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発達障害の「親の会」に入る意義と注意点

この記事は40代の女性に書いていただきました。

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 私には、就学前にアスペルガー症候群と診断された息子がいます(現在は中学生です)。小学2年生の初めころから地域の「親の会」に参加しています。その経験から、「親の会」に入る意義と注意点についてお話したいと思います。

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「親の会」に入ると孤独な気持ちが解消

 息子の場合、主治医の方針で告知はしていません。比較的軽度であり、障害児と名乗ったところで特別な支援が受けられるわけでもないので、告知するメリットがないからです。

 本人に告知していない以上、周りにも言うことはできません。幼稚園、小学校の先生には知らせましたが、お友達や習い事、学習塾の先生には何も言っていません。

 とはいえ、診断名が付くくらいですから、この子の育児は一筋縄ではいかないものです。それなのに、私には気軽に愚痴をこぼす相手がいませんでした。

 通っていた幼稚園からは「迷惑なんです!」と怒鳴られ、お迎えのたびに嫌味を言われ続けました。幼稚園の先生は味方でも相談先でもありませんでした。

 また、その幼稚園は特色ある「少人数教育」を謳い文句にしており、そこに通うご家庭は育児にこだわりがある方が多い傾向がありました。「白米じゃなくて雑穀米しか食べない」「○○くらい手作りしなきゃ!」……近年「意識高い系」という言葉がありますが、まさにソレです。この幼稚園はそういう「意識高い系」の人には向いた園だったのです。

 そのような「〇〇幼稚園に子供を通わせている私たちって素敵」と思っている親と、「迷惑呼ばわりされている」私とでは、当然、幼稚園に対する温度差だって全く違います。幼稚園のママ友と話が合うことが、私にはあまりありませんでした。

 他にも理解がない人がいました。当時、幼稚園の嫌味攻撃もあって私は心療内科に通っていたのですが、そこの医師がそうでした。その医師は私について「周囲のママ友と人間関係を上手く築けない」と私が「ダメな母親」であるかのような事を言いました。

 この頃の私の心の拠り所は、児童相談所で紹介して頂いた療育機関だけ。しかし、その療育先は就学前までで、小学校入学後は利用できませんでした。しかし、その療育機関の親向けに勉強会で、テキストに「地域に親の会があれば、ぜひ参加しましょう」とあるのを読みました。そして、ネットで調べて、私の住む地域にも「親の会」があることを知ったのです。

 子どもの就学が落ち着いたころ、恐る恐る定例会に出席しました。初めての参加者にも敷居が低い、風通しの良い雰囲気で、2,3回ですぐに溶け込めました。

 「ウチの子、発達障害があるから、親の私はこういう風に辛くて……」。他で口にすることができない苦しさを、ここでは大っぴらに言いうことができます。「わかるわかる」「みんな、そうよ」「こういういいこともあるよ」と温かいコメントもかけてもらえます。

 発達障害は数の上でもマイノリティなうえ、告知していないために大っぴらに言えないとなると、普段は発達障害の子を持つ親との接点がほとんどありません。こうして「親の会」に入ることで、孤独に陥りがちな状況から脱することができました。

 年上のお子さんのお話が聞けて育児の見通しを持つことができます。当時はまだ発達障害について知られておらず、小学校低学年の親である私は若い世代に当たりました。今では、幼稚園や保育園のお子さんのいる参加者も増えてきましたが、当時は私や息子の年齢は低い方でした。

 したがって、他のメンバーは、我が家より年齢の高いお子さんを持つベテランのお母さん方でした。

 先輩お母さんから教わったことはたくさんあります。例えば、小学校のPTA役員は積極的に引き受けた方が良いこと。普段から学校の先生と顔の見えるお付き合いをしておくことで、子供のトラブルにも親身になってもらいやすいそうです。

 また、私の住んでいる地域では、4年生で初めて泊りがけの学校行事があります。そこで不登校になってしまうお子さんもたまにいるので、その行事を見据えて準備するようアドバイス頂きました。具体的には、私の息子は学童保育を利用できたので、学童主催の親も同伴できる1泊だけのキャンプに参加して、集団のお泊まり行事に慣らしておきました。

 他にも「夏休み明けは、生活リズムが崩れて不登校のリスクが高くなる」とか、「運動ができないのは、発達障害のデフォ」とか。「ああ、そうなんだ!」と前もって知ることができました。

 知らないままで、対応を一歩間違えていれば、我が家も不登校などの深刻な問題を抱えていたかもしれません。あらかじめ各学齢で直面しそうな問題を把握でき、「親の会」に入って先輩お母さんのお話を聞いておいて本当に良かったと思います。

「親の会」に参加することの注意点

 「親の会」は必ずしも万能ではありません。デメリットというほどではありませんが、長所の裏返しとして、ある種の限界はあると感じます。

 「親の会」に参加するご家庭の深刻なお話は重いかもしれません。最初に、私自身の幼稚園時代の頃の話をしました。当時は、幼稚園から「迷惑」と責められ、心療内科の医師にも白い目で見られました。また、子供が、就学前、緊張のため酷い情緒不安定になり、私のメンタルも限界にきていました。療育の先生の前で「子供を手にかけるか、私が首をくくるか」と何度も泣き崩れていたほどです(それを見かねて、学童保育の利用を勧めて下さいました)。

 当時の私はそれほど辛い状況だったからこそ、「子供が障害児だと大っぴらに言える」「誰にも責められない」「励ましてもらえる」という「親の会」の存在が心に沁みて有難かったのです。逆に言えば、「親の会」の集まりに足を運ぶご家庭は、かなり追い詰められた状態であることが多いと思います。

 「不登校」状態は珍しくありませんし、「引きこもり」に近い状態で進路が見えない、「親に暴力をふるうので痣が絶えない」という深刻なお話をなさる方もいらっしゃいます。私としても、同じ集会に参加しているからには、少しでもお役に立てればと思うのですが……。

 どこのご家庭も、専門医やカウンセラーに相談するなど打てる手は既に打っていらっしゃいます。それでも上手くいかないのに、私のような素人から解決策をお話しできる余地はあまりありません。発達障害という障害が、いかに子供と親を苦しめるものなのか。「親の会」では、こういった重くて先の見えない問題に直面することになります。

 決して他人事ではなく、我が家だって、今は特に大きな問題を抱えていなくても、いつ何時このような深刻な状態に陥るかも分かりません。ボタンを一つ掛け違えただけで、大きく子供の運命が変わってしまうのかもしれない……。このような不安に駆られながら帰宅することもよくあります。

 実を言うと、今の私は、親の会から少し足が遠のいてしまっています。子供が中学受験をしていたことや(息子は勉強があまりできないので母親のフォローがかなり大変でした)、中学進学を機に私が仕事を始めたことが直接の原因ですが……。あの重苦しい現実に直面する気持ちになれないせいもあるかもしれません。

「親の会」の情報が正しいとは限りません

 私の所属する「親の会」には、特に専門家が出席することはありません。だからこそ、自由に発言できる雰囲気があるのですが、これが裏目に出ることもあります。

 あるお母さんが「○○っていうサプリが発達障害に効くんですって!」と興奮気味に力説されたことがあります。現在、自閉症や発達障害には、正統な医学・教育学に基づく専門家以外に、いろいろな“自説”を唱える“専門家”もいます。そのお母さんは、何かの伝手である“先生”に出会い、特定のサプリメントを勧められたのだそうです。

 確かに、発達障害はまだ研究段階にあり、何らかの物質で「治る」可能性はあるのかもしれません。そのお母さんも良かれと思ってお話しされたのでしょうし、成分自体は自然な食品にも含まれているもので特に大きな害はないようにも思えました。

 しかし、このお母さんによると「類似のサプリはあちこちで売っているけれど、〇〇先生の紹介したところのじゃないと効果ないんですって!私に言ってくれたら、そこから買えるようにしてあげるわよ!」とのことでした。これはちょっと胡散臭いかな……と感じたものです。

 この時は、古株のお母さんが「まあ、色んな説があるから……自己責任と言うことで。それから、この会でもいろんなお話をするけれども、あまり外で『親の会でこんなことを言っていた』と触れて回らないでくださいね」と話をまとめられました。

 ベテランのお母さんの年の功でバランスがある程度保たれるとはいえ、「親の会」は素人の情報交換なので、時には極端だったり科学的裏付けがなかったりする情報にも接する可能性もあります。

 一方、特定の専門家の監視下ではないからこそのメリットもあります。あるお母さんから「△△っていう医師から投薬を勧められたんだけど……」という話題が出た際、先輩お母さんが言葉を選びつつも「『その先生は薬に頼りがち』っていう話題が何回か出るから……。他の医師からセカンドオピニオンを貰うとか、慎重になった方がいいですよ」という情報を提供していらっしゃいました。こういう忌憚のない情報交換ができることも「親の会」の良さだと思います。

まとめ

 私自身は、今、直接的な理由としては仕事のペースと合わなくて「親の会」から足が遠のいてしまっています。ただ、息子の中学受験が終わってすぐのころ、1度顔を出したことがあります。受験のサポートで1年半くらい間が空いていたのですが、中心メンバーの方から明るく「いやあ、久しぶり!どうしてる?」と声をかけていただきました。

 私が「○○中学、合格したのよ」とお話すると、「よく頑張ったねえ!『お母さんが』!」とお返事をもらいました。私も笑いながら「うん、頑張ったの、『私が』!」と返しました。

 大した中学校ではありませんが、普通のお子さんでさえ「中学受験は親の受験」と言われるのに、学習障害気味の息子の受験は母親の私にかなり負担が重いものでした。それなのに、それを大っぴらには言えません。ここで「お母さんが頑張った」と認めてもらえてとても嬉しく、そして、何かに報われたという充実した気持ちになれました。

 結局、話はもとに戻りますが、話す相手のいない「発達障害児の親の苦労」を分かち合う仲間がいること、それが「親の会」に参加する大きな意義です。

 仕事に慣れたら、また通うようにしたいと思います。そろそろベテランお母さんとして、若いお母さんに何か役に立てたらいいな……と願いつつ(でも、自分が精神的に辛い思いをしそうなら、そこは自分の中でバランスをとって程よい距離でおつきあいするのも大事だと思います)。

[参考記事]
「発達障害の自助グループに参加したけど苦痛でした」

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