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発達障害の子供が苦労する「音楽(科目)」に対する対応

この記事は40代の女性に、「発達障害の息子さんがいかに音楽の科目を乗り切ったのか」を書いていただきました。

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鍵盤ハーモニカは最初からあきらめました

 私には就学直前にアスペルガー症候群と診断された息子がいます。発達障害のお子さんに多いと思いますが、息子は体の動かし方が不器用で、幼稚園の頃からお遊戯などが明らかに下手でした。手先も不器用で、小学校入学後は、書字にも問題を抱えていました。

 小学校で少し驚いたのは、1・2年生の低学年で「鍵盤ハーモニカ」を履修することです。私が子供の頃は、低学年がハーモニカ(笛)で、中学年からリコーダーでした。「ハーモニカ(笛)」「リコーダー」「鍵盤ハーモニカ」では、「鍵盤ハーモニカ」が、一番難易度が高そうに思えますが……どうしてなのでしょう。

 ただ、鍵盤ハーモニカができるかどうかは、あまり問題にはなりませんでした。なぜなら小学校生活のスタートというのは、障害のないお子さんでもトラブルが起こりがちで、学級全体も集団としてまとまるかどうか不安定な時期です。「小1クライシス」「少1の壁」と言われます。

 先生も、他のご家庭も、正直「鍵盤ハーモニカが吹けるかどうか」に興味を寄せている余裕などなかったと思います。我が家も「2年生で終わるような楽器くらい演奏できなくても構わない」と思っており、その通りになりました。

リコーダーが吹けないのはリコーダーのせい?

 3年生以降のリコーダーについても、基本、「出来ないなら出来ないでいいや」というくらいの気持ちでいました。

 発達障害を持つ息子は、周りのお子さんが学校生活に慣れて落ち着いていく中で、やはり情緒不安定が目立ち、そのたびに学校の先生とお話して善後策に追われていました。

 また、国語の書字や、算数の計算などで問題が目立つようになりました。ですから、リコーダーが吹けるかどうかを気にしている余裕もありませんでした。

 ただ、そうして「放っておいた」のが良かったと思いますし、学芸会では息子が思わぬ「逞しさ」を見せてくれました。
息子は学校での出来事をほとんど家で話さないので、私の方も学芸会の演目がよく分かっていませんでした。学芸会の本番で見て初めて知った状態です。

 一通り寸劇が終わった後、全員がリコーダーを構えて演奏する態勢に入りました。「あれ?ウチの子、全然リコーダー吹けないはずだけど、どうするんだろう?」とヒヤッとしました。

 ステージ上の息子は、皆と一緒に平然とリコーダーを口にくわえてスタンバイ。「え?吹けるようになったの?」と思いつつ、固唾をのんで見守っていましたが、よく見ていても咥えているだけで指は微動だにしません。そして、演奏が終わると、息子も、さも皆と一緒に演奏し終えたかのようにリコーダーを片付けておりました。

 観覧席の私は「……そうだね。人生には、リコーダーでドレミファソラシドを吹くことより、出来ないものに出くわしたらどう誤魔化すかっていう処世術の方が大事だよね……」と思うことにしました。そして、今でもそう思っています。

 発達障害の子供は、「皆と同じように出来ない」ことでパニックになることもあると思います。お子さんの特性にもよりますし、家庭や学校の働きかけが強いとそうなりがちかもしれません。「出来ないことは出来ないなりに上手く誤魔化す」というのは、発達障害児にしては、なかなかいい感じの成長ではないかと思います。

 とはいえ、次のエピソードには少し頭が痛くなりました。4年生に学年が上がる前の春休みに、息子が「ママ、僕のリコーダー、壊れたから買い替えて」と言い出しました。

 「リコーダーなんて、こんなシンプルな楽器が壊れるもの?」と思いつつ、「まあ、男の子だし、お友達とチャンバラごっこでもしたのかもしれない」とも思い、息子に「壊れてるなら、仕方ないから買い直すけど。まず、ママが試してみるね」と言いました。

 ところが、私が吹くとドレミファソラシドの音がきれいに出るのです。「壊れてなんかいないよ」と言うと、息子は「僕が吹いても音が出ない」ときっぱり。

 「じゃあ、吹いてごらん」と吹かせてみると、息子は思いっきり息を吹き込むのです。これでは、ドレミファソラシド以前に、耳をつんざく騒音しか出ません。

 慌てて息子を問いただしました。「あのさ。先生は、ぶっと息を吹きこむんじゃなくて、『トゥートゥ―トゥ―って言いながら吹くように』って教えて下さったと思うんだけど?」。

 息子、ぬけぬけと「ううん。そんなの全然教わってないよ」。しばらく二の句が継げませんでしたが、「……それじゃあさ、学芸会でクラスの皆はきれいに吹けてたけどさ、アレはどうしてなんだろうね?」と言ってみました。息子は、しれっと「さあ? 僕には分からない」。

 ちなみに、息子は手先が不器用ではあるのですが、図工などは得意で色んなコンクールで賞をいただいていました(ただ、最近の子供向けコンクールは、子供に自己肯定感を持たせるために賞を乱発する傾向があります)。

 美術鑑賞が好きな私から見ても、技巧はともかく、子供らしい伸びやかな味わいのある絵を描く子だと思います。本人も「学校で一番好きな授業は図工」と言っておりました。

 「音楽」については、生まれつき手先が不器用であるうえに、「興味のないものは全く興味を持たない」という発達障害の特性が悪く出たのかもしれません

放っておいても「それなり」になりました

 そのうち、中学受験をすることになり、リコーダーはさらに放っておくことになりました。子供が通っていた小学校では中学受験をするお子さんが多く、我が家以上にハードな進学塾で全国屈指の最難関校を目ざすお子さんも多かったので、学校の先生も気を遣っていました

 とはいえ、小学校として最低限の授業はもちろんされるので、当然リコーダーとのお付き合いも続きます。有難いことに、それで特に叱られるわけでもなく、息子は渋々音楽の授業はこなしていました。

 ただ、これは小学校だから大らかに見守っていただけるのであって、公立中学ではそうはいかないと認識していました。高校受験では内申点が足りないと希望する学校の受験すらおぼつかないそうですし、私の住む都道府県では、音楽を含む副教科の内申点の配点が2倍だというのです。これも、我が家が私立中学を受験する理由の一つでした。

 私立中学の中に、「是非この中学校に通いたい」と、息子も私も思える校風の学校が見つかり、本人もヤル気をもって頑張っていました。ただ、やはり毎日の塾通いが辛いときもありました。「しんどい……。受験やめようかな……」と弱音を吐く息子に、「……でも、公立中学校に行ったら、リコーダー吹けるようになって内申点を稼がないといけないよ?」と返事せざるを得ませんでした。

 息子にとっては受験勉強の方が「リコーダーよりマシ」だったようで、「じゃあ、やっぱり受験、頑張る」と気を取り直して頑張っておりました。

 そうして、合格出来て、中学生になって半年ほどたったころ、帰宅して、中学校の制服を脱いだ後、「今日、リコーダーの練習するから」と、リビングで音楽の教科書を広げて、リコーダーを吹き始めました。

 久しぶりに息子がリコーダーを演奏しているのを聞いていると、なんと!「エーデルワイス」を“「エーデルワイス」だと分かる程度の下手くそさ”で吹いているのです。

 思わずほめたたえました。「〇君、リコーダー吹けるようになったじゃん。それ、エーデルワイスでしょ」「そうだよ」「すごいじゃん。聞いて分かるよ、エーデルワイスって!」。

 ちょっと前には「騒音しか出せず、しかも、それをリコーダーが壊れたせいにしていた」状態だったのですから、長足の進歩を遂げたと言えるでしょう。母の私は本当に心から褒めたつもりなのですが。

 ところが、息子は邪魔臭そうに「あのさあ、オレ、追試なんだよ? こんなに下手だとヤバイんだよ」。いつのまにか一人称は「僕」から「オレ」になり、自分の中で「リコーダーは、これくらいは吹けないとヤバイ」というハードルも上がっていたようです。成長したものです、いろんな意味で。

公立中学への進学は「内申点リスク」がある

 最終的に、息子は「リコーダー」をそれなりに吹けるようになりました。そのための意欲も持つようになりました。それは、家庭でも小学校でも無理強いしなかったのも良かったのではないかと思います。

 先ほど少し触れましたが、私は楽器を演奏するなどの趣味はありませんが、美術鑑賞は好きですし、大学ではダンスパフォーマンス系の運動部で頑張っていました。大学での専攻も美術史を考えたこともあるくらいです(普通の歴史学にしましたが)。決して、教科学習を偏重して、音楽などの副教科を軽視するつもりは全くありません。

 しかし、公立中学で、高校入試のための内申点を重視すること、それも副教科に配点を高くするシステムには反対です。「勉強だけでなく芸術など幅広いものを重視すべき」という主張に基づくようですが、私からすると逆に、極端に言えば「芸術への冒涜なのでは?」とさえ思います。

 内申点稼ぎのために、楽器を演奏したり、絵筆を取ったり……そんな心貧しい芸術との接触があって良いのかと思うのです。

 一般的にも、発達障害を持つ家庭では、公立中学への進学には「内申点リスク」も考えた方が良いのではないかと思います。得意不得意の凸凹が大きいのが発達障害の特徴ですが、よくできる教科があっても内申点の上限は決まっています。そしてシステム上は、成績の悪い一定数の子に低い点をつけなくてはなりません。

 「親の会」で先輩お母さんに聞くところでは、そこまで冷徹な対応は少なく、ある程度は「下駄をはかせてもらえる」そうです。しかし、「なぜ?あんなに下手なのに?」と訝しがられてしまいますから、先生の温情にも限界があります。

 そして、親の負担もあります。「親の会」で、「忘れ物」があると内申点に響くため、「中学3年間ずっと母親が時間割を合わせていた」という話を聞きました。育児にはいろいろ苦労はあるとはいえ、これほど馬鹿馬鹿しく、そして子供の成長の妨げになる無駄な努力もないと思います。

 幸い、息子は中高一貫の私立中学校に入学できましたので、内申点稼ぎに汲々とする必要もなく、自由に楽しく副教科に取り組んでいるようです。

 音楽の授業では、英語学習とかねて、あるミュージカルの英語版を少しずつ見ているのだそうです。実は私がこれの大ファンです。「今日は○○の場面を見た」「ああ、こういう音楽(歌ってみせる)?」「ああ、そこそこ。舞台ではこんな風になっていて……」などと夕食時に親子で会話しています。

 こんな風に自然で楽しい「音楽の時間」を過ごしてくれれば良い、と思います。

[参考記事]
「発達障害を抱える子が「社会(科目)」を好きになる方法」

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