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発達障害により場の空気や相手の気持ちが読めない事例

 

この記事はセラピストの方に書いていただきました。場の空気や相手の気持ちが読めない性質は発達障害の人によく見られます。その極端な事例を書いていただきました。

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 私はセラピストをしております。主に大人の発達障害、またその子供を持つお母様が、精神科医や心療内科医の紹介で私の元に訪ねてきます。発達障害専門のセラピストではありませんが、カウンセリング、そしてヒプノセラピー(催眠療法の一つ)などを使い、患者さんをサポートしております。

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最初に発達障害と気付くサイン

 子供の発達障害の場合、学校の先生も最近は理解されている人が多いため、何かの問題行動がある時にはその子供の親に、一度病院で相談してみてはどうかと促すこともあります。そこで発達障害と診断をされ、自分の子供が発達障害だと分かります。

 大人の発達障害は、どうでしょうか?引きこもりなどといったものがなく、普通に会社勤めをしている人も多い為、なかなか気付かないのが現状です。ではそういった会社勤めをしている人が、自分が発達障害だと分かるようになるのはどういう順序を辿るのか。多くは、相手の気持ちが分からないことが原因の人間関係の悪化や仕事のミスなどで大きなストレスがかかることで精神を病み、そこで病院へ行くことで自身が発達障害であることに気付きます。医師の判断で、話を聞いて偏りを感じて調べたほうがいいと判断した場合に検査をして、本人が発達障害であることに気付くというケースです。

 もちろん、発達障害が一つの個性となり、順調に上手くいっているのならば、発達障害があっても問題は無いです。

場の空気や相手の気持ちが読めない40代の男性

 私はセラピストですが、ヨガのインストラクターもしております。そこに通っている40代の男性の生徒さんのお話をします。彼は誰もが知る一流企業に勤めており、りっぱな研究職として、すばらしい実績を持った方で、普段の礼儀は正しいです。定期的に通い、和やかにスタッフや生徒さんと話をしていましたが、次第に彼の行動が気になり始めました。

 ある日、ヨガのスタジオに、何やら変な鳴き声が聞こえてくるのです。何?何?と、お客様もスタッフも、顔を見合わせて、あちこちその原因を調べてみました。すると先ほどの男性が、ケラケラと笑いながら、「さきほどペットショップで購入してきたんですよ」と自慢気に伝えるのです。アヒルの赤ちゃん2羽をペットショップで購入した足で、ヨガスタジオに行き、そのことを誰にも告げずに、着替えのロッカーに入れたままでいたのです。

 当然みんなビックリして、動物をスタジオに持っていくなんてと驚きましたが、本人は笑っているのです。なぜこんな状況で、笑うのか不思議でした。「場の空気を読むことが出来ない」「相手の気持ちが読めない」のはアスペルガー症候群の特徴ですが、この時少しこの言葉が頭をよぎりました。

 スタッフはお客様ということもあり、笑顔で対応し、かわいいアヒルでしょうが、、、とやんわり今後は持ち込まないようお断りをしましたが、本人はそれがいけなかったということに全く気付いていない様子でした。それでお客様の中には、動物が苦手な方もいらっしゃいますからという言葉で返したのですが、本人は、そこまで苦手な人はいないでしょう!と一点張りです。場の空気が悪くなっていることや相手が困っていることが表情や言葉から読み取ることができないのです。

 また、彼はお客様同士が話をしているのを遮ったり、お客様に無理矢理アドバイスをすることが、少しずつ増えてきました。そしてスタジオのオーナーにまで、自分の見解を述べるようなケースが目立ってきました。自分の正論をくどくどと述べるのです。確かに話を聞いてみると、正しいことを述べています。しかし、いったん怒りのモードにスイッチが切り替わると、たとえ正論でも、相手を攻撃してしまうため、手に負えない状況でした。相手の気持ちはお構いなしという状態です。彼自身はとっても純粋で優しいため、悪い人ではないことは誰もが知っています。しかし、ひとたびスイッチが入ると、あなたが間違っているという攻撃に走るのです。

結局その後は

 しばらくお会いしてなかったのですが、私がセラピストであることを知っていた彼は、興味があるという理由で、あるときセラピーにやってきました。そこでお話してくれたのは、30代初めの頃に、うつ病だと診断されて、会社を数年休んでいた時期もあったこと。

 理由は、結婚しようと思うくらい好きな人が出来て、一度一緒に食事をしたけれど、2度目お会いしたときには、婚約者がいる話をされたことです。彼はそれを裏切りだと思い、激しい怒りと、どうしようもない感情で、相手を言葉で攻撃して、その反動で、自分自身がうつ病になったようでした。今は40代で、それから10年以上は経過しているのですが、それでもあの時のことは忘れられないと語っていました。

 私は彼の今までの行動や考え方に相当な偏りがあることに気付き、発達障害だとしたら、すべては納得できるなと感じました。私は知り合いの精神科医の医師数名に、彼の今までの経緯をお話しすると、発達障害かもしれませんとの意見を持つ医師が多かったです。

 彼はかかりつけの精神科医にうつ病と診断されて、10年以上もうつ病の薬を飲んでいました。そこで、私は「一度、別の精神科医に診てもらってみたらどうだろうか」と提案をしましたが彼は拒みました。「自分は今も研究職として一流の会社に勤務して働いているのだから問題ない」とのことです。

 どんな治療も、本人が変えたい、なんとかしたいという気持ちが無いと、当然ですが上手くいきません。私は発達障害の方に仕事で時々出会い、発達障害だということを受け入れて、社会と上手くやっている人たちも知っています。そういう方は、家族や職場や友人に発達障害だということを理解してもらっています。周りがその症状に理解があれば、本人だけでなく、周りも救われるのです。本人が場の空気や相手の気持ちが読めない状況でも、その人に関して理解をしていればそこまで怒りを買うことはありません。

[参考記事]
「発達障害の子が人間関係につまづきやすい理由」

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