発達障害を持ちながらでも社会に適応できるよう育てていくことが始められます。

 発達障害=個性と考えて、専門機関と関わり方の相談をし、学校等の職員へも正しい情報を伝えていくことが望ましいと言えるでしょう。現在、発達障害についてクローズアップされる機会が増え、保育施設や学校職員は必ずと言っていいほど、発達障害と関わり方についての研修を受けています。

 周囲から理解されるためにも、家族や本人が自分の発達障害の特徴を知ることがよいと思われます。長文読んで頂きありがとうございました。

[参考記事]
「発達障害の「二次障害」とは何か。放置すると大変なことに」

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