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発達障害によるパニックとこだわりに対する訪問支援

 

この記事は発達障害の訪問支援をしている方に書いていただきました。

……………..

 今回は訪問による発達支援の事例「重度のパニックとこだわりへの緩和」を紹介していきたいと思います

今回の訪問支援の依頼内容は
〇作業所が終わった後の自宅までのお迎え
〇就寝までの
生活支援をしてほしい
ということでした。

 ご利用者様は20代の男性で、「重度の知的障害」と「自閉症(発達障害)」を抱えており、強度のパニックとこだわりを持っています。自閉症の特徴の一つとして「こだわり」が挙げられますが、彼の場合は通常の人よりも強く出ています。そのこだわりが達成できないとパニックになるという状況です。また、自閉症の診断を受けたのとは違う病院ではADHD(発達障害)の性質もあると言われています。

 生活スタイルは、平日は作業所に行き、休みの日は自宅で過ごすという生活です。コミュニケーションは言葉でしますが、ほとんどはこちらが話すだけで、利用者様からは短い単語で返事や返答をするということが多いです。

[参考記事]
「自閉症スペクトラムの特徴とは」

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疲れ切った母親

 作業所が終わった後の日中支援の件で依頼内容を詳しくお聞きすると、共働きのために時間が作れないため、作業所から自宅への送り迎えと就寝準備までの生活支援をしてほしいとの事でした。母親は小柄でとても細く、大きくなった成人男性を一人で見ているとは思えませんでした。詳しく話を聞いてみると、もう年齢も若くないし、息子のパニックやこだわりに付き合いきれない私がいると話されていました。

 彼のADHD(発達障害)の症状は落ち着きや集中力が持続できない、その場にとどまり続けることができずに常に体を動かしているなどがありますが、子供が小さいうちはなんとか母親の力でなだめたり、止めたりできるのですが、ある程度大きくなってくると力の関係でどうしても子供と対峙できなくなってしまうことがあります。現に母親は日々の不安から病院に通っていて、夜も眠れないでいると疲れ切った顔をしていました。

 今までは長くお世話になっていた訪問介護事業所があったが、そこの担当が辞めてしまい対応できなくなってしまったので、私たちの事業所に依頼をしてきました。

パニックとこだわりについて

 まず私はその話を聞き、パニックとこだわりについて時間が許す限り、詳しくお聞きしました。ご利用者様は「パターン思考」を持っていて、このAの状況ではAの対応、Bの状況ではBの対応という「強いこだわり」があり、それを止められたり、邪魔をされたりすると、それが引き金となってパニックになってしまうと話されていました。つまり、パターン思考というのは「そのパターンではその答えしかない」という択一方式の考え方が強くなります。その択一の答えが達成できなかったりするとパニックとして表面化します。

 パニックとは、ご利用者様から見れば、崖の上から突き落とされるような衝撃的なショックのあとに出る、とても辛い発作なのです。パニックにもいろいろ種類があり、突然ふさぎ込んでしまうものから、急に騒ぎ走り出してしまうもの、自分を傷つけてしまう自傷行為とたくさんあるのですが、ご利用者様は、突然騒ぎ走り出してしまうタイプでした。普段のパニックが全力で騒ぎ走り出すことに加えて、ADHD(発達障害)により、普通の人より動き回るので、体は引き締まり、まるで陸上選手のような体をしていました。ある意味屈強な成人男性相手では、小さな可愛らしい母親には対処の仕様がありません。それでも精一杯、母親としてここまで育て上げた事はとてもマネのできないことであり、世の中に「ノーベル母親賞」があったら必ず候補者に入ると思うくらい立派です。

彼の世界観を知るためには

 最初の訪問介護支援をしたときに、最初の調査として利用者様の「TO DOリスト」を作成しました。それもできるだけ細かく詳細に。
例えば、
① 作業所から帰るときは玄関の下駄箱に行く→そこにある靴に一回手を伸ばして取るふりをしてから→トイレに入り用を済ます→玄関に向かい作業所を出発する。

②信号待ちの時は、歩行者ボタンがあったら必ず押す、、、などです。

 このように、一般の人には理解できない「こだわり」が見られます。

 そして、この行動に対して、利用者様はなぜ、このような行動を取るのか仮説を立てていきます。
先ほどの例で説明すると
① 幼いころからの生活習慣がそのまま体に残っている。
 彼は特別支援学校に通っていたのですが、その時に担当の先生から「途中でトイレに行かないように家に帰る前にはトイレに行きなさい」とのトイレ指導により、卒業後にも作業所などから出る際にトイレに行く習慣が残っていた(トイレに行く必要がなくても本人のこだわりとして)。

② 特別支援学校の時から指導員やご両親が盲目歩行者補助の音によりドライバーが気づきやすくなるように信号を必ず押していた。
 それを見たご利用者様本人が、信号のある歩道を渡るパターン思考として習慣化された(歩行者信号が青であったとしても)と考えられます。

 作業所の指導員さんや、母親から就学前から卒業までのあらすじを聞いていたのでその仮説通りにご利用者は発達障害による「こだわり」を遂行しつつ帰っていました。できるだけ、その「こだわり」から外れないように彼の行動パターンを見守ることに徹しました。自宅での過ごし方も「こだわり」込みでの生活スタイルが見えてきましたので、それに合わせるように対応しました。

それでもパニックが起きてしまったら

 パニックが起きないことが最善ですが、残念ながら人間の心は日々多様に変わってしまいます。訪問介護で忘れてはならないことが、突発の緊急事態が起こった時の対処方法です。まず、起こり得る事として、急に飛び出して車や障害物にぶつかりご利用者様、その周りに居合わせた人が怪我をしてしまうということが考えられます。なので、日々の支援の中でそのリスクを最小限に抑えられるように、予防線を張っておきます。道路側は歩かせない、利用者様にすぐ手が届く範囲で行動するなどです。それでも起きてしまったときは体を張って落ち着かせます。時には利用者様を怪我がないように押し倒す事もあります。なので、あらかじめご両親とパニックが起きてしまったときはどうするか?を煮詰めておく必要があります。

 パニックが起こった時は詳細にその時の状況と前後関係を調査し、まとめておき、パニックへのTO DOリストを新しく作成するのです。長くなりましたが、何よりも一番大切だと思う事は、ご利用者様の世界をできるだけ知るということですね。同じ視線、同じ空気、同じ状況をマネしてみるのも良いかもしれません。

 以上が訪問支援の内容です。何かの参考になれば幸いです。

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