この記事は30代の女性に書いていただきました。感覚過敏には嗅覚、触覚、聴覚、味覚、視覚がありますが、彼女の娘さんは聴覚過敏と触覚過敏です。
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11歳になる娘の感覚過敏症の話です。症状が出だしたのが、正直言うといつからなのか分かりません。もしかした、ずっと小さいころからかもしれませんが、私は「なんて大げさな子なのだろう…」と思っていたので、電車や車の音に驚いて、動きが一時停止しても、気にしていませんでした。
身だしなみや整理整頓はとても無頓着で、ズボンもシャツもパンツも後ろ前でも気にならないのに、音だけに過敏なの?変わった子だな…年頃になったら、変わるかな?程度にしか見ていなかったのです。小学校3年に不登校になってしまい、発達障害と診断を受けたのですが、その頃より症状が顕著になって、初めて気づきました。発達障害と過敏性のつながりもこの時初めて知りました。今までは、とてもひどい母親だったと思っています。
どんな症状
娘の感覚過敏は、『音』『皮膚感覚』です。
〇聴覚過敏
高音の機械の音・赤ちゃんの泣き声・幼児の騒ぐ声・ピアニカ・ソプラノリコーダー・チャイムの音・金管楽器・女の人の甲高い声・足音が苦手です。ざわざわたくさんの人の声がする所では、いろんな音がいっぱい頭に入ってきて、襲われているように感じるようです。これらは、私たちも何度かは『不快に感じたことがある音』だと思います。違うのは、『日常生活に支障をきたすかどうか』だと思いました。
誰でも、すりガラスを爪でひっかく音を聞くと、何とも言えない喉の奥からこみ上げる不快感がありイライラします。想像するだけで音が聞こえるような気がして不快になります。このような、思わず耳をふさぎたくなる音が、日常生活の様々な場面にあり、その場所に行けなくなったり、常に恐怖にさらされたりしている状態だと思います。
〇触覚過敏
娘の場合は、「好きな感覚」をひたすら繰り返すことと、いきなり人に触られた時や体の接触の感じ方が過敏です。具体的には、好きな感覚は指吸、そして指で口をねちょねちょする感覚を味わったり、サラサラ感を感じたり、繰り返し指先で楽しみます。これらは好き嫌いがありますが、共感できる方も多いと思います。問題なのは、指吸や繰り返し触ることが異常な行動に見え周囲に不快感を与えてしまうことです。
人との接触は、いきなり当たったり、肩などをトントンと呼ばれたり、本人の心構えができていない時の接触です。人込みを歩いていて、接触することはありますよね。ビックリするとそんなに痛くないのに「痛い」と、思ったことはありませんか?こうゆう感覚に近い気がします。第三者から見ると、「悪気なく触れてしまった。」が、娘にとっては、「自分に向かって、わざと体当たりしてきた。」、肩を優しく「トントン」は、「いきなり、後ろから肩を叩かれた。」の、ように感じてしまうのです。スキンシップでも、信頼していない人からのものは、たとえ先生でも不快感で痛みになります。
注射の時は事前に、どんなもの・どこに・何秒くらい刺すのか・どの程度痛いのかを(注射の部位付近を少しつねる)体験して、これくらいなら我慢できるかな?と納得できれば、泣きも騒ぎもしません。娘が理解納得できていないのに、無理やりさせようとすると大暴れします。
どんな時に起こるの
娘の場合は、精神的な不安が最大の原因です。学校で、先生が誰かを怒っている時、どんどん先生の声が頭に突き刺さり、まるで自分が怒られているのと同じような気分になります。リコーダーも最初は大丈夫だったのですが、上手くできず指摘され続けることで音が苦手になったようです。音楽つながりでピアニカの音もダメになりました。また、リコーダーを想像してしまう金管楽器系の音もダメなようです。
場所や人に恐怖を感じたり不安を感じたりすると、聴覚過敏が起こります。安心できる人といれば、症状は軽く済みます。
症状軽減策
嫌な音がありそうな場所である体育館・音楽室・運動場・公園などでは遊びたくても止めます。人混みが多く落ち着けない電車は、20分ほどの乗車でも各駅停車の普通に乗り、いつでも降りられる状況を作りました。いつでも降りられる安心感もあり次第に慣れて途中下車の頻度も下がりました。しかし、症状が顕著に出だした外出時は、安心できるぬいぐるみと耳栓(orイヤーマフ)がないと辛いです。
家では安心できることもあり、音への過敏症状はほとんどありませんが、皮膚感覚過敏は、2歳下の妹に限り起こります。その時は、娘に「痛かったんだね。」、妹には「お姉ちゃんはびっくりしたみたいだよ!」と、間に入ります。すると、妹は「びっくりさせてごめんね。」、娘は「わざとじゃなかったんだね。いいよ。」と、円満になります。妹に姉の様々な特徴の話をして、理解を促しています。その分、妹は我慢しすぎたり、甘えそびれたりしやすいので妹へのフォローが必要です。
学校での対応
現在は支援学級にいます。少人数で、同じように感覚過敏のお子さんもおられ、辛さを分かち合えるようです。イヤーマフも耳栓も、必要時に使用できます。辛くなった時は、クールダウンもできます。普通学級のようにチャイムからチャイムまで、教室から出られない不安感は過敏症状を強くする原因でもあったようです。
娘以外にも、チャイムの音に過敏に反応するお子さんが数人おられたようで、チャイムを高音から優しい音(周波数が違う)に変えてくださりチャイムで耳をふさぐことは無くなりました。触覚過敏は分かってもらいにくいようで、先生の中には「そんなにきつく触ってないでしょ!」「痛いわけ、ないでしょ!」「いつも大げさななんだから、あなたの悪いところよ!」などと、悲しくなる言葉をかける方もおられます。
パニックになっている娘を落ち着かそうと娘にスキンシップをして下さるのですが、信頼関係ができていないので不快感が増してしまい、必死に逃げようとしても、さらに強く捕まえられ不穏が強まります。
まとめ
周りの感覚過敏のお子さんも精神的な面で症状がひどくなるお子さんが多いです。例えば『やり方がわからない』『失敗が怖い』『上手くできないところを見られたくない』『やりたくないのに、しないといけない強迫的な感じ』などの不安があるのに助けを求めることも出来ずに困っている時に不安はどんどん膨れ、居心地の悪さに変わります。それにより、感覚過敏の症状が強くなります。あなたにも、たまに起こる不快な事が、この子たちには日常的に溢れているのです。
どうか支援される方は、つらさに理解を示してあげてください。慣れさせようと無理強いしないでください。簡単に慣れられるものではないのです。慣れる前に心がつぶれます。そんなことをする時間と労力を、どうか、あなたが発する言動が安心できる雰囲気に繋がっているかを見直すために使ってください。そうすることが、感覚過敏の子どもたちの安心につながり、さまざまな学びや経験をつむ勇気になります。
[参考記事]
「発達障害の子供に多い感覚過敏とは」
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